第65話
凪先輩が倒れた。
一瞬のことで何がなんだかわからなかったけど、どうやら急に意識を失ってしまったらしい。
永瀬くんが身を挺さなければ頭を打ってた可能性もあったから、本当にあの時永瀬くんが近くにいてくれて良かった。
パニックになってしまった私たちを灯湖先輩が一喝してくれて、何とか最低限の落ち着きを取り戻すことができた。
そのまま灯湖先輩の指示で川畑先生を呼んで、一緒に来てくれた保健の先生が凪先輩を診てくれた。
すぐ病院に連れていくことになって、保健の先生が持ってきた担架を川畑先生と永瀬くんが持って外へ運び出して行く。
川畑先生によって部活動は中止、速やかに下校するようにという指示が下された。
予想外の事件に私たちの動揺は治まらずに、先生たちがいなくなってからもどうしていいかわからず立ち尽くしてしまった。
そんな私たちを、灯湖先輩が落ち着いた様子で下校するように促した。
こんな異常事態なのに、ここまで冷静に判断を下せる灯湖先輩は心強くて、かっこ良くて、大人だった。
着替えている間、皆口数も少なくなってしまって、部室は暗い雰囲気に包まれる。
でも皆思いは同じだろうと思う。凪先輩は大丈夫なんだろうか。
灯湖先輩が「川畑先生とは自分が連絡をとって皆に伝達するから」と言ってくれて、とりあえず解散になった。
ウリちゃんとミマちゃんと三人で少しだけ残って話をした。
「心配だね」とか「熱中症なのかな?」とか話をした気がするけど、私も含めて皆心ここにあらずって感じだった。
誰からともなくもう帰ろうっていう雰囲気になって、駅の方へ向かう二人の背中を見送った後も、私は学校を離れる気にはなれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます