第30話 イルティス大洋航海(前編)
ティーテン王国に向かうための客船『レイルー号』に乗った僕たちは、『イルティス大洋』と呼ばれる比較的天候は穏やかだが、海中に『シーネス』空中に『ウィンディス』と呼ばれる強力な魔物が出没することがある海域だ。
「いい天気ですね~」
「確かに、今の所聞いたような危険な魔物は出没してないから平和だよな」
天気も良く、気温も丁度いい感じなのでかなり眠くなる感じだ。
「ねえ。シーネスとかウィンディスってどんな奴なの? 私全然知らないんだけど、教えてくれない?」
ふと、
「はい。まずはシーネスという魔物ですが……」
シーネスは全世界の海中に生息している3m~6mの大きなサメのような魔物で、海中を時速130kmの高速で泳ぐ。水属性に対する耐性が非常に高く、雷属性に対する耐性は低い。大きな獲物に集団で襲いかかる習性がある。
「続いてウィンディスという魔物ですが……」
ウィンディスはイルティス大洋近辺に生息している風属性のドラゴンで、最高飛行速度は10秒程度ではあるが600kmと、帝国のドラゴンよりも遥かに速く飛行し、全長11m~15mもある巨大な魔物だ。数は少ないが、その巨体と魔力の強さは驚異である。風属性は効かず、地属性に対する耐性も非常に高く、火属性に対する耐性は非常に低い。
これ等のことから大型船舶がイルティス大洋近辺を通る際は魔法使い、空中行動に適した鳥人族、水中行動に適した魚人族の魔法剣士達を数百人単位で乗せる必要がある。
「もう少し安全な航路はなかったのかな?」
「他の航路は天候が荒れることが多くて、無理みたいですね」
確かに広い範囲の天候を自由自在に変えることの出来る人間は存在しないだろう。ならば強い魔物が出現する可能性があっても、強い人達を沢山雇ってこちらを通ると言う選択肢を選ぶ人が大半だろう。
「仮にウィンディスやシーネスが数十単位で同時攻撃してきても大丈夫なのかな?」
「流石に数十単位は厳しいと思いますけどね。まあ、今までそんな事はありませんでしたけど。最大で5頭って話らしいですし」
成る程。出来ることならあまり目立ちたくはないので数十単位で出現しないことを祈る。
そんな会話をしていると、船の甲板のレストランの開店時間を過ぎていた事に気づいたのでそこに向かう。
~レイルー号 甲板~
「ずいぶん沢山の人が居ますね」
「ああ、この船のレストランは旨いって有名らしい。あそこの冒険者が言ってた」
(開店時間になって直ぐに向かえばいい席がとれたのになぁ)
そう思ったが、今更そんな事考えても仕方ないので空いている席に座って待っていると、血相を変えて女の人がスタッフに詰め寄っている。どうしたのだろうと、耳を澄ませて聞いてみる。すると、相当深刻な事態のようだ。
「早く、早く魚人族の人達を呼んで! うちの娘が…… 海に落ちたの!」
「分かりました。至急呼んで来ます!」
そう言ってレストランのスタッフは船内に消える。
(こっから呼んでちゃ間に合わない……)
水中に潜ってその娘を助けようと、僕の心は決まった。
「という訳でミラ、リュエル。行ってくる!」
「「「え?」」」
甲板を囲ってあった柵を乗り越え、水中に潜る。
「さて、捜索開始しますか『水中探知』」
水中に居る存在の魔力を感知して、その場所を突き止める魔法を発動、あの女の人の娘さんを捜索する。
「徐々に弱まっていく魔力反応…… これだ!!」
それらしき反応を見つけた僕はすぐさまその方へ向かう。幸いにもシーネスの存在は感知しなかった。
「間に合えぇ!!」
シーネス以上のスピードで水中を移動、1分後対象を発見して無事に水上に浮上することに成功した。
直ぐに船上に上がり、回復魔法を唱えた後にその人の所へ行く。
「すいません。貴女の娘さんは、この娘ですか?」
「…………良かった。本当に良かったぁぁぁーーー!」
そう泣きながら助けた娘を抱き抱える女の人を見て、無事に助けることが出来て良かった。そう思った。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!!」
こうして、無事に救助することが出来たので、食事に戻るも周りの歓声が凄くて集中して食べることが出来なかった。
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