第33話 天使と悪魔は笑う6

 ここは渋谷の町中。

「学校も休みだし、映画でも見に行こう。」

「怖いのにしよう! 聖が泣き出すのがいい! キャハハ!」

「やめてください。」

 今日は日曜日。渋井光、佐藤闇、鈴木聖の3人は渋谷に映画を見にやってきた。

「ああ~、闇も口が悪ければ可愛いのにな。」

「え!?」

「残念だ。」

 光は気軽に思っていることを言っただけだった。しかし思春期の女の子は、何気ない男の一言が気になるものだった。

「そうよ。闇ちゃんは学校でも人気があるんだから。」

「と、当然よ! 私が一緒に遊んであげていることに感謝しなさい!」

「その口の悪さが本当に残念だ。」

 闇が照れを隠しながら、光るたちと仲良く遊んでいるとザワザワとした人だかりがある。

「なんだろう? なにかイベントでもやっているのかな?」

「渋谷だし、芸能人がいるんじゃない! 行ってみまよう!」

「なんだか楽しみ!」

 光たちは人だかりが何で出来ているのかを期待して見に行った。群集心理という野次馬根性だっだ。

「きゃあ!? あれは何!?」

「肉!? 神戸牛に!? 米沢牛!?」

「血塗れだ!? 安い肉は荒らされてないのに!?」

 行ってみると肉屋さんが荒らされていた。周囲には食い荒らされた肉と血が飛び散っていた。今、ちまたで噂の連続高級肉強盗だった。

「また肉屋が襲われたってよ!? 何件目だ!? しかも高い肉ばかり!?」

「百貨店の肉売り場も荒らされたって、ニュースでやってたわよ!?」

「怖いです。もう帰ろうよ。」

 光たちは聖が怖がるので、その場から去る。

「ミステリーやホラー映画を見る気分じゃなくなっちゃった。」

「当分、肉は食えないな。おえー。」

「私もステーキを食べるのやめて、コロッケにする。」

 光たちは現場の悲惨さを目撃して、肉を食べる気分にはならなかった。

「あれは悪魔の仕業だ。」

 光は神の使徒として、事件が人間では説明ができない惨劇なので、直感的に悪魔の仕業だと悟った。

「ワンワン。」

「あ、カワイイ。ワンちゃん。」

 その時、道端に小さな子犬が現れた。可愛いものが大好きな聖は、歩いて行く子犬の後を追った。

「今日は帰ろう。もしかしたら凶悪犯が、まだ近くに潜んでいるかもしれない。」

「そうだな。帰るとす・・・あれ? 聖がいない。」

「まさか!? 人攫い!?」

「あほ、聖も16才の高校生だぞ。カワイイ子犬がいたってついて行くもんか。」

 現実はドラマよりもミステリーである。


ここは渋谷の町中。

「ワンワン。かわいい。」

「ワンワン。」

 聖は、今時の純情アイドルぼけなのか、素直に子犬について行くで、良い子であった。まさに聖なる女神である。


つづく。

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