第20話 夢魔

 冒険者(サラリーマン)は、ギルド(自社)から半強制的に研修を受けさせられる。

 新人とベテランで内容は異なるが、受けさせられるのは同じだ。

 常に研鑽しろということだろう。


 モンスター(お客様)を相手にするクエスト(お仕事)ではないせいか気を抜く者がいるが、油断は大敵だ。

 いつもとは違うタイプの敵に襲われることがある。


☆★☆★☆★☆★☆★


「本日はよろしくお願いします」


★夢魔(研修講師)×1が現れた★


 今回は実技演習はなく、基本的には講師がおこなう話を聞くだけだ。

 それだけを聞くと楽そうだが、そう甘い話ではない。


★夢魔(研修講師)は夢の世界へ誘っている★


 話を聞くだけ。

 それがどれほど大変なことか。

 娯楽のために劇や芸を見ているわけではない。

 興味を持って観光しているわけでもない。


★冒険者Aは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Bは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Cは夢魔の誘いに必死にレジストしている★

★冒険者Dは夢魔の誘いにレジストしている★


 前日のクエスト(お仕事)の疲れがある者。

 前日に気を抜いて夜更かしした者。

 そのような者たちから脱落していく。


 ちなみに、自分は前日に睡眠を大目にとり、朝はポーション(缶コーヒー)を飲んでいる。

 準備は万端だ。

 だが、それでも多少の負荷を感じる。


★冒険者Aは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Bは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Cは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Dは夢魔の誘いに必死にレジストしている★


 次第に犠牲者が増えていく。

 全体の3分の1の人間が抵抗に失敗したところで昼休みを告げる鐘が鳴り響く。

 夢の世界へ迷い込んだ冒険者たちが現実世界に帰還する。


☆★☆★☆★☆★☆★


「それでは午後の部を始めます」


★夢魔(研修講師)×1が現れた★


 5分後。


★冒険者Aは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Bは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Cは夢の世界へ迷い込んだ★

★冒険者Dは夢の世界へ迷い込んだ★


 明らかに午前中よりもレジストに失敗する者が多い。

 しかも、早い。


 かく言う自分も午前中よりも感じる負荷が高い。

 しまった。

 普段通りに昼飯を食べてしまったせいだろうか。

 ポーション(缶コーヒー)は追加で飲んだのだが、どうも効きが悪い。


 うとっ・・・はっ!


 夢の世界へ誘われそうになるのを必死に堪える。


★夢魔(研修講師)は夢の世界へ誘惑している★


 夢魔の誘惑も午前中よりも強烈な気がする。

 夢の世界へ迷い込んだ犠牲者が多く、夢魔の力が増しているのだろうか。


 くっ!


 拳を強く握り、手の平に爪を立てながら、必死に抵抗する。

 こうなれば、持久戦だ。

 こちらが不利であることは判っている。

 だが、負けるわけにはいかない。

 乗り切ってしまえば勝ちだ。


☆★☆★☆★☆★☆★


「お疲れ様でした。講習は以上です」


★夢魔(研修講師)は催眠攻撃を止めた★


 どうやら乗り切ることができたようだ。


★冒険者Aは夢の世界から帰還した★

★冒険者Bは夢の世界から帰還した★

★冒険者Cは夢の世界から帰還した★

★冒険者Dは夢の世界から帰還した★


 他の冒険者たちも現実世界に帰還してきた。

 だが、ここで油断してはいけない。


「最後にテストを受けていただきます。合格点に届かなかった人は追加で講習を受けてください」


★夢魔(研修講師)は悪夢を放った★


 やはりだ。

 最後の最後に大ダメージを受ける攻撃をしかけてきた。


★冒険者Aは悪夢に落とされた★

★冒険者Bは悪夢に落とされた★

★冒険者Cは悪夢に落とされた★

★冒険者Dは悪夢に落とされた★


☆★☆★☆★☆★☆★


 後日、通知された結果では、自分はなんとか合格点を超えていた。


 秋の日は釣瓶落とし。

 秋の夜長に、夜更かしは、ほどほどに。

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