第21話 家の怪異 2
翌日。朧木は児童相談所を訪ねていた。児童相談所は役場のようにコンクリートで打ち立てられた建物の中にあった。
朧木が窓口を訪ねると一人の担当の女性が回されて来た。応対用の別室に案内される。どうやら表で話せる内容ではないからだ。
「はじめまして。僕は朧木良介。探偵をやっています。今回は町議会議員の政治秘書である亜門からの斡旋で仕事の依頼を受け、微力ながら助力できるのではないかと思いやって参りました」
朧木は深々と頭を下げた。
「なるほど。はじめまして。私はこの児童相談所で働いています玖珠木と申します。今回はご依頼を受けていただきまして誠にありがとうございます」
玖珠木も頭を下げる。灰色のスーツに身を包んだ女性は児童相談所の一般職員だった。
「さて、いくつか御伺いしたいことがありまして。まず、今回児童が行方不明になったというのに捜査協力をされたのはあなた方ですよね。子供の親御さんは一体・・・」
玖珠木はどうしたものかといった表情で考えたが、やがて口を開いた。
「今回の事件。ニュースになるほどあれだけ大騒ぎになりましたが、親御さんはいなくなっても仕方がないと考えているというか、なんと言うか無関心なんですよ。元々ネグレクトが問題で我々に通報がありまして、我々としては何とかできないかと母親の方には何度か連絡していたんです。今回の捜査依頼は親御さんを通してはおりません。というもの、親御さんは警察に任せ切りで特に他に動こうとはなさっておりませんでした。やむを得ず我々が動いた次第にございます」
「なるほど。流れはわかりました。相談のあった児童と母親は不仲だったのでしょうか?」
「それがですね。児童は母親を必要としておりました。母親が児童に対して冷徹に振舞っていたんです。・・・この話は今回の行方不明事件にどう影響しますか? 関係がない話ならよそ様の家庭の問題を第三者にべらべらとしゃべってしまっている事になって、後々問題になるのは避けたいのですが」
玖珠木は自分の立場が危うくなるのを心配していた。それもそうだろう。
「あるかもしれません。なにぶん、頂いた資料だけではわからないことも多い為、些細なことでもいいんです。何か気づきにつながることがあれば。今、手がかりはないに等しいのですから」
朧木は敢えて笑顔を作った。とにかくここは玖珠木に信用されなくては駄目だからだ。
「そうですか。難しいですね。警察の方も捜索していますが見つかっておりませんし、やはり難しいでしょうか・・・」
「ご安心ください。僕はこう見えても人探しは慣れておりまして。少なくとも一般人よりは違った探し方が出来る点が僕の強みです」
「そうでございますか。なら我々は我々のできることをやりましょう。さて、他に何かお聞きしたいことはありますでしょうか」
「少年には知人、親戚、友人など親しいものはいましたでしょうか?」
「少々お待ちを・・・ええと、少年には母方の親戚はおりますが、そちらには現れていないようですね。警察の方からお聞きしました。知人、友人と呼べるような親しい相手はいないようです。家庭不和を抱えている子は学校の人間関係でも苦労するケースがあるんです。もっと年齢が高ければ素行不良な仲間が出来るケースもよくありますが、小学生の段階ですと孤立するケースが多く、打ち解けられる相手は誰もいなかったようです」
玖珠木は事前に用意していた資料を見ながらそのように答えた。少年に関する児童相談所として受けていた相談についての調査資料のようだった。
「ううむ。なるほど。わかりました。行方不明になる直前、児童は誰かにそのことをほのめかすようなことなどはなかったでしょうか?」
「少なくともこちらでは把握しておりません」
「そうですか。後はそうですね。行方不明児童が過去に家出したことなどはなかったでしょうか?」
「それはこちらで把握している限りではなかったと思います」
「となると、今回の事件は突発的にある日突然起こったという事ですか」
