そらいろこころ
なづ
第一章 旭ちゃんのはなし
#1-1
一
「うーんやっぱり、こころには騎士がいるなあ」
「旭ちゃん……」
振り向いた私のぐしゃぐしゃの顔を見て、旭ちゃんはへらりと笑う。その笑みが呆れだとか、嫌味だとか、そういう私の嫌いな感情が全くないもので、私はいつもほっとしてしまうのだ。
「言い寄ってくるようなのじゃなくて……もっとましなやつがいるはずなんだよね」
「そうかな……今日ね、みんなにまたオヒメサマって言われたの。なんにもできないくせにかわいいだけの、あんたはオヒメサマだって……」
「――こころはね、かわいいだけじゃないよ。そんなこと言うやつらよりずっとずっと優しいから、かわいく見えるんだよ」
誰が言ったんだ、とか、そんなことないよって言うだけだとか、そういうのじゃないんだ。旭ちゃんは、いつもそうやって優しく私を守ってくれる。ねえ、旭ちゃん。
旭ちゃんは、ずっと私には騎士がいるっていうけど、……私にとってはね……、ずっと……
「……私は、旭ちゃんだけでいいの」
「それじゃあだめなんだよ、こころ」
にっこり、笑ってる旭ちゃんの顔に、厳しい影が落ちる。この話はきらい。あなたがこの話のときだけ、そうやって、とてもこわい顔をするから。
それでも、私は言うよ。何度でも、「あなたが私の騎士でいてよ」って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます