アトピーと皮膚筋炎
まずはじめに、アトピーと皮膚筋炎発症の因果関係の有無について、医学的な情報を見聞きしたことは、いまのところありません。見聞きの範囲は、膠原病の医療本3冊、インターネットに上がっている情報、膠原科の主治医と皮膚科の担当医、友人知人を指します。
ただ、私個人は元々アトピー患者で皮膚が弱く、今回発症した皮膚筋炎も体の弱いところに身体的な不調が現れたように感じています。そのため、アトピーと皮膚筋炎というタイトルで、一話書いてみたいと思います。
私がアトピーになったのは、一歳半の時。比較的重度の患者で、人生の各ステージでは下記のように症状が現れ生活に影響していた。
幼児期から現在に至るまで、食べ物は野菜と魚中心。防ダニ対策の布団を使用。下着や洋服は綿100%を中心にし、洗剤、保湿クリーム、シャンプー、化粧品等は赤ちゃん向けまたは、低刺激のもののみ使用している。
<各年代のアトピー症状>
就学前:顔や手足、間接などに湿疹や痒みあり。見た目もアトピー持ちとわかる。
小学生:同上。対策として食事療法を取り入れる。ステロイド含有の軟膏使用。ダニ・ほこり対策用の布団を使用。日焼け対策のため、手足は服で覆うようにし、露出の高い体操着を着る体育の授業は欠席することもある。
中学生:食事制限以外、同上。プールの授業は、日焼けや塩素水を避けるために欠席することもある。
高校生:同上。大学受験勉強のストレスにより、悪化。
大学生:症状は落ち着く。ステロイド軟膏は引き続き使用。
社会人/20代:仕事のストレスで、悪化。かゆみ止めやステロイド軟膏で対応。
社会人/30代:米国在住。環境の変化により、症状は比較的落ち着く。しかし引き続きかゆみ止めとステロイド軟膏使用。白髪毛染めの薬液で、重度のアレルギー発症。
39歳:日本へ帰国。新しい環境でストレス増加。引き続きかゆみ止めとステロイド軟膏使用。
40歳:皮膚筋炎発症。
上記のようなアトピー遍歴を経て、40歳という節目で皮膚筋炎を発症した。皮膚筋炎発症時に背中から太ももにかけて擦過傷が現れたのだが、皮膚筋炎の診断が下りる前に地元のかかりつけの皮膚科を受診した際には、アトピーによる湿疹ではないかと診断された。
実際体に浮き出たみみずばれのような赤い線は、痒みから体中を引っ掻いた傷のように見えた。しかし、自分では引っ掻いておらず、自然と浮き出た擦過傷だったため、不思議に思っていた。眠っている間に無意識に引っ掻いたのかとも思ったが、背骨のあたりなど、手がなかなか届かない箇所にも擦過傷は出現していたこともあり、やはり自分では引っ掻いていないのに変だなと、考えていた。
擦過傷は、2センチから15センチほどの長さで、ちょうど爪で引っ掻いたような赤みをもって、背中、お尻、太ももに現れた。
顔と首周りには、ニキビと火傷のただれのような症状が現れた。顔は最大で、片目が開かないくらいに腫れあがり、首の後ろや肩甲骨の辺りは真っ赤に膿んだ。枕や衣服が当たると痛いため、首には包帯を巻き、肩甲骨周辺のただれには、火傷用の保護テープを貼っていた。首の後ろのただれは現在ではなくなっているが、色素沈着が残っている。こういった顔と首周りの症状は、アトピーの範囲内では起きたことがない。皮膚筋炎由縁の症状だと思われる。皮膚筋炎の医学解説にも、上眼瞼の腫れぼったい紅斑はヘリオトロープ疹と呼ばれる、皮膚筋炎の特徴的な症状という記載がある。これに該当するだろう。また、首周りのただれは、ゴットロン兆候というものに該当するようだ。
ゴットロン兆候とは、皮膚筋炎の皮膚に現れる特徴的なもう一つの症状で、手指関節背面の角質増殖や皮膚萎縮を伴う紫紅色紅斑、と医学説明書にはある。大学病院で病気を特定する際と特定後に、毎回手の甲の状態を確認された。これはゴットロン兆候の有無を確認していたと思われる。ゴットロン兆候は手の甲の関節に現れやすいようだ。しかし、日光があたる部分や物理的に擦れる部分にも起きやすいようで、私の首周りの湿疹はゴットロン兆候に該当すると思われる。
上記の皮膚症状は、入院後ステロイド投薬により回復した。顔の腫れは、入院の1週間ほど前から始まっていたが、入院後投薬開始から約2週間でかなり落ち着いた。赤みと腫れ、ニキビのような湿疹は、その後も2カ月くらい継続した。首のただれは、投薬開始から1ヵ月半ほどでほぼなくなった。体の湿疹は、二カ月半ほど引かなかった。
ここから判断が難しいのだが、顔の赤みや湿疹は、途中からステロイドの副作用に移行していった。自分としては、病気を発症してから現在に至るまで、ずっと顔が酷いことになっており不快感マックスというだけなのだが、病状としては、どこかの時点で違うものに変化しているのだ。