「そうなりますね。こちらとしても何度か児童とお話をしたことはあるのですが、今回のような事になるような予兆などは掴んでおりません」
「ふぅむ。実は三日前に少年の目撃情報があったらしいじゃないですか。少なくともその間少年はどこかで生活していたことになります。誰か親しい者の所に世話になっているのではと考えたのですが」
「それは警察の方も考えていたようなのですが、どう捜査してもそのような存在は見つからなかったそうです」
「なら少年は3週間近くの間、どこでどうやって過ごしていたのでしょうね。僕はそこが重要な気がして」
「確かにそれはありますね。警察の方はその点も捜索しているようなのですが、全く手がかりはないらしいです」
「ふむ。なら今回の件はそこを明らかにする事で解決するでしょう」
朧木は顎に手を当てて思案しながらそう答えた。
「朧木さんはなにか確証がおありで?」
「今はまだ確かなことは言えませんが、少年が目撃された街を調査すれば何かわかるかもしれません。少年の行動範囲がどれくらいかはわかりませんが、小学六年生が一人で出歩けるような距離ならば、何とか僕の力で捜索できそうです」
「それは心強い限りです」
「さて、伺いたいことはすべて伺いました。後はフィールドワーク。と言いたいところですが、児童の母親にもお会いしてよろしいでしょうか?」
「今回の件は母親の方を介さずにご依頼してしまいましたからねぇ。難しいですがこちらから話を通しておきます」
「ご協力感謝いたします。では、これにて失礼致します」
朧木は最後に深々と礼をしてその場を後にする。
正直朧木が知りたかった情報は得られなかった。だが、親と不仲と言うならば家出の線はやはり濃厚だ。協力者の存在さえ掴めれば行方は追える筈だと言う確信が朧木にはあった。朧木は念の為、少年の母親にも当たっておこうと考えた。児童相談所を出た足で、そのまま資料に記載のある住所を目指した。
それは閑静な住宅街にある安っぽいアパートだった。
朧木はチャイムを鳴らした。・・・しばらくするとくたびれた女が姿を現した。まだ若いが生活に疲れている感があった。
「・・・どなた?」
女はあからさまに不信そうにする。
「申し遅れました。僕は児童行方不明事件解決のためにご協力させて頂いている朧木良介と申します」
「あぁ、息子の件で・・・警察関係者には見えないわね」
女は眉をひそめる。朧木を疑っているようだった。
「僕は探偵です。児童相談所のほうから助力要請があった為、ご協力させていただいています」
「なにそれ? 私には何の相談もなくそんな話を進められていたの? はぁ、気分悪るっ」
「まぁまぁ。僕は刑事事件にも介入する事もありますし、これまでも何度か事件を解決に導いてきています。今回の件もお任せください」
「警察の方に任せていても何の成果も出ていないんだもの。あなたにどうこうできるとは思わないけれどね。どうでも良い事だけど」
朧木は「ん?」と首をひねりそうになった。母親らしき女から「どうでも良い事だけれど」と一言付け加えられた点が気になったようだ。
「どうでも良い事って・・・それはどういうことでしょうか」
「どういうことって言葉通りよ。息子は事件にでも巻き込まれたのか行方不明になったでしょ。このまま見つからなければ、それはそれで仕方がないことねって事よ。むしろ、いなくなってせいせいしたわ」
母親の女からとんでもない言葉が出ていた。あろう事か、この女は自分の息子を心配していないのだ。それは朧木には衝撃だった。不仲とは聞いていたがこれほどまでとは予測していなかったのだ。
「それでも僕は依頼の事もありますし、全力で事に当たらせていただきます」
「それが余計な御世話って事よ」
女はそのまま玄関の扉をしめようとした。
「待ってください! 話だけでも!」
朧木は慌てて食い下がる。
「・・・何? はぁ。近所の人に見られるのも嫌だから、一旦中に上がって頂戴」
女は朧木を家に通した。朧木はかろうじて話を繋いだ格好となった。
