第54話 家族愛をコンビニ経営で確かめる2
「コンビニ? あのコンビニ。」
「そうだ! あのコンビニだ!」
「どこに開業資金があるんだ?」
「ちょうど退職金が300万円ある。」
「よし、やってみよう。」
「おお!」
こうして無職の父と無職の二人の息子、専業主婦の母の安倍家は、コンビニを始めることにした。
「まずは何をすればいい?」
「まずは資料請求じゃねえ?」
「やっぱり大手のコンビニチェーンよね。」
「ということは、ラッキー7、ファミリーマッタ、ロウソンの3社よね。」
「では3社に資料請求を送るぞ。」
「ポチットな。」
こうして安倍家はネットで、大手3社のコンビニの資料請求をした。そして数日後、資料が届いた。
「3社で比較すると色々あるのね。」
「契約の種類も豊富だな。」
「なんだ!? この過労死まっしぐらコースは!?」
「こっちは借金で家族皆殺し24時間契約だ!?」
「なんなんだ!? コンビニって!?」
「理不尽が極みの世界だ。」
コンビニ経営の素人の安倍家はパンフレットを見て驚いてしまった。コンビニのオーナーになるということは、目の下にクマを作り、夫婦は過労死でしんでしまうのだ。本部にも逆らえず、違反すると契約違反と損害賠償を起こされる。
「諦めよう。こうなったら貯金が無くなったら、生活保護で細々と生きていこう。」
「そだね。」
「そうしよう。」
「ちょっと待って!」
その時、母の利子が大声でくじけそうな家族に呼びかける。そして、ネットで何かを見つけた。
「これはどう?」
「デイリーザキヤマ?」
「聞いたことが無いな?」
「大手パンメーカーのコンビニか。」
「一番大切なのはここよ。ここ。」
「24時間営業しなくていい!?」
「おお! 焼き立てパンが食べ放題だ!」
「廃棄するなら、私たちでパンを食べましょう。」
「よし! ここに決めた!」
ということで、安倍家はデイリーザキヤマの資料を請求した。そして資料が安倍家に郵送されてきた。ネットでも普通に見れる。
「えっと、こんな人はオーナーに向いています。商売が好きな人。」
「我々にはお金を儲ける手段が必要だ!」
「家族で助け合える人。」
「無職家族の我々にはピッタリだ!」
「本部の言うことに歯向かわない人。」
「名前を借りるから文句は言えない。」
「死ぬまで働き続ける人。」
「結局、どこのコンビニも過労死かよ!?」
「なに!? 本部に摂取されるロイヤルティーが、コンビニ調理のパンは、たったの27パーセント!? パン屋に特化したコンビニにすればいいじゃないか!」
「やったー! 明るい未来が見えてきた!」
「コンビニ最高!」
「ワッハッハー!」
「これで我が家もお金持ちだ!」
夢見る安倍家であった。
つづく。
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