第5話 『錬成』スキルの覚醒
(まあ 使えないものは仕方がない)
グレーアウトした『錬成』の文字を見つめながら、 自分にそう言い聞かせる
現在、使用可能なスキルは『走査』『吸収』のみ
『走査』は、名前通りであれば、『核』に保存されている情報が手に入れられる可能性が高い
万が一失敗してダメになった時の事を考え、入手難易度が低いアルミラージの『核』から試してみることにする
『核』を手に取り『走査』と念じてみる
するとどうだろう、ワタルの額に瞼が現れ見開かれる
赤い宝石のような透き通った瞳が現れた
それは、何物をも見通すようなルビー色の輝きを放つ
そして、その瞳から赤い光線が照射される
手のひらの上で点であった光線が左右に開いて直線となり『核』をなぞるように移動する
(うおぉ! まさしくスキャンっぽい! 嫌いじゃないぜ、こう言うギミック!)
テンションうなぎのぼりのワタルをよそに、手のひらの奥から手前へと光はゆっくりと移動し『核』をなぞり終えると消えた
光が消えると瞳は閉じられ瞼もすぐに姿を消した
頭の中で声が聞こえる
(『固有スキル』『弱点察知』を手に入れました)
ただスキャン中に頭の中に流れてくる情報は『核』に保存された情報だけでなく『核』自体の形状や材質など構成する情報も含まれていたのが気になる
(まぁ、とにかく今は、スキルがアナウンス通りに一覧に表示されているか確認するのが先だ)
リストを呼び出し一覧を確認すると確かに『弱点察知』の表示があることを確認できた
スキルを問題なく手に入れる手段が判明し、満足感に浸りながら『核』を『吸収』すると、犬と兎に追い回された疲労も回復し、身体の能力も向上する
コボルトの『核』も『走査』を完了させ『嗅覚強化』と『剣技』のスキルもゲット!
やはり実力差のせいか、コボルトの『核』を急襲した時の方が力の漲り感が高い
スキルでは互角になったが、今のワタルには手に余る強敵だ
リストを眺めていると違和感に気づく
なんと、グレーアウトして使用不可だったはずの『錬成』のスキルが使用可能になっているではないか!
(もしかして『走査』した情報をもとに『錬成』出来るってことなのか?)
『走査』とセットで使うスキルにもかかわらず、召喚された際『錬成』だけしか手に入らなかった
それは使る訳がない
(ゴブリンになって、独りぼっちになって始めて使えるようになるとは、本当に俺ってついてないわぁ)
自分の不運を呪っても生き残れない
今は、一枚でも切れるカードを増やすべきだ
そう思い直して『錬成』スキルの検証を始める
『錬成』とは錬金術を使い『望んだ物』を生み出す技術
この世界では、物理的に材料を混ぜ合わせる『望んだ物』を生み出す『調合錬金術』と魔力を使い物質を融合させたり変化させ『望んだ物』を生み出す『魔導錬金術』の2種類が存在する
ワタルの持つ『錬成』のスキルは後者という事になるが、この世界で言われるところの『魔導錬金術』とは少し趣が違うようだ
心の中で『練成』と念じてみると、思った通り先ほど『走査』したアルミラージの『核』とコボルトの『核』がリスト表示された
試しにアルミラージの『核』を選択してみると
(『練成』のスキルレベルが低すぎる為発動できません)
と残念なお知らせが流れて来た
『核』とは、生物一体の構成情報すべてを記録できると言う、人知を超えるテクノロジーの産物
元の世界でも再現不可能だろう
魔道具のランクで言えば神器クラス
一度も使ったことの無い、と言うか使えなかった『練成』で作り出せる訳がなかった
取りあえずセーフハウスとアイテムボックス内にある全ての物を『走査』し『錬成』を試みる
結果、魔力を消費しすぎて気を失ったり、といったアクシデントはあったものの、モンスターの死体以外は『錬成』出来た
そしてその際に判明した事がある
一つ 安全が確保された場所でやらないと死ぬ
『走査』および『錬成』中は身動きが出来ないし、中断も出来ない為、発動中に攻撃を受けると大変危険
また、魔力切れによる失神は致命的だ
一つ 練成する物と同質量の材質が必要である
これは練成する際に地面に手を当てていたところ、地面が陥没しその規模が『練成』したものと同等だと気づいた為に判明した
一つ 錬成する物と材料の材質が同じまたは、似通った性質であれば使用する魔力と時間は少なく済み、材質または性質が異なるほど多くの魔力と時間を要する
例えば、練成する物が有機物で材料が無機物だった場合、性質が大きく異なる為大量に魔力と時間を消費する事になる
一つ 大きさや質量が大きいものほど、『錬成』が完了するまでに時間がかかり、消費する魔力が多くなる
一つ 構造が複雑な物や複数の素材を組み合わせた物は練成の熟練度が高くないと発動できないか、発動できても大量の魔力を消費する上に完了まで時間がかかる
まだまだ検証の余地は残されているが、今のところ判明しているのは以上である
ちなみに死体が『錬成』出来ないのは、構造が複雑で必要なスキルレベルに達していない事が原因だった
今後死体を『錬成』する必要な場面があるのか疑問ではあるが
試しに自分自身を『走査』してみたが可能だった
『錬成』はもちろん無理であったが、アナウンスの内容が若干違っていた
(必要条件と『練成』のスキルレベルが低すぎる為、発動できません)
つまり生物を『錬成』するには何かしらの条件が必要になるということだ
消費した魔力の回復を待つ必要はあるが、無限に装備や物資の補給が出来る
ダンジョン内であれば材料は床や壁を利用でき、時間が経てば再生されるためセーフハウスであれば安全かつ『錬成』し放題
(この『錬成』というスキル・・・使える!)
ダンジョンで生き残る確率がまた少し上がった
それでも、まだまだ絶望的に低いことに変わりはないのだが・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます