Fake

槻坂凪桜

第1話

「面ッッッ!」



 鋭い声と共に、荒々しく、でもしなやかに打ち込まれる竹刀。




「落一本!」「一本!」



 独特の節回しと澄んだ弦音、そして、鋭く穿たれた的。





 弓道と剣道。種目は違えど、同じ学園で武道を歩む者だから。



 お互いに、強豪の主将として、輝かしい成績残しているから。




「うちと魁斗かいとは元々主将同士としても仲良かってんけど、いつの間にかただの『友人』ゆう関係嫌になってもーて、付き合う事にしたんよ。...うちな、魁斗の彼女になれた時、むっちゃ嬉しかってん。えらい好きな人の隣歩かせてもろたし、たった一人の妹と同じくらい大切にしてもろうたさかい、うちは最高に幸せ者や」




 ...彼女の全てを受け入れる『彼』の存在があるから。


 今日も、彼女は無邪気に笑う。




 それは、まるで向日葵のように輝いていて。


 何の罪も無く、大輪の花を咲かせていて...。




 ______その笑顔のせいで傷付いている人がいるなんて、知る由もなく。

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