アローン・シャドウ

冷たい部屋に 意味を見つけようとした

文字を並べて くだらない時間を

こぼれた水を ただ眺めているだけ

指が震えて 泣きそうになる


イヤホン越しの お気に入りの音楽

君の隣で ぬくもりの時間の中

半分残った 缶コーヒーを揺らす

わかっていたんだ 偽物だってことを


足元ばかり見てる君の 

本当の願いを知りたい

残響音さえ聞こえない

君との距離が開いていく


信じてきたことが馬鹿だったって

思わせないでおくれよ

いつまでも横にいていいんだって

言ってくれよ

走って走って走ってみても

君が見えない

どうして……影さえも


夜の坂道 そびえる電信柱

頭をつけて 叫ぶのを我慢する

背中をなぞる 優しすぎる感覚

足が震えて 倒れそうになる


声を思い出そうとしても

泣き叫ぶ姿だけ浮かぶ

生きていく道が無いならば

首に縄をかけてくれよ


ずっと

反対側を歩いてるんだって

思わせないでおくれよ

もう出会うことはないんだって

言わないでくれよ

叫んで叫んで叫んでみても

君に聞こえない

どうして……音さえも


ずっと多くを望んで 手に入れてきたものたち

両手で抱え込んで こぼれ落ちないように

そんなことはできない 残ったものは無くて


同じ音楽を奏でられるんだって

必死になっていたんだよ

不協和音が鳴り始めたんだって

わかっているんだよ

手を

伸ばして伸ばして伸ばしてみても

君に届かない

どうして…… 


信じてきたことが馬鹿だったって

思わせないでおくれよ

いつまでも横にいていいんだって

言ってくれよ

走って走って走ってみても

君が見えない

どうして……影さえも

独りの影さえも


――――――


今回は「君」という存在を出してみました。

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