平安絵巻~この夢咲くや~詮子編
和泉やよい
プロローグ
『源氏物語』『枕草子』といえば、日本の古典文学の双璧です。今から千年も前に、それぞれ紫式部、清少納言という女性によって記されました。作者名と作品名を知っていても、彼女たちがどんな時代に生き、どのような人生を送ったのか、知っている人は意外に少ないのではないでしょうか?
『源氏物語』の作者・紫式部は、一条天皇の后・中宮彰子の女房でした。『枕草子』の作者・清少納言もまた、一条天皇の后・中宮定子の女房でした。そう、この二人、実は同じ時代を生き、同じような身分の人だったのです。同じ「一条天皇后の女房」でありながら、二人が宮廷内で顔を合わせたことは、一度もありません。二人がそれぞれお仕えした、定子、彰子という二人の后もまた、お互いに顔を合わせたこともありませんでした。それどころか、同じ「一条天皇の后」でありながら、まったく違った人生を歩んだのです。紫式部、中宮彰子、清少納言、中宮定子。この四人の女性の、波乱に富んだ人生。それをお話する前に、まずは一条天皇の母・詮子のことから始めなければなりません。
平安の貴族社会の中で、男たちの政権争いに巻き込まれながらも、女として、母として、しなやかに生きた女性たちの物語を、どうぞお楽しみください。
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