第3話:学ぶ
なんだか懐かしい、昔よく見た夢を見ていた。ずっと兄弟が欲しかった。ひとりっこで両親からの少し重すぎる愛をうけて両親の母校に進学した。大学に不満もないし、行きたいとこもなかったし、親元から離れられる。それは少し安心した。でも…たまに考えてしまうのは、兄弟がいたら違ったのかなということ。優しいお姉ちゃんが欲しかった。かっこいいお兄ちゃんが欲しかった。いたずらっ子な弟が欲しかった。あざといけど可愛い妹が欲しかった。
「うたさん」
「ん?」あれ、男の子?あぁ…昨日から預かっているのか。と詩はうっすら目を開ける。
「どうした?」
「目覚まし鳴ってる」
「あ、ごめん、起こしたか。」目覚ましを止めてシャワーを浴びる。こうにも浴びさせて着替えさせる。さて、さすがに家に置いてけないしな…大学連れてくしかないかと大学までは歩いて行ける距離だがこうを連れて歩いているといつもより遠く感じた。
「こう、ここで待ってて。」学食では朝に格安定食が提供されている。
「あれ?うーたん!」
「先輩!!」
「珍しいじゃん!朝ごはん食べないことで有名なうーたんが学食来てるなんて」
「自分は食べないんですけどね…」
「ん?…って、どーしたのこの子?」
「事情があって預かってます。」
「なるほどね、おごるよ」
「いいんですか!?ありがとうございます!こう、お礼は?」
「ありがとう」
「ありがとうございます。でしょ。」すかさずつっこむ。すると不満そうな顔をしてこうはだまりこんだ。朝食後こうを教室に連れていく。朝からゼミ形式の授業だ。
「うーたん、いつの間に子供できたの!?」
「息子じゃねぇーよ」
「じゃあ弟?」
「ちげぇーよ、事情あってな。」
「こう、ちょっと一緒に来て。」と教授のところに事情を説明しに行く。
「おい、横山。お前子供連れか。いつ生んだんだよ。」
「先生、事情があるんです。それにブラックジョークも面白くもないです。」さすがに預かっている、家に置いておけないという説明するとしばらく悩んだ素振りのまま何か考えていた。
「…なるほどな。名前は何て言うんだい?」また押し黙るこうにすかさず詩は
「ちゃんと言いなよ」と投げかける。
「…こう。」
「こう君ね。」
何かパソコンで検索をしてプリントアウトした物を渡してくれる。
「これは?」
「小一の漢字ドリルだな。授業中さすがに聞くだけじゃ暇だろ?」
「先生!ありがとうございます!」こうは90分もする授業中一度も席を立たずきちんといい子にして漢字ドリルをしていた。授業でいろいろなところ連れていくと囲まれるこうだが私と話す時以上に口数は少なく、まるで警戒をしているようだった。詩は一応教育学部の学生だったが、教職は取っていない。それでもさすがに小一の勉強くらいは見れる。だから漢字ドリルの答え合わせをしたが
「全問正解じゃん!すげぇじゃん!」こうの答えは完璧で学校に行っていたのか、それともそういう学べる環境にいたということが分かった。
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