6 獣医さん

ゾンビがいなくなったのを確認し、扉を開けようとするが鍵がかかっていた。

ノックをするが応答はない。


「すいませーん。誰かいますかー」


返事はないが少し物音がした。


「ゾンビはいなくなったので大丈夫ですよ」


再度声をかけると、


「本当ですか?」


中から女性の声がしたので、


「本当です。防犯ブザーで外に誘き出しました」

「さっきの音はそれだったんですね」


そう言うとカチャッと鍵が開く音がして隙間からこちらを覗いている。

ゾンビがいないのがわかったようで扉を開けてくれた。

そこにはスーツを着て、腰まである黒髪のストレートに眼鏡をかけた、見るからにザ・女教師というような女性が立っていた。

(劣等生なお兄さんがいそうだな)

またゾンビが来るかもしれないので中に入れてもらう。


「ありがとうございました」


黒髪の女性が丁寧にお辞儀をしてお礼を言ってくる。


「よくご無事でしたね。お一人ですか?」

「はい。今日は休みでこの研究室で仕事をしていたのですが、気付いたら外から悲鳴が聞こえてきて、暫くすると扉をバンバンと叩く音がしたので、ずっと閉じこもっていたんです。」

「大変でしたね。あっ、俺は 福山 瞬 って言います」

「私は 早見 織 です。獣医をしています」


幸先が良いとはこの事だな。


「今後どうするか決めています?」

「いえ。まだ今は何も考えられないです。親は亡くなってもういないので、生徒が心配ですね」

「それじゃとりあえず俺達と一緒に来ませんか?」

「良いのですか?」

「はい。一応札幌から脱出する気ですが、その間に生徒さんが見つかるかもしれないですしね」

「脱出ですか。ではお願いしても良いですか?」

「了解です。それではまずここから脱出しましょうか」


と言って俺は扉に近付き外の気配を探る。

物音も聞こえなかったので外の様子を伺うが、周りには何もいないみたいなので扉を開けて廊下に出る。

建物内は静まり返っているので、ゾンビはまだ外だろう。

悠木に無線を飛ばす。


「悠木。外の様子はどうだ?」

「建物の周りも車の周りもゾンビだらけだったけど、ドローンに防犯ブザー付けて誘導してやったぜ」

「ナイスだ。今から生存者一名連れて戻るからドアを開ける準備をしておいてくれ」

「りょーかい」


早見さんに状況を伝え俺達は建物の入口に向かう。

外に何体かゾンビが残っていたが一睨みすると逃げて行った。

早見さんは何か聞きたそうにしていたが、それは車に戻って安全を確保してからだ。

窓をノックし悠木にドアを開けてもらい早見さんを後部座席に乗せ、俺は運転席に座り一息つく。


「疲れたー」

「お疲れ」


悠木がペットボトルのお茶を渡してくれたのでありがたく頂戴する。

早見さんにも飲み物と食べ物を渡してもらう。

一日何も食べていなかったそうなので泣きながらお礼を言っていた。

その間に二人に自己紹介をさせ、次の予定を話し合う。


「さて、次はどこに向かうか」

「瞬がいない間にドローンで見て回っていたんだが病院の方にも生存者がいそうだな」

「本当か?」

「ああ。屋上に何人か映っていたから間違いない。一人は白衣だったがエロい格好だったな」

「もしかしたら知り合いの先生かもしれません。そんな格好なのは一人しかいないので」


早見さんの知り合いか。

医者も必要だし行くしかないな。

決してエロい格好に興味があるわけじゃないよ?

そんなこんなで俺達は病院へ向かう事にした。

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