せっかく異世界に拉致られたので自由に生きてみたいと思います。
辛味噌
第0話 前日端
西暦2275年4月某日、桜の花びらが風に舞い踊るある日の事だ。
ここ
「もう会うことはないだろうが達者でな」
そう言って偉丈夫は僕の頭を大きな手でくしゃりと撫でる。僕を撫でる偉丈夫は嘘か本当か魔法がある世界から来た異世界人なのである。
この人物とその隣に佇む銀髪の美丈夫は二年前、僕が
当家は武門の家で[高屋流剣術]の道場を開いており、二人に暇を見て鍛錬をしてやって欲しいと請い彼らはそれを快く引き受けた。彼らの世界は人同士の戦いが多く武装警察や防衛軍に太い
残念な事にどれだけ強請っても魔法を披露してくれる事はなかった。ただ所々使ったと思われる形跡のようなものはあった。
時折ふたりでふらりと数日居なくなることがあり戻ってくると海外の土産を持ってくる。
気が付けば一年以上が経過し
そして
別れの挨拶の前に僕、
特に感動の展開もなく彼らはあっさりと去っていく。この時僕は彼らと共に異世界に行こうかずっと悩んでいた。
臆病な僕は結局行動に移す事は出来ず黙って見送る事になる。
「専用化するか…………」
自分用にしてしまえば万が一に盗難にあっても大事なものは守れるのではと思ったからだ。これに異を唱えたのは親友の
「何かあった時は誰でもこの中の物を自由に取り出せないと困るだろ?」との事であった。彼は災害などの時に必要な水や非常食や
五月になると
だが結果は違った。
肉体的にチートな
将来を渇望された彼は一気に注目を浴び
武家には政府と武家の会議で決められた相手と結婚が義務づけられている。これは優秀な血統の維持という名目だ。婚前交渉は認められているがあくまでそれは同じ武家同士だからであって。武家と
いつも通り三人でつるんで遊んでいたので表面上はいつも通りであった。
六月に入った頃から
曰く、自分は選ばれたエリートなので慣例を破っても問題ない。
曰く、なぜ自分が血統だけの無能より待遇が低いのか。
日に日に高圧的になり周囲には彼に
七月になり少し早いが僕にも武家に生まれたものの義務として結婚相手が決まったと打診があった事だ。普通は
相手は同じ始まりの十家の
僕は五男なので
一族や政府が決めたレール以外を歩めないかわりに数々の特権を持つ武家の身分に嫌気を感じつつも月日は流れ
そして運命の歯車が回り始める。
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