第五章 東京都不死区での決闘・その3

「やる気か?」


「なんとか努力する、なんて言葉で、無事に釈放されると安心するほど私もお人好しではありませんので」


「ま、それも当然だな」


 同じつくられたもの同士、一番心を許せる相手だと思っていたんだが。やるしかないと思いかけた瞬間、アンディードと俺を挟んでいたカウンターが爆音を上げて粉砕された。いや違う! アンディードがカウンターを蹴り壊して俺に飛びかかってきたのだ!! 勢いに負けて押し倒されたが、すごい力だった。羽佐間シリーズと対抗できるように製造されたってのは伊達じゃないらしい。


「ふんぬー!!」


 もうやけくそで起き上がりながら、俺はむしゃぶりついてくるアンディードの身体を抱きしめた。このまま腕くらいはへし折るしかない。つづいて足もだ。かわいそうだが、両手両足が動かなくなれば、警察へ運ぶのも容易だろう。考えながら腕の力を上げる俺の前で、アンディードが急に俺の顔をのぞきこんだ。


「何をするんです! 離してください!!」


「え、あ、ごめん」


 俺は反射で謝りながら、アンディードから手を離してしまった。これは痛恨のミスである。まさか、アンディードがこういう手をとってくるとは。後悔する俺から、一瞬でアンディードが飛び離れた。その直後にアンディードの廻し蹴りが飛ぶ。受けをとる俺の腕が衝撃をこらえきれずに嫌な音を立てた。


「こちらも折らせてもらいます」


 というアンディードの声は、左右逆の廻し蹴りが飛んだあとで聞こえた。この感覚だと、両腕は肘から粉砕されているな。悲鳴のでそうな痛みをこらえ、俺は痛覚系の情報伝達を遮断した。


「両腕が折れれば、もう基本的な攻撃はできないでしょう」


 アンディードが俺から離れながら言う。考えることは俺と同じだったか。それでも蹴りで応戦できるかも知れない。アンディードにむかって間を詰めようとし、俺は目を見開いた。アンディードは横の棚に陳列してあるショットガンを手にとったのである!


「ここはパーツ屋ですからね。こういうときのために、実弾のこもった銃も置いていたんですよ」


 アンディードがショットガンを上下に振り、ポンプ式の不気味な作動音を立ててから銃口を俺にむけた。


「さようなら、慶一郎さん」


 アンディードの声が悲しげに聞こえた。


 ………………………………………………………………………………ダンッ!!……

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