そらいろこころ

なづ

第一章 旭ちゃんのはなし

#1-1

「うーんやっぱり、こころには騎士がいるなあ」

「旭ちゃん……」

 振り向いた私のぐしゃぐしゃの顔を見て、旭ちゃんはへらりと笑う。その笑みが呆れだとか、嫌味だとか、そういう私の嫌いな感情が全くないもので、私はいつもほっとしてしまうのだ。

「言い寄ってくるようなのじゃなくて……もっとましなやつがいるはずなんだよね」

「そうかな……今日ね、みんなにまたオヒメサマって言われたの。なんにもできないくせにかわいいだけの、あんたはオヒメサマだって……」

「――こころはね、かわいいだけじゃないよ。そんなこと言うやつらよりずっとずっと優しいから、かわいく見えるんだよ」

 誰が言ったんだ、とか、そんなことないよって言うだけだとか、そういうのじゃないんだ。旭ちゃんは、いつもそうやって優しく私を守ってくれる。ねえ、旭ちゃん。

 旭ちゃんは、ずっと私には騎士がいるっていうけど、……私にとってはね……、ずっと……

「……私は、旭ちゃんだけでいいの」

「それじゃあだめなんだよ、こころ」

 にっこり、笑ってる旭ちゃんの顔に、厳しい影が落ちる。この話はきらい。あなたがこの話のときだけ、そうやって、とてもこわい顔をするから。

 それでも、私は言うよ。何度でも、「あなたが私の騎士でいてよ」って。

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