4-6
『お前ら、そこまでしてフィオナの側に居たいのか。』
「だって追っ手が居るんだろ?側に居て守らないとダメじゃないですか!
それに、学園で変な虫が付かないとも限らないしさあ!」
これ見よがしにフィオナにピタリと貼りついたロイ。にっこりと彼女を間近で見つめる様子を見て、学園長は怪訝な表情を作った。
『いや、お前らが既に変な虫なんじゃねぇか…?
ふむ、そうだな、力は申し分無さそうだし護衛は任せるが、寮内の護衛に関しては妖精達に任せるからな。』
「まて、こいつは女子寮に入れると言うことか?」
「特別寮では無く、ですか?」
慌て出したクロードとレオを尻目に、話は進んでいく。
『そうだ。女子寮内はSクラスだとしても、男子禁制。
おめーらも当然立ち入り禁止だ。門限も厳守だから、終業後はきちんと門限までに女子寮へ送り届ける事。』
5人の表情が次第に曇って行く姿は学園長にとって気分が良いのだろう。言っている内容はそれらしいのだが、表情が全く学園の長らしくない。
5人に比例して声高らかになって行く彼はとても大人気なかった。
ロイの「だって」や、フェンの「でも」も通じない。交渉の余地が無いと悟ったロドフは、諦めのため息を付いた。
「しょうがない、少々強引だった僕も悪いしね。それじゃ話を戻そうか。
編入試験、これは対外的に行うだけであって、実際はそれらしく振る舞うだけで良いのでしょう?」
『ああ、編入試験無しで入れるとすると、これもまた目立つしな。
筆記は俺の方で誤魔化すから、実技はお前らの得意分野を指導してくれるだけでいい。』
どうやら5人に対する信頼度はこの数時間で底辺に落ちたらしく、学園長の眼差しは冷めたものだ。
「やりいー!じゃあ僕はあ魔学を教えるよ。」
「そうだねえ…心理学なんかは得意かな。」
だが彼等も同じ時間を過ごした事で、学園長に対する態度が以前に比べて身近になったと言うか、彼を前にして敬意を表す素振りが薄くなったように感じる。
その不満も、学園長の眼差しに含まれてそうだが。
お構い無しに盛り上がるロイとロドフ、学園長とを見比べて、フィオナは少し不憫に感じた。
すると、彼女の同情に気付いたのかどうか定かではないが、ふと学園長から視線を向けられる。
『フィオナもいいか?
悪いが拒否権は無いが、出来る限りの善処はしてやる。』
『はい、ありがとうございます。
皆さんこれからどうぞよろしくお願いします。』
不安が無いと言えば嘘になる。
けれど、どこの誰かもわからない自分を受け入れてくれた恩がある。
一刻も早く記憶を取り戻し、怪我を治さないといけない気持ちも当然あるが、これからの学園生活というものが楽しみでもある。
様々な思いがぐるぐると渦巻き出した所で、ふと頭に誰かの手を置かれた。はっと我に返る。
「大丈夫だ。」
見上げると、クロードが初めて出会った時と同じ優しい表情をこちらに向けている。
めったに笑わないであろう彼の精一杯の気遣いを受けて、フィオナは小さく息を漏らした。
『はい。』
そうだ。これも何か縁あってのこと。
彼らとなら一つ一つ乗り越えることが出来そうだ。
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