25.シャブと権藤


権藤は、関西を拠点とするヤクザの若頭補佐で、無口で孤独な男だ。ある日、敵対する組織「荒木組」の組長が病で倒れたという情報を掴む。荒木組は勢力が弱まりつつあり、権藤が所属する「白洲会」にとって絶好の攻撃チャンスだった。しかし、権藤は荒木組を見張るうちに、組長が末期癌で苦しみながらも家族に迷惑をかけまいと一人で耐えている姿を目撃する。


敵対組織であっても、人としての同情心が湧いた権藤は、組長の苦痛を和らげるため、秘密裏に少量のシャブを届け始めた。もちろん、シャブは権藤自身の組の規律に反するものだ。自らの立場を危険にさらしつつ、紙袋にシャブを忍ばせては、組長自宅の裏口にそっと置いていく日々が続く。


やがて荒木組は、何者かがシャブを届けていることを知るが、誰がやっているのかまでは分からない。不審に思った荒木組は、狙撃手を放ち、白洲会の監視を始める。権藤もそれに気づき、ますます緊張感が高まる中でシャブを届ける行為を続ける。


ある夜、荒木組の鉄砲玉が白洲会に殴り込んでくるが、返り討ちに遭う。その場に偶然居合わせた権藤は、自分の行為が発覚するのではないかと不安を抱えながらも、手下と荒木組への御礼参りに向かう。


荒木組へ着くと若い衆に取り囲まれて乱闘になってしまう。そのとき、権藤の手下が所持を禁じていたはずのチャカをはじいた。はずみとはいえ、荒木組の組員を射殺してしまう。

そのとき、たまたま荒木組を訪れていた組長が銃を手にし、手下にチャカを向ける。

手下を庇って撃たれる権藤。

組長が権藤の懐を探ると、そこからシャブの入った紙袋が出てきた。


「権藤……おまえだったのか。毎日、シャブを届けてくれていたのは」


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