ideal story
MHR
プロローグ 虚ろなる少年は出会う
「はぁ、なんか面白いことは無いものかね……いや、あったら今度は面倒に感じるんだろうけど……」
ディヴィドール王国の東部にある都市ルシェテ。そこに存在するとある冒険者ギルドの、その中にある酒場で、酔っ払い共がバカ騒ぎし賑わう空間で、その少年はため息混じりには呟いた。
少年は1人で肉を頬張りながら誰とはなしに愚痴を続ける。
「冒険者になったら何か変わるかもと思ったんだけどなぁ……」
そう、先程も言ったがここは冒険者ギルドの中にある酒場である。
そして、ここにいる大半は冒険者ギルドに所属している、もしくは縁があるもの達であり、この少年──ヒロ=レンヴィールも例外では無く冒険者であった。
だが、ヒロは決して冒険者としてしか生きていく手段がなかったというわけでもなければ(全く、という訳でもないが…)、別に力試しのために冒険者になったというわけでも、ましてや冒険者に憧れていたということもない。
そんなヒロが冒険者になったのは、退屈な日々に何かをもたらしてくれそうだと感じた、ただそれだけだった。
だが、冒険者になってわかったことは別に冒険者になったからといって何も満たされず、ただ命の危険が増しただけだった。
その結果、ヒロはやる気が出ず、日々をダラダラと過ごし、今のように周りが楽しそうにしていても興味が湧かず、他者からも『お前のような奴とは組みたくない』と見限られ、それを当然だと受け入れ無意味に生きていた。
昔からそうだった。基本的に何かをしたいと思っても行動に移さず、仮に行動に移してもすぐに失望して。その繰り返しで自分の中で何かを積み上げないまま生きてきた。
いや、正確には少し違う。
昔はあったのだ、大切なものが。だが、かつて大切だったものを全て失い、それ以降は何かを欲しいと思い、新しい何かを手に入れてもかつて失った大切なもの以外では満足出来ずに捨て去る。その結果、空っぽのまま生きてきたのだ。
「なにか無いものかねぇ……面白い何か………」
そう。
「退屈ではないかね、そこでため息ばかりついているアナタ!?」
この瞬間。
「ならば私と冒険をしませんか?」
この少女と出会うまでは。
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