家の中は掃除をしていないのであろう。物が散らかり積み重なっていた。台所をちらりと見たが、洗い物が溜まって流しが一杯となっている。昨日今日このようになったとも思えない。だが、子供が心配で家事が手に付かなくなるような母親とも思えなかった。元々こうだったのだろう。
「で、話って何かしら」
「息子さんのことについてお聞かせ頂きたく思いまして。息子さんには親しい友人などはいらっしゃいますでしょうか? または頼れる親戚などでもいいです」
「さぁ、知らないわ。息子とは殆ど会話らしい会話もしていないのですもの。頼れるような親戚はいないわね。まず私が親戚と不仲ですもの」
「そうですか。息子さんは居なくなる直前に何かそのことをほのめかしたりだとか不審な行動はありませんでしたか?」
「さぁ、関心がないからわからないわ」
「・・・自分のお子さんのことでしょう?」
「だからなに? 死なせると罪に問われるから仕方なく育てているだけよ。あんな重荷、いなくなるなら万々歳だわ」
朧木は言葉をなくした。世の中にそのような親が居るとは思わなかったのだ。
「・・・そうですか。わかりました」
「それで? 話はもう終わり? なら出て行ってもらいたいのだけれど」
「後一つだけお願いしてもいいでしょうか。息子さんの持ち物を何か一つお貸し頂けないでしょうか。よく身につけていたものとか」
「何それ。どこかに息子の服があるでしょうから適当に持って言って頂戴」
母親は特に自分で探すというわけでもなく、勝手にしろといわんばかりだった。
朧木は廊下の脇に子供服があるのを見つけた。洗濯をしていないのであろう。ひどく汚れていた。・・・このような服で学校に通っていたら、行方不明になった児童はいじめにもあっている可能性がある。そう思うと朧木はいたたまれなくなった。
朧木が服を手にとっていた頃、女に電話が掛かってきていた。浮かれたような嬌声。どうやら男から電話が掛かってきたようだった。こんな時にのんきなものだと朧木は思った。だが、あの母親ならばありえるか、とも考えた。
「では、この服はお借りいたします」
「そう。ではさっさと出てって頂戴」
女は電話を片手に朧木を追い払った。長居は無用とアパートを出る朧木。
朧木は建物を出るとき振り返った。おんぼろのアパートを。果たして、行方不明になった児童はここに帰ってきても幸せなのだろうか、と。
それでも事件は事件だ。引き受けた依頼だ。見つけ出さねば。朧木の表情は重かった。
「さて、最低限の目的は果たせた。状況整理も兼ねて一旦事務所に戻るとするか」
朧木は足早にその場を後にした。
古びた建物。朧木探偵事務所の中である。さくらは猫まんと御留守番をしていた。そこに朧木が帰ってくる。
「良介。何か見つかったかいね? ・・・なんだか臭うよ」
とっとこと猫まんが朧木に近寄った。
「あぁ、行方不明児童の服を借り受けてきたんだ。これからこれを使ってヴォルフガング君の協力を得て捜索に当たろうと思う。彼の力が在るのが大きいよ」
「良介は人の運に恵まれているねぇ。護法童子に見放された時はどうしたものかと思ったが、なかなかどうして優秀な従業員に恵まれているねぇ」
「ははは・・・その話は勘弁してくれよ。僕は修験者ではないからね。たいして修行らしい修行はしていないから愛想を尽かされてしまったんだよ」
「まぁ、そこはしょうがないよねぇ。良介は仕事が忙しいのだから」
「生活も掛かっているからね」
「それでも人運に恵まれているよ。そうでなければ、今回の事件ももっと苦労しているだろうことですから」
「戦闘員としても優秀。探偵としてもすばらしい能力を持っている狼男君に協力してもらえているのは確かに幸運だよね。まったく、ヴォルフガング君様様だよ」
と、そこにさくらが冷えた緑茶を持って現れた。
「御疲れ様です。所長。どんな様子でしたか?」
朧木は緑茶をさくらから受け取った。
