3-4

『野蛮では無いけど、クラルテなんかもタチが悪いわよね!』


赤の少女はロイに向けて舌を出して見せた。紫の少女も加勢し、揃って嫌な顔をする。


『『きらーい!』』


青の少年は他の種族もどうだとか、だから嫌いなんだとか自論を持ち出し、更には収拾が付かずどんどんヒートアップして行く。


『おいこら、主人が働いている間お前らは何してんだ。』


そこへ金眼の彼が歩み寄り、むんずと青の少年を掴み上げた。


『何をするのです!このあんぽんたあああああん!』


『うるせえ!』


あのなあ、と小さな妖精達の主は盛大な溜息をつく。


『俺があいつを治している間、この妖精紛い者をどうにかする手筈だったろうが!』


顎でフェンを指し、未だ何の処置も施されていない彼の状態を見て頭を掻いた。


『あーーったく!

妖精対、他種族の確執なんて今はどうでも良いんだよ!この後きっちり清算してもらうからな。』


『あら、彼女の方はもう済んだの?』


我に返った赤の少女の質問に、金眼の彼は頷く。


『ああ、一通りはな。だが少し厄介な傷があって中断したんだ。』


「厄介な傷と言うのは、呪の類ですか?」


『お、竜族の婆さん、中々見る目があるじゃねえか。』


しかし、いいや、と大きく被りを振ると悪戯っ子のような表情を浮かべた。


『その様子だと、初めから俺が誰かお見通しだった訳か?

…クレア。』


すると今まで静観を決めていたクレアが朗らかに笑い出した。それは金眼の彼の質問を肯定したも同然。笑い声は心地良く、その場を丸く収めるのに充分だった。


「ええ、ええ。下手な芝居を打てばボロが出るやもと思い、口を出さずにいましたが、もうその必要も?」


『け、やっぱりバレてたか。』


叶わねえなと肩を竦めた金眼の彼は、一度周囲を見渡してニヤリと片方の口端を吊り上げた。次の瞬間には全身が真っ白な光に覆われる。


再度現れた姿は、この学園なら誰もが知る人物へと変わり果てていた。


「なっ学園長…ですか?!」

「学園長…なのかい!?」


レオとロドフは驚きを隠し切れず同時に言葉を発した。2人は通常ならばあからさまに動揺する事は無い。

一国の王子、矢面に立つ存在だからだ。精々、胸中で留める程度なのに…。


あらあら、とクレアは又しても笑い声を上げた。



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