第24話 王都防衛編(前編)

「こいつは不味いな……」


 空を埋め尽くす程のフレアドラゴンの大群。地上を見ていると、魔導防衛隊であろう人たちが空に水属性魔法を発射しているが、高速で飛行するドラゴンにはほとんど当たっていない。逆に大量のドラゴンから放たれる火炎弾が雨あられのように地面に降り注ぎ、魔導防衛隊に大きな被害を与える。

 

「外に行きましょう!」


 その光景を窓から一緒に見ていたリュエルがそう言った。

 

 目の前で命が散って行くその様を、無惨にも街が燃やされていく光景を見て、我慢の限界を越えたようだった。


 そしてそれは、ミラも僕も同じであった。


「勿論! とても見ているだけなんて無理だ!」


「私も行くよ!」


 3人とも心が一致したところで、侵略者を排除して、この街を助けるべく城の外に出る。


「リュエル、ミラ。『竜伐の光槍・滅』の最大威力で一気にドラゴンを墜とすから、詠唱している間防御をお願い!」


「「「了解!」」」


  誘導性能・威力・同時攻撃数・射程距離を3~6倍上昇させ、更にドラゴン以外の空中目標にも対応したが、最大威力で放とうとするとその分消費魔力が3倍になり、詠唱時間に至っては3分というとんでもない長さになってしまう為、使い所が通常の竜伐の光槍よりも少なくなってしまう欠点をもつ魔法である。


  「災いをもたらす炎の竜よ。これ以上この街に災厄を振り撒くのならば、この聖なる光の槍にて貫かん!!」


 そう言葉を紡ぎ、魔力溜めを始める。


「よし。クアメルが魔力を溜め始めたぞ。3分経つまで何とか耐えるぞ!」


「分かりました!」


 この隙を、空中の竜騎士飛行部隊は見逃すわけがなかった。


「下の白髪の女がなにやら大規模攻撃魔法を唱え始めて居ます!」


「あの魔力の集まり方…… 不味いな。第一部隊! 何としてでもあの魔法を止めろ! 失敗したら…… 全員墜とされるぞ!!」


「「「おぉぉぉぉーーー!!」」」


 第一部隊隊長の指示により、竜騎士飛行部隊およそ115は地上の魔法詠唱中のクアメルに向けて、総力を上げて火炎魔法・火焔弾を放ち始める。


「ミラ、火焔弾来ました!」


「よし、行くぞ!『アイシクルランサー』!」

 

 ミラは、強烈な冷気を放つ氷の槍を展開、火焔弾に向けて放つ。槍が火焔弾に当たると、それを消滅させる。


「私も行きます!『大地の轟弓』!」


 リュエルは、火焔弾が消滅した後直ぐに、大地の加護を受けた高い破壊力の弓矢を複数放ち、3頭のドラゴンを墜とす。


「隊長! あの2人が邪魔で奴に攻撃が届きません!」


「くそ! あの2人もかなりのやり手のようだな……」


「どうしましょう?」


「よし。かくなる上は、『滅天火』を放て!!」


 10頭の竜が魔力を集結させ、あらゆるものを溶かし尽くし、空をも赤く染め上げるとも言われる合体火炎系最高級呪文の1つが、クアメル達に襲いかかる。


「リュエルあれどうするか。さすがに不味いな……」


「よし、こっちも合体魔法だ。もうすぐ魔力溜めが終わるみたいだから、それまで持ちこたえるぞ」


「分かった」


「「「魔力開放! フルライトニングレイ!!」」」


 2人の総魔力の半分を使い、光と雷の複合属性の極大光線を相手に向けて放つ。その威力は凄まじく、相手の滅天火を消し飛ばして、更に相手のドラゴンを10頭おまけで消し飛ばした。


「隊長! 相手の極大魔法により、滅天火は消し飛ばされ、更に我が隊のドラゴンが10頭消滅しました!!」


「嘘だろう……」


「あ、白髪の女、詠唱完了した模様です!」


「全員撤退! 早くするんだ!!」


 このままでは不味いと判断し、飛行部隊は逃げ出した。


「クアメル。行けるか?」


「詠唱も終わったし、もう行けるよ!」


「クアメル。よろしくお願いします!!」


「了解。行くよ!『竜伐の光槍・滅』!!」


 自身の後方の魔方陣から、巨大な光の槍が100近く放たれる。その槍は轟音を響かせながら、上空のドラゴンを超高速で追い掛ける。追尾する超高速の光の槍は、寸分たがわずドラゴンに命中し、爆散させる。全てを放ち終わった後には、全てのドラゴンを撃墜することに成功した。


 こうして、竜騎士による街への被害をこれ以上拡大するのを防ぐことに成功した。

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