「あぁ、思ったよりかわいそうな境遇の子供だったよ。だが、これで断然家出の可能性は出てきた。やはり僕はこの線で捜索するよ」
朧木にとって不快な相手と会って来たのだろう。目つきが少々鋭くなっている。
「所長。なんだか不機嫌そうですね」
「そう見えるかい、丼副君。そうかもしれないね。僕は子供の心配をしない親なんていうものには始めて出会ったよ」
「どんな母親だったんですか?」
「どうもこうもない。なんとか捜索の協力を漕ぎ着けてこれたような相手だったよ。子供の心配よりどこかの男と話すことのほうが大事だったようだからね。あれではいなくなった児童も浮かばれないよ」
「うーん。典型的なあれですかね」
「典型的なあれといわれてもいまいちよくわからないが、とにかくなぜ児童相談所のほうからの依頼だったのかはわかったよ」
「で、その子供さんは見つかりそうなんです?」
「あぁ、そこは任せたまえ。必ず見つけ出して見せるとも」
「また式神の簡易召還とかいうのをたくさんやるんですか?」
「あれは費用が掛かるからねぇ。今回はどうしたものかな。いかに経費をかけずに事件を解決するかも経営者としてのうでの見せ所だよ。・・・決して手を抜いているわけではないぞ!?」
さくらがじとーっとした眼で見つめていることに気がついた朧木は慌てた。
「打てる手は尽くすというのが所長だと思っていましたけれど」
「確かに一定レベルで有効な手段ではあるがね」
「今回の事件。妖怪の仕業とかではないんですか?」
さくらが頬に指を当てて尋ねる。本人に自覚はないが、中々あざといしぐさだった。
「可能性がないわけではない。猫まん。今回のように子供が攫われるような事件。考えられるとしたらどのような妖怪の仕業がありえる?」
猫まんは目をくわっと開いた。
「そうさねぇ。一般には神隠しがまずは疑われるよ。忽然と姿を消してしまう現象さね。妖怪の名としてあげるなら隠し神というやつさ。それから東北地方では油取りという妖怪がいたねぇ。子供を誘拐してその油を搾り取るというよ」
「うわっ、何その妖怪。こわっ!」
さくらが思わず身震いした。
「子供を攫う妖怪と言うのは多くてねぇ。たとえば青森にはかますおやじという妖怪がいて、泣いている子供を見つけると攫ってしまうのさ」
「ふーむ。今回のケースに当てはめるとありえるのか。猫まん。続けて」
朧木は相槌を打ちながら話の続きを促した。
「あとは雨女とかかねぇ。雨乳母とも呼ばれているよ。雨を降らせる妖怪で雨を呼ぶ神とも言われている。信濃の国では雨の日に訪れる神が堕落した姿だといわれている。この種の妖怪も子供を攫うという。一説には幼子をなくした女が妖怪になった姿とも言われているからねぇ。とにかく列挙すればごまんといるよ」
「ねぇ、猫まん。信濃の国ってなぁに?」
さくらが首を傾げながら尋ねる。
「現在の長野県の事さね。まぁ、ここから距離はあるが妖怪も移動することもあるからねぇ。東京にいてもおかしくもないさねぇ」
猫まんは目を細めた。知恵を絞る時とか何かを思い出そうとするときは眼をカッと開く癖があるらしい。
「妖怪の仕業もありえなくもないか。確かに妖怪の関与も疑うべきだったね。猫まん、ありがとう。面倒なのは生きた人間の仕業の場合だが、現在は怪しい動きをする人間の目撃情報などは出ていない」
「妖怪の仕業なら所長の出番じゃないですか!」
「まだ妖怪と決まったわけでもないが・・・まぁ、一応式神の召還符も持って行くか。何があるかわからないものな」
「そうさね。良介、準備はちゃんとしておくのがいいですねぇ」
「そういえば妖怪にも出自ってあるんですね。ねぇ猫まん。猫まんはどこの出身なの?」
さくらが猫まんの顔を覗きこんで質問をする。
「わたくしの生まれかい? そいつは江戸だねぇ」
「江戸」
さくらがおうむ返しに答える。
「そう、江戸。東京がまだ江戸と呼ばれた時代の生まれですから」
「猫まんは生まれた時から化け猫をやっているの?」
「生まれた時はただの猫だったよ。今と違ってにゃうにゃうとしか鳴けなかったねぇ」
