17 オッサン、悲痛

次の目的地へ向かうため、それぞれ車に乗り込む。


「ギャアー!」


トラックの助手席に乗ろうとした佐倉さんより悲鳴があがる。


「だだ、だだ」

「だだ?」

「誰かいるッスー!」


俺も運転席側から見てみると、座席の下に毛布があり明らかに不自然な盛り上がりがある。

思い切って毛布をとりあげると異臭が。

ゾンビかと身構えるが、そこにいたのは50歳ぐらいのくたびれたオッサンだった。

異臭はそのオッサンの靴下からだったらしい。

(某国民的子供のとうちゃんですか?)

俺はオッサンに銃を向ける。


「待て、待て!俺はこのトラックの運転手だ!」

「何故隠れている?」

「周りがゾンビだらけになって、いきなりドンパチが始まったら隠れるだろ!」


それもそうか。

まあ見た限り害はなさそうだから大丈夫か。

俺はオッサンから銃を外す。


「これからどうする気だ?」

「できれば俺も一緒に連れて行ってくれ。嫁と子供が心配なんだ」

「家族はどこに?」

「白石区だ」


そんなに遠くないか。


「近くにキャンピングカーの店はあるか?」

「確か行く途中にあったはずだ。てか俺が持っている」


これは好都合だ。

奥さんと子供はまだ生きてるか怪しいが、行ってみるのが良さそうだ。


「よし。案内してくれるか?」

「おう、任せろ!」


出発する前に、皆にオッサンを紹介する。


「オッサンだ」

「違うわ!ちゃんと 藤原 啓 って名前があるわ!」

「じゃあ藤原のオッサンだ」

「もういい」


そうしてトラックをオッサンに任せ、俺と佐倉さんはアルファードへと乗り換える。

佐倉さんは、


「足が臭いからやだッス」


と言ってアルファードに乗った。

ドンマイ、オッサン。

さて出発と思ったら、内田さんがアルファードに乗りたいと言い出したので、俺がトラクターを運転する事にする。

なので、トラクターに俺と大橋、アルファードに早見さんと沢城さんと佐倉さんと内田さん、トラックにはオッサン一人だがちょっと寂しそうだった。

ドンマイ、オッサン。

俺は男が増えて嬉しいぞ。

後から年齢を聞いたら40歳と結構若かった。

俺?そういえば言ってなかったが30歳だ。


トラックを先頭にスロープを上がり、途中スロープを塞いでいた車をトラクターで避けて外に出ると、空が夕暮れに染まっていた。

夜は何があるかわからないから、早めにオッサンの家に行きたいな。

途中道が塞がれていたので、トラクターで車を横に避けながら進むこと一時間。

ようやくオッサンの家に着く事ができた。

オッサンの家はそこそこ広く、塀もあったので門の前をトラックで塞ぎ、アルファードとトラクターは庭に止めさせてもらった。


「ただいまー、今帰ったぞ」


と不用意にオッサンが家の中に入ろうとしたので慌てて止める。

これは家族がゾンビになって襲って来るのがパターンだ。

ゾンビに襲われない俺が前に出て、オッサンは後ろから付いて来させる。

女性陣は車で待機して大橋に守ってもらう。

そしてリビングに入って俺達が見たものは・・・


惨殺死体だった。


そこには首から血を流し死んでいる30代の女性と、腹から血を流し死んでいる5歳くらいの男の子がいた。


「うおー!誰だ!誰がこんな酷いことを!」


これには俺も憤りを感じる。

女性陣を置いてきて正解だった。

切り傷を見るに人間の仕業だろう。


「殺す!絶対殺す!」


オッサンが泣きながら叫ぶ。

俺も同意見だ。

やはり人間の敵は人間のようだ。

クズに相応しい鉄槌を喰らわしてやろう。

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