勇者さまのパーティーをさがしてます!-給料アップのために魔王討伐しませんか?-
ばくぶしゅ
第1話
「ゆ、勇者様の降臨じゃぁぁぁぁーーーー!!」
就職先、間違えたなぁ……。
なんで朝のニュース番組でジャンケンをするような時間から、くそじ……お爺さんの叫び声を聞かないといけないのかなぁ……。
「つ、ついに--我々にも、勇者様が降臨なさる時がきたのじゃあ!!」
給料いいからって、入るギルド間違えたなぁ……。
画面の中のシュウ様とイチャイチャして、せっかくシュウ様成分蓄えたのに。
こんなくそじじ……ハゲ頭を毎日拝んでも、ご利益無いどころか、SAN値が下がる一方です。
みんなは就職活動をする時、給料や福利厚生だけじゃなくて、一緒に働く人もしっかりと観察するんだよ???
レモーネお姉さんとのお約束、です!
「やったぞーーっぐ!?? げふっ! げふっ! ぐふっ……ぐ、ぐるじい……」
あ、オーレさん……くそじじいが、むせてますね。
もういい年齢だっていうのに、年甲斐なくはしゃぐがらこうなるんです。アホですね。
「れ、レモーネくん……み、みずを……ぐふっ!」
そういえば、自己紹介がまだでしたね!
私はレモーネ。バリバリの腐女子です。めっちゃ腐ってます。
最愛の人はシュウ様! 俺プリの主人公で、私(だけ)の爽やか系最強王子様なのです!
……え?
私の容姿ですか??
カーディナルドラゴンとイソイソギンチャクを足して二で割った感じですよ。
別に可愛くはないですけど、巡り合わせが良ければイラスト化されるんじゃないですか??
「……………………」
あー、やばいですね。息してないです。
仕方ないので、スーパーの安売りで買った、賞味期限がちょっと切れたポーションをぶっかけておきます。
….…ぶっかけって、ちょっと卑猥ですね。キャっ!
…………。
さて、このくたばりそこないが起き上がるまで暇なので、サハランプライム会員である私はアニメでも観ることにします。
あ、心配しないでも大丈夫ですよ?
勤務先でも、しっかりWiFi繋げてますから。通信料は大丈夫です。
「ふっかーつ!!」
Aパートがちょうど終わりました。
監督が変わったてクソになったって前評判は確かでした。これじゃあフレンズになれそうにないです。
「……って、レモーネくん! 業務中じゃぞ! スマホしまいなさい!」
「業務中にも関わらず、今までダウンしてたのはどこの誰ですか? 介抱大変だったんですからね」
「そ、それはすまん……ありがとうレモーネくん」
「分かればいいんです。Bパートだけでいいので観させてくださいね。クソアニメですけど」
「ううむ……なら、観ながらでいいから聞くんじゃ。――我々にも勇者様が降臨なさる。それは話したな?」
「ええ、聞いてますよ。今日は勇者さん7人でしたっけ。最近多いですよね、勇者志望のかた」
「そうじゃなーい! 言うとるじゃろ、
「…………はい?」
どう違うんでしょうか。やっぱりもうダメかもしれませんね、このボケ老人。さっさと老人ホームに入ればいいのに。
「儀式が成功したのじゃよ! 我々レーモンド族にも、第一の勇者が現れたのじゃ!」
「……あーそうなんですね。うまくいってよかったですね」
「なんじゃその反応の薄さは。レモーネよ、おまえもレーモンドの一族じゃろうに」
「だって今さらじゃありませんか? わたし、毎日のように勇者さんと冒険行ってますし。勇者さんなんて、その辺に転がってるじゃないですか」
たしかに、私の一族として降臨された勇者さんはゼロ。近隣のオレンジーヌだとか、グレップルだとかにはたくさん降臨されているのに。人気ないんですね、うちは。
でも別に、一族がどうとか関係ないと思うんです。そんな古臭い考え方で、どうやって魔王倒すんですかね。みんなが協力しないと勝てないのは、百も承知だと思いますが。
「なんじゃと!? これらだから最近の若いものはいかんのじゃ。だいたい、おまえはレモーネ一族としての自覚がーーーー」
どうしてこう、お爺さんの話っていつも同じで長いのでしょうか。まぁ、まともに聞くつもりもないわたしも悪いんですが。
オーレさんが話している間に、みなさんに説明させていただきますね。
ここは冒険者ギルド『ミックス』第3支部。フルーリア大陸中の冒険者たちが、共に旅をする仲間を求めて集い合う、いわば冒険のスタート地点。困っている方からの依頼を受けクエストとして発注したり、冒険者さんたちの登録や転職、情報の提供など冒険にまつわる一から十までを取り扱っています。
ここのスタッフとして私は働いているわけなのですが……最近は元冒険者として旅に出たり出なかったりで、そこそこ忙しい毎日を過ごしてます。
色々な冒険者の方がいます。先陣を切って戦う戦やモンク、後方から支援を行う魔法使いや弓手、あとは手品師やアイドル、イラストレーターとか…………それって冒険者にする必要あるのかなーって思うような職業まであります。むしろ最近までは変な職業ばっかりでした。だってこの世界は平和そのものなので、冒険者自体にあまり需要が無かったんです。
それがつい最近、魔王が復活したという噂が流れ始めて、いざ魔王討伐!って、パーティ編成して出かけたりしたんですが、平和ボケし過ぎて中ボスにすら勝てませんでした。
これはまずい!って、全国で緊急勇者招集令が発動されて、今は駆け出し勇者さんがあちらこちらにいらっしゃる状況なんです。
「――――分かったかレモーネ! とにかく、今日は勇者様を迎えに行くから、ギルドは休業じゃ!」
「……そんな身勝手な理由で、ギルド閉めちゃっていいんですか?」
「構わん。どうせ残っとるクエストは、駆け出しには手が出せないものばかりじゃしな。週明けの更新までそんなこんじゃろ。30分で支度するんじゃ」
「はぁ。面倒ですが準備します。はぁ…………」
勇者降臨の立会には、色々と用意するものがあって面倒くさいんですよ。はぁ。
「そんなあからさまに溜息つかんでもいいじゃろうに……。儀式が終わったら今日の仕事は終わりでいいわい。給料もフルタイム分つけておくしのう」
「!? ほんとですか絶対ですよ! 急いで準備しますね!!」
「その性格だけはどうにかならんのか……。それ以外は申し分ないのにのう……はぁ」
やりましたよ、みなさん!
今日は早帰りでゲーム三昧です!!
ひゃっはー!!!!
いつもなら1時間かかる用意を5分ですませて、私はオーレさんの背中を押しながら、2人して召喚の地にまで向かうのでした。
勇者さまのパーティーをさがしてます!-給料アップのために魔王討伐しませんか?- ばくぶしゅ @vukbsh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者さまのパーティーをさがしてます!-給料アップのために魔王討伐しませんか?-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます