なんにもきこえない虫

usagi

第1話 なんにもきこえない虫

「なあ、あおば。耳の中には虫が住んでるんだよ。」

あおばはつい1カ月前まではお母さんのおなかの中にいたので、話しかけても言葉は理解できないはずでした。でも、パパは「わからないふりしているだけで、実はわかってるんじゃないか」と、色々と話しかけていたのです。


パパは泣きじゃくる息子に向かって、やさしい声で続けました。

「パパがおっきなくしゃみをしても、あおばだってそんな風に大きな声で泣いても、自分は平気だろ?」


「普通さ、周りの人が『うるさい!!』って思うような、そんなに大きな音を自分が出したら、うるさくて自分自身が耐えられないハズなんだ。」


パパの声を聞いて、いつのまにかあおばは泣くのをやめていました。


「そこで、登場するのが『なんにもきこえない虫』なのさ。」

「その虫がいると大丈夫なんだ。音を消してくれるから。」

「だから、あおばがいくらさわいでも、泣いても自分はうるさくないんだよ。」


さらに小さな声で付け加えました。

「これ、パパの秘密の発見なんだ。」

「すごい発見だから、二人だけの内緒だよ。」


あおばはきょとんとした顔で、自分を抱きかかえていたパパの顔を覗き、

キャッキャと笑い声をあげました。

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なんにもきこえない虫 usagi @unop7035

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