第38話 塔

 この都市(名古屋)の足元と頭上には、日夜、冒険者が冒険を繰り広げる場所が広がっている。

 足元には地下迷宮(名古屋地下街)、頭上にはタワー・オブ・ハンズだ。


 特にタワー・オブ・ハンズには、


 古代の竜(恐竜の化石)

 スケルトン(骨格標本)


 などのモンスターはもとより、


 魔女の道具(フラスコや顕微鏡)

 錬金術の素材(鉱石や原石)


 などのアイテムまで存在する。


 夢や浪漫を追い求める冒険者なら、一度は訪れたい場所だ。


★プチデビル(女子高生)×1が現れた★


「それで何を探しているんだ?」


 待ち合わせ場所で合流した後、タワー・オブ・ハンズに登りながら尋ねる。


「友達の誕生日プレゼント。何が言いと思う?」


 ふむ。

 そこからか。

 しばし考える。


「化石とか」

「ん?予想外の意見・・・真面目に考えてる?」

「プレゼントというのは、自分では買わないようなものを貰えるから、嬉しいんじゃないか?」

「その意見が間違っているとは言わないけど」

「化石に興味がないなら鉱石とか。綺麗なものもあるぞ」

「うーん・・・」


 いまいち、ピンと来ていないようだ。

 この辺りの浪漫を理解するには若すぎただろうか。


「じゃあ、食べ物はどうだ?親しさにもよるが、後に残らないから、お互いに気を使わない」

「食べ物か・・・何がいいと思う?」

「変わり種の缶詰とか。あわびの缶詰とか、わらび餅の缶詰とかもあるぞ」

「高級路線か、お菓子系か・・・悪くないかも」


 花より団子で攻めてみた。

 とりあえず、何があるか見てみることにする。


「あわびの缶詰は・・・高い!缶詰でこの値段は払えないって!」

「あわびだしな」

「この値段を出すなら、普通に食べられるし」

「まあ、高校生には贅沢すぎるかな」


 お菓子系もピンと来なかったようだ。

 同じ値段で、缶詰でないものが食べられるのが、引っかかったようだ。


☆★☆★☆★☆★☆★


「パーティーグッズならあるんだけど・・・」

「プレゼントとなると、意外と難しいか」


 ぶらつきながら眺めるが、そろそろアイデアの尽きてきた。

 そもそも、性別も年代も異なる相手の好みは良く知らない。


「もう、この鮨ネタが書かれた湯呑でいいんじゃないか?」

「だんだん、投げやりになってきたね」


 そう言われても、目に付いたもので興味を引いたものくらいしか思いつかない。

 しかし、いい加減と思われるのも癪だ。

 ここは初心に帰ってみよう。


 後々まで残るものは、個人の好みに依存するので、選びにくい。

 食べ物はありだが、普通に買うようなものや食べられるものは、驚きがない。


 食べ物で、もう少し路線を変えてみるか。

 極端に高くないが、自分で買うには少し高くて、好みが別れにくいもの。

 そして、値段が高いぶんだけ、美味しいもの。


 ・・・


 そういえば、あれはどうだろうか。

 確か、見かけた気がする。


「これはどうだ?」


 みかん花はちみつ

 りんご花はちみつ

 菩提樹はちみつ

 etc


「蜂蜜か・・・」


 手に取って見ている。

 興味を引いているようだ。


「ロイヤルゼリー入りのものもあるし、美容にいいとか言いくるめられるんじゃないか?ほとんど効果は無いだろうけど」

「最後の一言が余計だけど・・・いいかも」


 結局、プレゼントは蜂蜜に決めたようだ。

 ロイヤルゼリー入りは高かったので避けて、1種類の花から取った蜂蜜を、2本ほど購入していた。


☆★☆★☆★☆★☆★


 プレゼントは、そこそこ好評だったそうだ。

 紅茶に入れて飲んだら、花の香りがしたと言っていた。


 大人なら、そこにさらにブランデーといきたいところだが・・・

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