「化け猫ってどんな猫でも進化する可能性があるんだ!?」
「どんな猫でもなるかは知らないけれど、わたくしは長生きしている間に猫又になったねぇ。長生きする動物は化けるとはよく言うからねぇ。まぁ、人間も長生きすれば化けることもあるかもしれませんけれど」
「残念っ! 人間は化けません!」
「おやまぁ、人間が何かに化ける話もごまんとあるねぇ。この子ったら時折猫の皮を被るからねぇ。猫娘にでもなるんじゃないかいね」
「朧木家の人はどこでこんな猫を拾ってきたんだろう」
「僕も猫まんがうちに来た由来は知らないね。そんな朧木家だが大昔は京都にいたらしいが、流れに流れて東の国まで来たんだそうだ。これも猫まんに又聞きした話だけれどね。猫まんは朧木家の生き字引さ。代々当主とともに行動してきたからね。頼りになるよ、ほんと」
「その代わり戦うのは無理だから戦働きは勘弁だよ」
「猫まん。火を噴いたりとか出来ないの?」
「なんだいそれは。どんな化け物かいね。猫又は火を使うなんて話もあるが、わたくしは明かりを灯す程度が関の山さ」
「丼副君。猫又にも色々いるのさ。それこそ化け猫と言うにふさわしい祟るやつから、屋根の上で踊っていたら人に見つかって矢を射掛けられて転げ落ちたやつまでね」
「ぴんきりなんですね。で、猫まんはどっち?」
ご馳走を前に浮かれて踊り狂う猫又であった。食欲に生きているのである。
「自分以外の猫又とはあまり交流がないからなんともいえないねぇ。あぁ、たまに化け猫の猫会はあるから出席はしているよ。どいつもこいつも狸のように腹黒い連中さねぇ」
「丼副君。猫はむかしむかしのそのむかし、家狸と呼ばれていたし、似たものと捉えられていたかもね」
「そうですよね。ドラえもんも青い狸とか言われていますもんね。ドラえもんは猫には見えないと思いますけれど」
「はいはい。それで良介。事件の捜索はどうするのかいね」
「これからは足を使った捜索となる。主に子供の目撃情報が出た街の捜索さ。必ず何かある。子供の足だ。そんなに行動範囲は広くないだろう。今はヴォルフガング君がやってくるのを待っていたところさ。彼が来れば即座に出発だ」
「子供がどのような状況かもわからないから捜索を急ぐんですか、所長」
「あぁ、そうだ。もしかしたら危険な状況にある可能性も無きにしも非ずだ。だから今夜中には足取りを掴んで見せるさ」
「子供の側の視点で考えていませんでした。確かに行方不明中にどのように過ごしているのかはわかりませんものね。急がなきゃ」
「そういうことだ。ま、目撃情報が出るという事は無事に過ごしているという事だからあまり危険はないだろうと僕はにらんでいるけれどね」
と、そこに玄関が開かれる。やってきたのは人の姿を取っているヴォルフガングだった。
「遅れてすまない。またせたな、メイガス」
「・・・まるで物語の主人公のような登場の仕方ですね」
「ははは! 丼副君。彼こそ今回の児童行方不明事件の解決の鍵を握る男さ。間違いなく彼の嗅覚がいなくなった少年を見つけれくれるはずだ!」
「なぁ、メイガスよぉ。オレを警察犬か何かと思っていやしねぇか?」
「いや、すまない。君の能力を僕は高く買っているんだよ。さぁ、これが手がかりの品だ」
朧木は借りてきた児童の服を取り出した。
「くっさ! 洗っていねーのかよ!」
「そこは僕もどうかと思っていたんだが、君が臭いを元に追跡するならこの方が好都合かと思ってあえてこれを選んできたんだが」
ヴォルフガングは臭さのあまりにうっすらと涙を浮かべて朧木を睨む。
「後で覚えていやがれよ!」
「ま、まってくれ。良かれと思ってだな・・・」
朧木は慌てて弁明しようとした。
「所長。それはあんまりです。それで捜査をやる人の身にもなってみてください」
朧木探偵事務所の構成員二人からの人望をなくしかけている朧木であった。
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