異世界監視カメラ

水谷一志

第1話 異世界監視カメラ

  キーワード、【監視カメラ】

 一

 私は、とある異世界の村にある監視カメラです。

 ただ村人の誰も、私の存在に気づいてはいません。

 また、自分で言うのも何ですが私は高性能のカメラで、この異世界の村ならどこでも何でも私は見ることができます。

 

 二

 その村には、2人の仲のいい少年がいました。1人の名前は、ルイ。彼は村の勇者を目指して、日々修行に励んでいます。さすが勇者を目指すだけあって彼は怖いもの知らずですが、彼には苦手なものが1つあります…。それが、幽霊やお化けといった類のものです。

 そしてもう1人の名前は、ユージオです。彼はどちらかというと控えめでおとなしい少年ですが、彼には他の人とは異なる力があります。それは、幽霊やお化けを見ることができる能力です。


 三

 そしてある日、村で事件が起こりました。その村に住んでいる女の子の部屋が、家族が出かけている間に何者かに荒らされたのです。

 「これは誰の仕業だ!」

女の子のお父さんは村のおまわりさんや周りの人々に激しく怒りましたが、おまわりさんは、

「その時間は部屋に鍵がかかっていたはずです…。ということは…、いったい誰の仕業なんでしょう?」

と言い、何も解決できません。

 そして村人たちはユージオのことを思い出します。

 「そうだ!これは霊の仕業かもしれない…。

 ならユージオに見てもらえれば、解決するかもしれない!」


 四

 そしてユージオはその女の子の部屋に入るように促されますが、その家に近づいた時から、

 「僕、何か感じる…。多分部屋の中には幽霊がいる!」

とユージオは言いました。

「そうか…。ならお祓いをしてもらうしかないな。

 でもそういえばこの村には、『霊を斬る』剣が存在するんじゃなかったか?」

 女の子のお父さんはそう言いました。

 そして何を隠そう、その剣はルイの家にあったのです。


 五

 「ルイ…本当に大丈夫なの?」

「当ったり前だろ!俺はこの剣で霊を斬って、本物の勇者になるんだよ!」

「でもルイ、君はお化けが苦手なんじゃ…?」

「バカ!そんなもの怖がってちゃ、勇者になんてなれねえよ!」

 勝手に家から剣を持ち出してきたルイですが、足は震えています。

 「さ、行くぞ!」

そう言ってルイとユージオは、事件以来家族は別の所に暮らしているため空いているその家に忍び込みます。

 そして、例の女の子の部屋に行くと…。

「あ、あそこに女の子の幽霊がいるよ!」

ユージオが幽霊を発見しました。


 六

 「お、お、おい!お前…な、何で悪さをしたんだ!?」

ルイは震えてかすれ声になりながら、女の子の霊に問いかけます。

「わ、わけを言わないならこ、この剣でお前を斬るぞ…!」

 そう言ったルイでしたが声に覇気がありません。

「待ってルイ!」

 するとユージオが女の子の霊の声を聴きつけます。

 《ない…。私のペンダント、ない…。》

「この子、何か探し物をしているみたい。

 …あっ!」

そこでユージオはあることに思い至ります。

 「うちの倉庫に、誰のものか分からないペンダントがずっと置いてあるんだけど…、もしかしてそれかな!?」

「マ、マジかよそれ!?」

そして2人は一旦部屋から出てユージオの家の倉庫に行き、ペンダントを持って再び女の子の部屋に行きます。

 すると…。

 《私の…ペンダント…。

 ありがとう…。》

 女の子の霊は2人の少年に感謝の言葉を言い、その場から消えていきました。


 七

 「おいルイ!何で無茶するんだ!」

「そうよルイ。お母さんもそう思うわ。」

事の顛末(てんまつ)を家族や村人に話した2人の少年は、2人の家族に叱られました。と同時に家族から、

 『怪我など何もなくて良かった。』

という安堵の声もかけられました。

 そしてユージオのおばあさんが、ユージオに語りかけます。

「私も早く気づけば良かったんじゃが、あれは今から100年前ほどのペンダントでねえ。昔この村で戦争があった時に亡くなった女の子が身に着けていたものらしいんじゃ。」

 そしてユージオたちはおまわりさんから、最近他の村でも女の子の部屋が荒らされる事件があったことを聞きます。

 「ということは、その女の子は100年間、この広い世界のどこかにペンダントがあると思って探し回っていたのかねえ。

 小さな女の子だからどこに何があるか分からなかっただろうに。」

 それを聞いた村人たちは、心の底から、

『ペンダントが見つかって良かった。』

と思うのでした。


 八

 そんな話の最中、ユージオの様子に異変が生じます。

 「僕…何か感じる…。」

「何がだよユージオ?」

「何かこの村全体が、誰かに見られているような…。」

「おいそれって…!?

 あ、安心しろユージオ。お、俺がそんな霊なんてぶった斬って…、」

「あと、僕たち全員が、誰かに操られているような…。」


 ※ ※ ※ ※

 「はい、カット!ありがとうございました!」

 その日の分の撮影を終えたカメラマンは、少しホッとした様子を見せる。

 「しっかし思ったより大変だな。【人形劇】の撮影も。」

 そう同僚に声をかけられたカメラマンだが、その後ある異変に気づく。

 「ってか最後の台詞、予定にあったか?」

「…は?何言ってんだよ。」

「…何か勝手に今、【人形が動いた】ような気が…。」

「…まさか。」 (終)


 次のキーワード、【人形】

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