第37話 カミ

 カミと言われて何を思い浮かべるだろう。


 紙

 髪

 神


 1文字の単語としては、こんなところだろうか。


 加味

 噛み

 咬み


 2文字の単語としては、こんなところだろうか。


 今回、用事があるのは名詞なので、使用するのは1文字の単語のほうだ。

 昔から伝わる勝負の定義を検証してみる。

 小さな諍いから大規模な戦闘まで、膠着状態に陥ったときに、最後の手段として用いられるアレだ。


『石は鋏に勝ち、鋏は紙に勝ち、紙は石に勝つ』


 1つめは分かる。

 2つめも分かる。

 しかし、3つめが納得いかない。

 紙は石を包めるから勝ちだと聞いたことがあるが、だからどうしたというのだろう。

 石としては、何のダメージも受けていない。


 そこで紙を別の単語に置き換えてみる。


『石は鋏に勝ち、鋏は髪に勝ち、髪は石に勝つ』


 1つめは分かる。

 2つめも分かる。

 3つめは訳が分からない。

 髪と石をぶつけあったら、汚れるという意味で、むしろ髪の負けではないだろうか。

 この例えは外れだ。


 最後の望みをかけて、髪を別の単語に置き換えてみる。


『石は鋏に勝ち、鋏は神に勝ち、神は石に勝つ』


 1つめは分かる。

 3つめも大袈裟すぎるが分かる。

 2つめが納得いかない。

 鋏で神に勝つとはどのような状況だろう。


 ・・・・・


 いや、待てよ。

 似たような伝説を思い出した。

 鋏をアレに置き換えたらどうだろう。


『石はチェーンソーに勝ち、チェーンソーは神に勝ち、神は石に勝つ』


 2つめが、驚くほど、しっくりきた。

 3つめも、あいかわらず大袈裟すぎるが、納得いく。

 1つめは、・・・

 微妙なので、調べてみた。


 ・・・・・


 軟質の石は普通のチェーンソーでも切断できるが、硬質の石はダイヤモンドチェーンソーを使うらしい。


 確かあの伝説では、普通のチェーンソーを使っていたはずだ。

 というわけで、正しい定義はこれだ。


『石はチェーンソー(武器)に勝ち、チェーンソー(武器)は神(塔の上のシルクハット)に勝ち、神(塔の上のシルクハット)は石に勝つ』


 なんだか神が、ものすごく、ちっぽけな存在のようになってしまった。

 いじけて、石ころを蹴っ飛ばしている映像が、頭に浮かんだ。


☆★☆★☆★☆★☆★


 ピコピコ


 プルルルル・・・


「もしもし」

「あ、わたし」


★プチデビル(女子高生)が電波を飛ばしてきた★


「どうした?」

「今日、ひま?」


 ピコピコ


「いま、チェーンソーを使っている。ちょうど、バラバラになった」

「庭の手入れ?・・・違うよね、ゲームの話でしょ。ハンズで探し物があるから付き合って」


 パチッ


「わかった」

「じゃあ、10時に名古屋駅で」


☆★☆★☆★☆★☆★


 神は死なない。

 ただ、一撃で葬り去られるだけだ。


 かみは バラバラになった

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