魔女さまは錬金術師

珈琲だばぁ

序章:Continue?

 病気で身動きが取れない人間でも、ゲームで遊べる。

 

 実に良い時代になったと思う。


 悪い結果しか出ない検査も、痛いだけの注射も、代わり映えのしない天井もない世界。

 

 VRMMORPG、『ムゲンノソラ』。

 

 VRギアさえつければ、脳波によってプレイできるこのゲームに私は夢中になった。

 

 1日中寝たきりの私は、廃人レベルでゲームにログインし続けた。

 

 試せることを全て試し、作りたいものをひたすら作り、新しい発見を求め続け…。


魔女医者ウィッチ・ドクター」だの、「魔導人形使いゴーレムマスター」だの、「天才錬金術ジーニアス・アルケミスト」だのと様々な称号を手に入れた末、遂には前人未到の「大英雄グレート・ヒーロー」の称号を獲得する程になっていた。


 まさに順風満帆、ゲーム内でのワタシは何一つ不自由がなかった。


 

 だけど、現実の私はそうはいかなかった。

 

 日に日に病状が悪化し、とうとうゲームも難しい状態になってしまった。

 

 なので、まだ大丈夫な内に引退することにした。

 

 最後にログインした時には、本当に多くの人がワタシに会いに来てくれた。


「引退しないで」「いつでも戻ってきて」と、何度も何度も言われた。

 

 ワタシも「病気が治ったら、必ず戻ってくる」と答え、アカウントは残しておいた。

 


 でも、結局それは叶わなかった。

 

 病状が回復することはなく、私に最期の時が訪れた。

 

 視界がぼやけ、音が遠くなり、体の感覚が消えていき…。

 

 私、「樹下きのした 朱美あけみ」は死んだ。





 そして。

 

 ワタシ、「ヴェルメリア・ダイング」の冒険が再開されたのだった。

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