第40話 畏怖
待合ホールで
平服だと単なる初老の小母さんにしか見えなかったけど、正装すると高貴な方に見えるから不思議だ…………とか思っていたら
「それじゃ
次の予定は買い物かと思ったら師匠がそんなことを言い出した。先日討伐成功した
道中に
だがトイレ共同、風呂なし、台所なしで部屋の大きさが六畳間未満という物件情報を聞くに他意はなかったのではないかと思い始める。仕方ないのかと一応納得する事にした。
そうこうしているうちにお役所然とした
「なんか妙に注目されているというか…………僕の気のせい?」
だが気のせいではないようだ。
偶然だが目が合うと判りやすいくらいに逸らされてしまう。
「受付に行けば判るさ」
そんな僕の反応を見て師匠がおかしそうに言うのだが————。
タイミングよく受付から呼ばれたので四人…………
何やら作業をされているがこちらからは見えない構造になっており気になって仕方がない。
「昇格処理が終わりました。ご確認ください。それと————」
そう言って差し出されたのは黒い
「おめでとうございます。第三
「「「「!?」」」」
意味が分からない…………。
「すみません。意味が分からないのですが?」
いち早く冷静に戻った
その後の受付さんの説明によると、先日僕らに絡んできた
因みに師匠の捕捉によると
その実力により生半可な
そう締めくくられた。
「
「でも他の
「畏怖だよ」
「畏怖?」
どういうこと?
「お前らの居た世界で世界を揺るがす大魔王を勇者が倒したって話があっただろう? その顛末を覚えてるか?」
師匠にそう言われたのだが、似たような
「あ、わかった! 復讐物だ」
そう答えたのは
「ん? どーいうこと?」
「ほら、世界を揺るがす大魔王を倒すほどの力を持った個人ないし
その話でピンときた。彼らの心理は僕らが第二のマルコー
僕らはここに来た直後で確かに何も知らないもんな。
「まー日々の生活の中で誤解を少しずつ解いていけばいい」
そう師匠が話を締めくくった。
「さて次は家具だな。明日は
そういって案内されたのが
「ここは冒険者向けの物は大半は手に入るし、近場の
そういえば
「この区画でも
「ここに限れば殆ど休んでいないな」
「という事は個人商店などは休日だと?」
「そうだ。ただし
取りあえずここで済みそうである。
「
見渡す限り様々な家具が置かれているのだが、中古と言っても見た目は綺麗なものばかりだし、デザイン的にはシンプルなものが多いのはやはり冒険者ならではなんだろうか?
「これにしましょう」
「いやいや、これどーやって部屋に入れるの!」
師匠に助けを求めるように振り返るもののいない! 何処いった!
「いや、待ってよ! 部屋の大きさ考えてよ。これ置いたら部屋の3割近くのスペースが占有されちゃうんだよ」
値札を見たら中古なのに
「それじゃ…………これでいいよ」
キョロキョロト見回して指差したのはマットレスが付属した木製の2段ベッドだった。
「僕ら3人で生活するんだよね? もしかして僕が寝袋?」
「そんな訳ないじゃない。私と一緒に寝る?」
恐らく冗談だと思うが妙に艶っぽく微笑む。
「
そう言ってもう一台同じくらいの品質の2段ベッドを指す。
「そうね。2台買っても
どうやら冗談であったようだ。他にも買うものはあるし安い事はいい事だ。
「そういえばこれどうしたらいいんだろう?」
ショッピングカートなんてないし、そもそも入らない。店員呼べばいいのかな?
「それでいいのか?」
振り返ると若い女性の店員さんを連れてきた師匠が何時の間にか戻ってきていた。
「はい。これでいいです」
「失礼します」と言うと何やら文字の書かれている札を2段ベッドに貼り付けた。
「まとめ買いや大きな物を買うときは店員同伴するんだ。この札は売約予定を表し会計後に配送担当が引き取りに来る」
師匠がそう説明してくれた。
「あれ? でも誰かがこの札を剥がしたら意味がないんじゃ?」
「そう思うなら剥がしてみな」
師匠に言われて剥がそうとするが全く剥がれない。
「どういう事です?」
「それは担当店員専用の
だからご心配には及びませんよと微笑む。
「ここの店員は低位の術師ばかりなんだよ————」
その師匠の言葉には続きがあり、挫折した冒険者や学院で落ちこぼれた
その後は
「欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい…………」
「それは少し稼いでからにしようよ」
そう言ってみたものの聞いていない。
カーテン、絨毯、2段ベッド2つ、3人分の毛布、3人分の食器、3人分の洗面用具、座卓、3人分のクッション、衣装箪笥、調理器具、掃除道具と決めて既に
いや、そもそもそんなにお金ないよ。師匠になんとか説得してくれと目で懇願すると————。
「仕方ないな。それと
そんな太っ腹な事を言ってくれた。
そんな訳で保冷庫と2口タイプの
会計を済ませ有料の配送サービスの手続きを済ませて店舗を出る。荷物は夕方くらいに到着するそうだ。
逆に
「俺ら男ふたりだし外食メインで済ます予定だし、基本的に
そう
一階での用事が済んだので二階へと移動する。
「ここは食料品全般が売っている。飲食店もあるが軽食がメインだ」
師匠の説明に
「ところで
「これから覚えます」
僕の質問にそんな恐ろしい回答が返ってきたのだった…………。
だがここで一筋の光が!
「わたし、家で仕込まれたから問題ない」
一応武家の末席だが平民より貧しいという何とも言えない家だったこともあり
ここでも食事当番は
考えてみればこの世界の人類の歴史はそれなりに長いし、様々な世界から
「古典ラノベお約束の異世界知識でスゲーが出来ないのがこの世界の難点だ」
逆に辺境地は未開だからスゲーする余地があるという事だ。
それにしても
由来は忙しすぎる役人やら
お腹も膨れたので三階へと移動する。
ここは衣類を取り扱う
男性物はデザインも
問題は————。
「
かれこれ
売り場の8割が女性用なのだが、とにかく種類が多い。なんでもこの世界に降り立った
師匠に窘められてなんとか
「ちょっと話がある」
師匠にそう言われて
公園に到着すると師匠はどこか手ごろな場所を探しているのか園内を暫く会話もなく歩くことになる。
「ここにしよう」
そう言って座り込んだのは周囲にあまり人がいない
「まずはこれを」
そういって師匠が差し出してきたのは小袋だ。僕、
中を確認してみると金貨が数十枚入っていた。
「
数えてみると
これで
「明日からは皆の買取するとして先生に送り返してもらうまでどこに預けておくの?」
そうなのだ。
ここは
「
最終日に全員元の世界に送り返してくれるそうだ。
「あと————」
荷物の受け取りもあるし
師匠が
「それは…………もしかして
見覚えがあると思ったその
わざわざ持ち出してきたという事は何かあるのだろうか?
「犯罪者の所持品は討伐した者たちが自由にしてよいという
わざわざ取り出したという事は特別性なのだろうか?
「これは
どうしたものか…………。
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