第1章 此処は何処かで私はワタシ
1-1:此処は何処かで私はワタシ
「ん…んぅ?」
眩しさを感じて、私は目を覚ました。
何故か、久々に熟睡したような気がする。呼吸器と点滴に繋がれてなければ、気持ちよく体を伸ばすとこr…
「って、あれ?」
そこで気が付く。鼻と口を覆っているはずの呼吸器も、四六時中刺さってる点滴もなくなっていた。
それどころか、私はベッドにすら寝ていない。
「………森?」
そう、森に居た。病室ではなく、どう見ても森だった。
ゲームなら薬草や良質な土が採取出来たり、小動物系や植物系のモンスターが出てきそうな、完っ全な森だった。
「…ひょっとして私、寝落ちした?」
あり得る、凄くあり得る。頭にVRギアを被るだけでいい『ムゲンノソラ』では、寝落ちするプレイヤーは珍しくなかった。
ベッドに寝たままでプレイしてる私も、何度か経験がある。
久々にやってしまったな、これは。
「あー、やっちゃったなーコレ。寝落ちとか久々だわ」
照れ隠しにそんなことを言いながら、直前の状況を思い出そうとする。
直前。そう、寝落ちする直前に私は…。
「…アレ?」
ちょっと待て、寝落ち?いや、それはない。
だって私は―
「私、死んだはず、よね?」
そうだ、死んだはずだ。
ゲーム的にではなく、現実で。
あの全身の感覚がなくなっていく感触は、決して夢なんかじゃない。
それだけは、絶対の自信があった。
だからこそ、私は考える。
これはどういう状況だ?
「ここがあの世、って訳ではなさそうよねぇ…」
周囲はどう見てもただの森だ。少なくとも、ゲームで馴染みの天界や地獄のような場所ではない。
「それに、この格好は…」
支援バフをこれでもかと付与した、
様々な希少金属から作った
苦労して改造した、容量無限のウエストポーチ。
そして何より、服やアクセに刻まれてた蛇と歯車の
「完全に、ゲームの装備よねコレ…」
そう、ゲームの時のワタシ『ヴェルメリア・ダイング』の姿だった。
死んだはずの私、辺り一面の森、ゲームの装備を着た自分…。
これはいわゆる、「転生」という奴だろうか?
異世界転生。
私もゲームの合間にネットで読んだことがある。
スライムになったり魔王になったり幼女になったりして、冒険したり無双したり戦争したりするアレだ。
ゲームの世界に転生する、というのも確かにあった。
読んでて面白かったし、こんな風に死ねたらいいなーとちょっとだけ思ったりもした、が。
「マジで転生しちゃったぁ!?」
自分の考えがあまりにぶっ飛んでいたので、思わず叫んでしまう。
しかし鮮明に残る”死”の感触が、否定することを許さない。
私が病で死んだことは、間違いない。なら、今ここにいる私は誰だ?
確かめる方法には心当たりがある。
ゲームで散々慣れ親しんだ、あの方法。
(…ステータスチェック!)
そう念じた瞬間、目の前に見慣れたA5サイズのスクリーン…ステータスボードが出現する。
名前:ヴェルメリア・ダイング 性別:女 Lv:283
HP:17600 MP:8600 状態:正常
称号:
・
・
・
・先駆者・叡智の開拓者・限界を超えし者・深淵を踏破せし者
装備品
頭:なし
体:
背:
腕:
足:
装飾:賢者の指輪・神威の指輪・熟練者のポーチ(極改)・
そこに記されていた情報は、概ね私の想像通りだった。
引退前最後のログイン時そのままのステータスと装備なのは良いとして、気になるのは称号だ。
詳細を確認してみると
・
人々に語り継がれる程の功績を残したものを称える称号。
レベル上限を400まで開放し、以下のスキルを獲得します。
・『
・『
「…何?このデタラメな説明?」
まずレベル上限400って何よ?運営が最高レベルとして設定していたのは300までであり、それを開放する称号こそ
そして追加されたスキル。
『
これは最上位スキルを最大レベルまで上げた状態で、特定の条件を満たすことでのみ到達できる。
この条件、私もレベルEXのスキルを持っているから分かるのだが、本気でそのスキルを極めるようなプレイをしなければ満たせない代物であり、私の引退までに獲得できたプレイヤーは10人に満たなかったはずだ。
間違っても称号と一緒にポンと貰えていいものではない。
今はOFFの状態に設定されているようなので、そのままにしておく。
若干脱線したが、こんな感じで他にも色々チェックした結果、色々と分かった事がある。
分かった事その1、五感が機能していること。
ムゲンノソラはあくまでもVRゲームであり、触覚や嗅覚、味覚の再現はされていなかった。
だが今は、適当な花を摘めば感触があるし、匂いも分かる。アイテム確認も兼ねて取り出した携帯食料も、囓ったらテキスト通り塩辛かった。この事から、今ワタシがいるこの場所が現実であることは間違いない。
その2、ゲームの機能が一部を除き使えること。
使えない機能は、ゲーム設定や運営へのダイレクトコール等のゲームそのものに関連したもので、習得スキルのON/OFFや装備変更、アイテム整理等は問題なく出来た。
魔法、錬金術も問題なく発動したので、最低限身を守ることは出来そうだ。
その3、ここは見知らぬ何処かだということ。
確認の為に使った魔法『
つまり、ワタシはゲームで出来た事をほぼそのまま使える状態で、見知らぬ現実の森に放り出されたと判断できる。
そんな事態に納得のいく理由をつけるとすれば…。
「………コレ、やっぱり転生したっぽい?」
結局、転生の二文字しか思い浮かばないワタシなのでした。
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