列車という名のシアター
勝利だギューちゃん
第1話
ガタンゴトン
列車は走る。
目的地に向かって、ひたすら走る。
この列車は、一方通行なので、乗り換えはない。
ボックスシートに腰を下ろし、車窓を見る。
写りゆく景色は、まるで映画のワンシーン。
「次はどんな景色が映りだ去るのか」
窓というスクリーンには、決まった映像はない。
景色が主人公だ。
山も、海も、町も、そして、人も・・・
「やはり、ここにいたんだね」
女の子に声を、かけられる。
赤の他人だった彼女が、顔見知りとなり、知り合いとなり、
そして、友達となった・・・
そこから先は無理だし、望まない・・・
「久しぶりだね。元気だった?」
「見ての通りだよ」
「相変わらずだね」
窓に映った彼女は、笑みを浮かべていた。
「隣、いい?」
「そのつもりで、来たんだろ?」
「うん」
そういうと、彼女は僕の隣に腰を下ろす。
「私、ここの映画が好きなんだ」
「僕もだよ」
「窓という、スクリーンには、いろいろな景色が映りだされて、
退屈しないよね?」
「僕も、そう思うよ」
この路線は、客はまばら・・・
殆ど貸し切り状態だが、それがいい・・・
「そういや、私たち、まだ名前を知らなかったね」
「確かにね」
「私は、新谷彩(あらたに あや)。17歳。君は?」
「中町忠雄(なかまち ただお)。同じく、17歳」
彼女とは偶然に知り合った。
最初は、意識しなかったが、何回も会うと、覚えてしまう。
そして、彼女の方から、声をかけてきてくれたた。
「次は、いつ会えるかな」
「神様に訊いてくれ」
列車は、間もなく終着駅に着く。
ここからは、乗り換えだ。
それぞれ、別の道をゆく。
「じゃあ、またこの劇場で・・・」
「うん。時間が合えばね」
別れ際には、いつしか握手をするようになった。
この温もりが消えないうちに、また会える事を・・・
列車という名のシアター 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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