第3話 イケメンオンパレード

「おや、今度は何を拾ってきたのですか?」

  泣く子も黙り、死人も生き返ると言われる絶世の微笑を浮かべた側近、劉莉己りゅうりきに迎えられ 桜雅は一瞬怯んだ。が、何とか平常心を保ちつつ答えた。


「孫団と出くわした」

桜雅にくっ付いている子供に 興味津々に近づいて来ていた宗泉李そうせんりが嫌そうな顔をした。

「人数は?」

「13 。俺を誰だか解っていた」

「はぁ~。だから、ウロウロするなと言ったんだ」

「すまない」

「おーい !桃弥とうや直ぐに出発するぞー。若様が孫団の奴らとデートしたってよ」

 

小川で馬を休めていた秦桃弥しんとうやが、素早く馬を連れて戻ってきた。そして驚きを隠そうともせず、桜雅の背後にくっ付いている少年を凝視した。

 

 3人の視線に耐えられず、桜雅は覚悟を決めて口を開いた。

「孫団とやりあっていた時に加勢してくれた」

「何故連れてきた」

「……後で話す。とにかくここを離れた方が良い」

「はいはい、じゃあその件については後でゆっくり伺う事にしましょう」


  莉己の言葉に他の二人も追求を諦め、馬に飛び乗った。

「残党に見つかる前に移動する」

 桜雅がそう言いながら馬に乗ろうとしたが、袖を掴まれているのを思い出した。朱璃を見ると不安げな表情だ。置いて行かれるのを恐れているのだろう。


「馬に乗れるか」

 桜雅が馬に乗れと言っているのが分かった朱璃はホッとして、せめて足手まといにならないように急いで馬によじ登った。

 

  すぐに桜雅が後ろに乗り、気付くと彼の腕に挟まれた形になっていた。

  馬が走り出し、期待を裏切らず見た事のない風景が視界に飛び込んでくる。

 いったい全体、此処は何処? 何が起こっているの?

  いくら考えても、まわりを見渡しても、手がかりになりそうなものは何一つ無かった。


  桜雅の仲間だと思われる3人も、見たことがない衣服を身に付けている。髪の色も瞳の色も違っていた。髪型も長髪だったり、短髪だったり、結っていたりいなかったりと様々である。

そして何よりも、整った容姿をしているのだ。朱璃は面食いではないが思わず目を逸らしてしまう程の芸能人顔負けのイケメンオンパレードだ。


  以上のことより、ここは日本ではなく、自分の知らない地球上の国でもない、黄泉の世界でもない。

 それだけはわかった。

ここは異国だと言う線が濃厚。

 

  そこまで考えて、朱璃は考えることをやめた。というより諦めた。

「成る様に成る」

 呟いてみると少し気持ちが浮上した。

 すると、急に睡魔が襲ってき、今更夢オチ?など思う。

神様どうか、今度目覚めたらイケメンの腕の中より 布団の中でありますように。



「お、おいっ。しゅり?」

 突然ぐらりと前に倒れてた朱璃を桜雅が慌てて支えた。

「しゅり、しゅりっ」

  名を呼んでも無反応。揺すっても無反応。

 先を行っていた泉李と桃弥がその様子に気づいた。


 泉李が並走し、朱璃の脈を取った。

「大丈夫だ。生きている」

 その真面目な顔に眉をひそめ桜雅言った。

「分かっている。眠っているだけか? 怪我はないだろうか」


 心配そうな桜雅の反応も、連れて来た子供も興味深く泉李は微笑んだ。

「爆睡だな。お前に抱かれて眠るとはいい根性してるよ」

「ふふふっ、余程疲れていたんでしょうね」

「それで、その子は何者なんだよー」

 面白がる様な3人の視線に、桜雅は小さくため息をついて、朱璃との出会いと連れてくる経緯を説明し始めるのであった。

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