18 オッサン、憤怒
オッサンと悲しみに暮れていると、二階から物音がした。
すると階段をドタドタとお降りて来る足音がしたので、俺はジャケットのポケットに入れた銃に手を添える。
リビングの扉を開き現れたのは、明らかにカタギではない人相の男だった。
「何だよ男だけじゃねーかよ」
人相の悪い男がおう言うと、後ろから更に二人の男が現れた。
全員ドスと言われる刃物を持っていた。
「お前らかあ!お前らがやったのかあ!」
「ああ。良い声で泣いてくれたぜ?とうちゃん、とうちゃんってな」
オッサンの問いにゲラゲラと笑いながら答えるクズども。
「ぶっ殺す!」
オッサンが前にいる男に飛びかかるがドスで腕を刺されてしまう。
「ううっ」
「ギャハハ。お前もすぐにあいつらの所へ送ってやるよ」
「死ね」
聞こえた銃声は三発。
後ろの二人は頭を撃ち抜き即死。
前にいた男は腹を撃ってすぐには殺さない。
止めはオッサンがするべきだろう。
「ちょっと待て!お前何でチャカなんて持ってやがる!」
「ああ?お前に語る言葉はねーよ」
俺はオッサンに銃を渡す。
「撃てるか?」
「ああ。問題ない」
オッサンは銃を男に狙いを定め構える。
「待ってくれ!俺が悪かった!許してくれ!なあ」
「ゴミめ!」
銃声が鳴り男が事切れる。
銃を俺に返し、オッサンは家族の遺体の方へ行きうずくまる。
「すまない。一人にしてくれ」
「わかった」
俺はリビングを出て、念のため二階を調べ誰もいないのを確認し、皆がいる車へと戻る。
「おい。銃声が聞こえたが何があった?」
「家族は殺されていた」
「そんな!」
悠木が聞いて来たので答えると早見さんが絶句した。
他の皆も言葉を失っている。
「オッサンは?」
「一人にしてほしいって」
「そうか」
唯一話せた悠木と話すが、それから言葉はなく沈黙が車内を覆う。
本当は今日はオッサンの家を借りて、寝させてもらおうと思ったが状況が状況だ。
トラクターに俺と睡眠が必要ないという大橋が乗り、交代で見張りをする事にし、他は車でスペースを作り窮屈だが寝てもらう事にした。
ようやく長い長い一日が終わり眠りにつく事ができた。
次の日、朝日で目が覚めるとオッサンが玄関に立っていた。
昨日あれだけの事があったのだから、まだ元気がなさそうだ。
あの様子だと付いて来るのは無理そうだなと、キャンピングカーは諦めて最初の予定通りカーショップに行くかと考えていると、オッサンが話しかけて来た。
「よお!今日は何時に出発するんだ?」
「付いて来るのか?」
「当たり前だろ?俺はもう自由だからな」
無理しているのがバレバレだ。
「まずは朝食を食ってからだな。キャンピングカーのキッチンを借りて良いか?」
「ああ。今カギを開ける」
オッサンがキャンピングカーへ向かう間に皆を起こし、早見さんに調理をお願いする。
「元気そうですね」
「空元気だろうけどな」
早見さんと話し、次に沢城さんに話しかける。
「オッサン、腕を刺されてるんだ。診てくれないか?」
「何でもっと早く言わないの!」
オッサンは自分でしたのか、腕に包帯を巻いているが血が滲んでいる。
沢城さんが医療道具が入った鞄を持ちオッサンの下へ駆けつける。
オッサン、鼻の下延びてるぞ?
昨日の今日でとは思うが、男ならあの胸部装甲の前には無防備だ。
悠木に睨まれた。
ここの女性陣は俺の心を読み過ぎじゃね?
それから皆で朝食を食べこれからの話しをすら。
皆はもう札幌には用事がないので、遂に札幌脱出が決定された。
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