第21話 ルーエル観光

「ちょっと失敗したなぁ。どうしても売りたいが為に気合いを入れてエンチャント付与したら、匙加減間違えて神殿の人達にあげた神刀『水桜』と同じレベルの刀を作りかけたし……」


「完全に付与する前に軌道修正できて良かったじゃないか」


「うん。確かにそうだね。まあ、それでも普通のエンチャント付与された武具よりは強力な物になった上に、やたらと目立っちゃったからね……」


 今までの経験と言ったら、神刀用の強力なエンチャントを付与したことのみ。普通レベルの付与経験など無かった。


 その為、匙加減を間違えて神宝級の武具を大量生産しそうになり、途中で軌道修正を図るも慌てていた為に武器ごと全部破壊しかける。


 その後何とか修正に成功したものの、発光と爆音現象を引き起こしたせいでやたらと目立ってしまい、今後の武器売りに支障をきたす可能性…… というかもう既に支障をきたしている。


 売り始めた序盤でやらかしたせいで、武器のエンチャントの質に疑問を持たれたのだろう。現に、たったの1つしか武器が売れていない。これは、完全に僕の失態である。


「それで、昼食食べたら何しようか?」


「夜まで都市観光でもしませんか?」


「まあ、そうだよな。ここでずっと食べてるわけにも行かないし」


「分かった。それで、どこに行く?」


「今考えてる観光に行きたい場所いくつか候補があるんだが……」


 そう言ってミラから言われた候補の1つ目は、ルーフェルン城。2つ目は、『ルエルフ魔導防衛隊訓練所』3つ目は、『ルハルティーの時計塔』という場所である。


「どれも王都じゃ有名かつ人気な観光地だね。さて、どれにしようかな……」


「では、2つ目の所はどうですか? 私も正直、防衛隊の訓練には興味があるので」


「言われてみれば、確かに気になるね。よし、そこにしようかな。ミラはどう? 問題なければ決定するけど」


「大丈夫だ」


 こうして、行き先がルエルフ魔導防衛隊訓練所に決まった。



  ~ルエルフ魔導防衛隊訓練所~


「お、ちょうど訓練が始まるのかな?」


「そうみたいですね」


  《お待たせしました。只今より、魔導防衛隊の訓練を始めます》

 

 王都の防衛の要であるルエルフ魔導防衛隊が、日々の訓練に使うかなりの広さを誇る訓練所である。上級魔法が飛び交う危険地帯でもあるため、結界内部には入れないが、外側からでもその迫力に目を奪われる。


「いや、ちょっと待て。これはもう訓練ってレベルじゃねえ……」


「下手すると死人が出るレベルの訓練…… これは列強国に匹敵するって言われるのも納得だね」


「私は正直、魔導部隊だけだったら列強国越えてるかもって思いました」


 まだ僕はこの世界の列強国全部見て回った訳じゃないので何とも言えないが、今日のこの訓練を見る限りでは、かなり強力な防衛軍をルエルフ王国は持っていると見える。


 そんな感じで1時間後、魔導防衛隊の超過激訓練も終わりを告げたので、僕たちは次の観光地であるルハルティー時計塔へ向かっている道中、昨日僕のやらかしたエンチャント剣を買っていった男の人が、数人の兵士たちを連れて僕に話しかけてきた。


「やっと見つけました。私は、王国魔導騎士団隊長リリセアと申します」


  (あの人王国軍の関係者だったのね……)


「で、その王国魔導騎士団隊長のリリセアさんが、私に何か用事でも?」


「実はですね、昨日貴女から買ったあの水色に淡く光る剣を国王様に見せたのですよ。そうしたら、この剣を生み出した者に是非会いたいと仰ったので、貴女を探していました」


 うわぁ。まさか昨日のアレで目をつけられたのか…… そう思った。


「はい。分かりました。国王様のご希望とあらば行きましょう」


「ありがとうございます。後ろのお二方も一緒にどうぞ」


  「「「分かりました」」」


 という訳で、この国の王様に会いに行くことになった。



  ~王都ルーエル ルーフェルン城 玉座の間~


 リリセアに案内されて来たのは、城の中でも最重要と言われるこの王の居る玉座の間である。豪華な装飾が施されているこの場所は、入っただけで威圧されそうな感じだ。


「緊張するなぁ」


「まさか王国の国王様の居るルーフェルン城の玉座の間に入ることになるなんて、こんな経験2度と無いかもですね」


「そうだな」


 そして、遂に国王と対面を果たす。


「よくぞ来られた。私は、レストルシア=ルエルフ3世。そなたがリリセアの持っている剣を生み出した者だな?」


「はい。私は、クアメルと申します。リリセア殿の持っている剣を生み出したのは、私です」


「そうか……」


  一時の沈黙の後……


「実はそなたに頼みたいことがある」


「なんでしょうか。私に出来ることであれば致しますが……」


「我が王国魔導騎士団の着ている装備品にエンチャント付与をしてほしいのだか、どうだろうか?」


「装備品にエンチャント付与ですか。分かりました。なので、その為のスペースを貸し出して頂ければ幸いですが」


「分かった」


 こうして、昨日やらかしたお陰で、王国の目に留まって装備品にエンチャント付与をすることになった。


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