第93話 白日夢

 太陽。

 真昼。

 白昼。

 潔白。


 これらを意味する単語は何だろうか。

 白日だ。

 では、白日から連想する文章は何だろうか。


 白日の夢・・・白昼夢と同じ意味だ。

 青天白日の身・・・身が潔白であることを意味する。

 白日の下に晒す・・・隠されていた物事を世間に公開することを意味する。


 だが、この時期に思い浮かべるものは異なるものかも知れない。


 ホワイトデー。


 そう。

 資本主義が生み出した悪しき伝統だ。


☆★☆★☆★☆★☆★


「お兄ちゃん、これおいしいよ♪」


 目の前のプチデビル(女子高生)はご機嫌だ。

 先程からケーキをぱくついている。


「あーんってしてあげようか?」

「いや、いいから好きなだけ食べろ」


 日曜日。

 プチデビル(女子高生)に呼び出されて、ケーキバイキングを奢らされている。

 いつものことだが、今日に限っていえば、不満はない。

 もともと、仁義は通すつもりだったからだ。


「一応、お返しは考えていたんだが・・・」

「これでいいよ」

「日にちが早くないか?」


 そう。

 借りは返さないといけない。

 仁義を通さないものに待ち受けるのは破滅だ。

 たとえ、義務ではなかったとしても、いや、義務ではないからこそ、人間性が試される。

 資本主義の悪しき伝統に従うのは癪だが、こればかりは逆らうことはできない。


「下見も兼ねているからね」


 プチデビル(女子高生)はそう言ってきた。


「下見?」

「うん」


 そして、それ以上は言ってこなかった。

 意味は分からなかったが、なぜかそれ以上聞くのは躊躇われた。


「ケーキバイキングって、当たりはずれがあるけど、ここは当たりだね」


 確かにバイキングは、お得な分だけ味はいまいちなときもある。

 だが、ここはケーキ専門店なためか、なかなかの味だった。


「この時期の期間限定っていうのも、当たりの理由かも知れないけどな」

「まあね。いつもはバイキングはやってないみたいだし」


 パクパクパク・・・


 しかしよく食べるな。

 値段は変わらないから、金額面はどうでもいいが、ダイエットとかは気にしないのだろうか。

 まあ、学生で部活もやっているなら、そうそうカロリーオーバーすることもないのだろう。


 ・・・・・


「ありがとうございます」


 時間いっぱい喰らった後、会計を済ます。


「これ割引券です。次回ご利用になれます」

「あ、どうも」


 受け取った券を、そのままプチデビル(女子高生)に渡す。

 だが、なぜかそれを返してくる。

 学校の友人とくることもあるだろうと思ったのだが、要らないのだろうか。

 自分はさすがに一人でケーキバイキングに来ることは無い。


「わたしは食べたから、お兄ちゃん、会社の人を誘って来なよ」

「うーん・・・」

「必ず使わないと駄目だよ。できれば14日に」

「あぁ・・・」


 なるほど。

 なんとなく何を言いたいのか分かった。

 自意識過剰と言われないかが気になっていたのだが、割引券を理由にしろと言いたいのだろう。


「まあ、もらっとく」


☆★☆★☆★☆★☆★


「ケーキって好き?」

「嫌いな女性はあんまりいないと思いますけど~」


 カロリーを気にする女性はいるような気がするが、後輩は気にしないようだ。


「割引券があるんだけど行く?」

「じゃあ、誘っておきますね~」


 そんなわけで、会社が終わった後は後輩と見習い魔法使い(プログラマー:女性)と共に先日の店に行くことになった。

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