流れる浮きがぽちゃりと沈む夕暮れ【From:ヒラメキン】

 いやー、商店街に顔を出すたび知り合いが増える増える!

 不遇のひとりぼっちだった時代を乗り越え、いざ人脈バブル突入!


 ハマちゃんの紹介にあずかって、先週は和菓子屋の谷さん、昨日は酒屋の吾妻さんと挨拶をした。吾妻さんは握手を交わした手をそのまま引っ張って、あたしを釣りに連れて行ってくれた。

 へいへい、それが昭和の男のやり口かい?

 ふう~!しびれるねえ~!

 自分の手のなかでひとり会話した。


 ねえ店番は?と聞くと、ツネキチがやる、と言った。聞くと、ツネキチは店先にちょこんといじらしくお座りした、あの可愛らしい柴犬のことだった。

 こいつぁダメなオトナぜよと思ったり、思わなくなかったり。


 サカナについてのどうもお得意らしいジョークを聞かされたりしながら、がたごと軽トラに揺られて川をのぼり釣り場へ行った。

 お酒は嫌いだから飲まないと彼は言った。酒屋なのにね、と言うと、酒屋なのになあ、と他人事みたいに言うからおもしろいかった。

 酒に限らず、うちんなかじゅう嫌いなもんばっかだ。

 ふーん。

 あたしは鮭とばをかじりながら、ぼんやりと浮きの様子を眺めた。いやはや長閑であった。

 昼が過ぎ、空が茜に染まるころ、あたしたちは釣りをおしまいにした。彼とはすっかり仲良くなった。この町がますます好きになる。鯉ちゃんもくらげちゃんも亀さんも好き。仕事もいい感じ。なんの不満があるというのか。あるわけないよね。普通はさ。

 でもね、あたしは手の付けようがないほどの飽き性なものだから、二年も経てばなにもかもに嫌気がさして、だからこそ二年という歳月はあっという間に過ぎていくんだだろうなーと思う。それは、わからないけれど、ほとんど本能的なものに近いのだと思う。渡り鳥みたいな。浮雲みたいな。

 ……そりゃちょっとかっこつけすぎか。


 みなさーん。来週からまたぐっと寒くなるとのことですよー。

 あ、桃鉄やりたくなってきた。


 HiRame

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