ハーバーバタフライ

夏 露樹

 あらすじ

ある時代、ある世界でのお話である。


緑成す平原と丘、白銀纏う山脈。


その大自然の中に、人々は集い、街を成し、都市を造りあまつさえ国家を建てて営みを続けていた。


ときに野獣と対峙し、ときに人同士で争い、


ときには異端の神々と関わる事も有ったという。


自然と調和しつつ営みを続けて来た人々であったが、ある時この世界の摂理に逆らって地に落ちようとしない不可思議な鉱石(のちにこの世界で錬金術者と呼ばれている科学者によって『不沈石』と名付けられる)の発見と、その応用によって作り上げられた飛空技術は、この世界に飛空船という禁断の技術をもたらしてしまう。


血気盛んなエイメールは、船大工の父親の頑ななまでの実直さを嫌い、家を飛び出して放浪の旅を続けていたが、ある時田舎町フリエンテのパン屋の幼い姉妹に、仕入れに出掛けたまま帰ってこない両親探しを頼まれてしまい、成り行きであても無いのに引き受けてしまう。


立ち寄った商業都市で情報収集していたエイメールは姉妹の両親の情報を追う内、鉱山地帯でそれらしき夫婦連れを見掛けたとの情報を掴み向かうが、途上空賊に襲われ不時着していた郵便飛空船と出逢いエイメールは彼らと行動を共にすることになった。


紺碧こんぺきの空と深碧しんぺきの海の間、陽光と白い雲の波間を掻き分けて郵便飛空船パランティカシータ(あさぎまだら)号は進む。


旅を続ける内、エイメールはいつしかうら若き少女シャロンが何故この船の船長となったかを知り、シャロンの秘めた苦悩に寄り添うようになる。


邪教の信徒に攫われた子供たちの救出に、砂漠の地下神殿に幽閉された異界の神の娘との闘い。


やがて人探しの旅は酒場の法螺話と噂されていた浮遊大陸へと誘われていく。

何故飛ぶことが禁忌とされていたのか真実に辿り着きながらも。

少年は、出逢った人々の為、信じた仲間たちと今日も空を駆ける。


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