当時の写真を振り返るに(写真で記録を残している)、投薬開始から2カ月前後、プレドニン(ステロイド薬)40㎎前後の時から、ヘリオトロープ疹はある程度改善し、ステロイドの副作用であるムーンフェイスとニキビへ移行しているように思われる。もしくは両方が混ざったものかもしれない。ただ、上述のようにいったんヘリオトロープ疹は回復し、顔の大きさが元に戻ってから再度顔が腫れだしているので、皮膚筋炎の症状は治まり、その代わりその症状を抑えるための薬の副作用が出てきたように考えられる。
ムーンフェイスの特徴は、二重アゴだと思う。人によって多少異なるとは思うが、私の場合は顕著に二重アゴが出現した。また、顔全体が真ん丸になりつつ、頬骨やほうれい線のあたりも肉付きがよくなる。某NHKのクイズ番組の、江戸川の黒い鳥を思い浮かべていただけるとわかりやすい。二重アゴの真ん丸顔。ああなる。これはヘリオトロープ疹では現れない特徴だ。
上記は皮膚の表面的な症状についてだが、内面的な症状についても書いていく。目には見えないけれど、体の中では他の症状も暴れていた。かゆみ、である。
今回皮膚筋炎で現れたかゆみは、4つのカテゴリーに分ける。
強)睡眠を妨げるほどの痒み。とにかく引っ掻きまわしていないと気が済まない。かゆみ止めの薬が必要。入院直後、ステロイド投薬開始後も1週間ほど継続。発症個所は、胴体、両腕、両足。
中)冷やしたり、保湿すれば収まる程度の痒み。投薬が進み落ち着いたが、時々痒みが出る。投薬後から半年ほど継続。顔(特に夜中のみ)、胴体、両足に発症。かゆみ止めは不要。
弱)痒みの度合いは中程度だが、忙しくした日や、普段と違うストレスがかかった日の翌日に出る。胴体、両腿、両腕に発症。かゆみ止めは不要で、一日で治まる。
他)頭皮のかゆみ。薬(皮膚外用合成賢皮質ホルモン剤)使用。ステロイド投薬開始から約半年経過ごろから発症。
医師によると、プレドニン投薬によりアトピーの症状は治まるとのこと。自分としてもそういった実感はある。例えば、肌の乾燥が和らいだり、指先の痒みや手荒れがなくなったりと、いわゆるアトピーの症状は抑えられている。
しかし、上記の4つのカテゴリーの痒みが、アトピーと全く無関係かというとわからない。特に頭皮のかゆみは、アトピーではよくおこることで、夏場で汗をかく時期などは定期的に薬をもらい治療していた。
アトピーはストレスがかかると、かゆくなることがある。皮膚科の医師に、普段と違うことをしたり忙しくした翌日に痒みがでるのだが、アトピーかどうか聞いたところ、ストレスかもしれないとの回答だった。アトピーかどうかは不明だが、ストレスが起因で痒みがでたのならば、アトピーと無関係とも言えないだろう。また、この痒みが皮膚筋炎の症状かと聞いたところ、はっきりとした回答はなかった。難病だけに、医師としては白黒はっきりとはわからないのだろう。
もう一つ、肌の乾燥について。
アトピーでは極端に肌が乾燥し、常日頃から保湿をすることが重要になる。私の場合、朝晩必ず2回、冬も夏もボディークリームを体中に塗る。これが通常なのだが、皮膚筋炎の病状の経過に伴って、肌の乾燥度が変化した。
入院直前、病状が急変したころから投薬開始後二か月ほどは、頭の先から足の先まで、とにかく乾燥して仕方がなかった。特に入院中の1ヵ月半は、大さじ2杯ほどのクリームを一つの関節から次の関節の間の肌に塗っていた。つまり、片腕の腕首からひじに大さじ2杯。ひじから肩まで大さじ2杯。腿の付け根から膝まで大さじ2杯。胴体の前面に大さじ2杯。といった具合だ。
ぬるぬるに塗っても塗っても乾燥し、一日3回塗る時もあった。
それが投薬開始から、3カ月目あたりで、肌は水をはじくようになり(通常は油分が少ないので、水ははじかないし、クリームもどんどん浸透していく)、クリームが片腕全体で、大さじ1杯ほどで足りるようになった。一日一回の保湿でも間に合うくらいである。
それがここ最近は、発症時の前と同じような乾燥度に戻ってきた。投薬開始約10カ月、プレドニン8㎎前後である。そこそこ乾燥するので、朝晩2回保湿クリームをぬる。たくさんではないが、体全体にいきわたるよう、薄く塗っていく。通常のアトピー対応である。
プレドニン(ステロイド剤)投薬は、50㎎から始まった。
最初は皮膚筋炎を抑えるために大量のステロイドを飲む必要がある。その副作用で、肌に関しては一時期活性化したが、プレドニンの減量と共に、通常のコンディションに戻りつつあるため、アトピーの症状も戻ってきたように思われる。
一般的に、ステロイドはアトピー治療にも使用する。今回皮膚筋炎の治療のために大量のステロイド薬を使用しているのが、このプレドニン使用により、アトピーの症状は(一時的には)治まると担当医師も言っているところだ。
皮膚筋炎とアトピーとの因果関係は不明だが、これら二つの病気は共に自分の皮膚に発症した。そこでこのように記録してみた次第である。
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