第5話 テスト

「史学部って、面白そうね。」

 カロヤカさんがニュースで見た史学部に関心を持っている。

「カロヤカさんはダメよ! 史学部なんか作ったちゃダメよ!」

 友達の小田急大蛇が止めに入る。

「どうしてダメなのよ?」

「カロヤカさんが古文書通りに冒険の旅に出たら、徳川埋蔵金どころか、ラスボスの奥に隠されているシークレットボスまで見つけ出してしまうわ!」

「私はどんだけ強運なんだ?」

 カロヤカさんは、道を歩けば100億円を拾い、宝くじを買えば100億円が当たる。それがカロヤカさんだ。 

「わ~い! 面白そう! 私もカロヤカさんと歩きたい! ニコッ。」

「金目当てでついてくるな。」

「酷い!? 私たち友達じゃない!?」

「笑が勝手についてきているだけだ。」

「チイッ。バレたか。」

 友達の越後屋笑が金儲けにしくじる。

「おまえら、本当に友達か?」

「そう言いながらも、カロヤカさんは、私たちのことが好きなくせに。」

「そうそう。なんだかんだ言っても、カロヤカさんは優しいもんね。」

 

 それは、ある数学のテストの時間の出来事だった。

「できた。」

 カロヤカさんは、僅か5分でテストを終えた。もちろん全問正解である。

「ああ~!? 分からない!? 1+1=いくらよ!?」

「1から1って、引けるのかしら!? 答えは0? いや、答えに0なんて、ある訳が無いわ!?」

 笑と大蛇は、数学のテストに苦戦していた。

「おまえらは小学生か?」

 担任の教師、伊集院苺も呆れていた。

「いいか! こんな簡単な問題で1人でも赤点を取った者がいたら、クラス全員の宿題を100倍にするからな!」

「ええー!? 赤点を取った人だけで、いいじゃないですか?」

「連帯責任だ! 一人の赤点は、みんなの赤点! みんなの赤点は、一人の赤点だ!」

 担任教師の苺は、意外に熱い性格だった。

「ダメだ!? 問題が解けない!? みんなを道連れにしてやる!」

「フッ。私のおかげで賢くなれることを感謝するがいい! ワッハッハー!」

 笑と大蛇は、開き直っていた。

「仕方がない。」

 その時だった。カロヤカさんが笑と大蛇の解答用紙を取り上げ、空白の回答欄に約50点くらいの正解を書いていき、直ぐに解答用紙を笑と大蛇の机に返す。この時間、僅か1秒。

「は~い! 終了! 解答用紙を後ろから送ってきて。」

 こうして無事にテストは終わったのである。

「ダメだ!? 勉強なんか嫌いだ!? 誰が宿題なんかするもんか!」

「もう生きていることに疲れましたと、自殺をチラつかせて、宿題100倍を回避しなければ!」

 笑と大蛇は、カロヤカさんの優しさに気づいていなかった。


 そしてテストが返される。

「カロヤカさん、100点。」

「当然です。」

 カロヤカさんの人生に99点の文字は無い。

「笑。」

「赤点じゃありませんように、赤点じゃありませんように。」

「50点。」

「え? 50点? この私が!? やったー! 赤点じゃない! ニコッ。」

 笑は、赤点を回避した。

「次、大蛇。」

「先生、恥ずかしいから名前で呼ぶのをやめてくれませんか?」

「私は、小田急という名字も十分恥ずかしいと思うがな。」

「50点。」

「まあ、私が実力を出せば、50点くらいは楽勝ですよ。ワッハッハー!」

 大蛇も赤点を回避した。

「二人とも、私が答えた所以外は、全問不正解ということか、情けない。こんな奴らが高校生になれる時点で、日本の将来が心配だ。」

 カロヤカさんは、日本の未来を心配する。

「かかってこい! テスト! 私は適当に答えても50点取れるんだ! 転載なんだぞ! ニコッ。」

「今回は、50点に抑えてあげたけど、次のテストでは51点でも取っちゃおうかな。ワッハッハー!」

 テスト終了後、3日3晩、笑と大蛇は調子に乗り続けた。


 話は、元に戻って来る。

「あれは、宿題を100倍にされたくなかったからよ。」

「照れなくていいよ。カロヤカさんは笑のことが大好きなんだね。次回のテストもお願いします。ニコッ。」

「筆跡まで私の字と瓜二つなんだよね。凄過ぎ。カロヤカさん。」

 結論として、カロヤカさんは、笑と大蛇を友達として、実は気に入っていた。

「さあ、授業も終わったし、ラノベ愛好会の部室に行きましょう。」

「愛好会なのに、部室でいいのかな?」

「ほれ、つまらないテストの話なんかしているから、今日という1日が終わろうとしているじゃないか。」

「おまえが言うな。」

 そして3人は、ラノベ愛好会の部室の前にやって来る。

「あ、ラノベ愛好会がラノベ文芸部に変わってる。」

 看板がラノベ愛好会から、ラノベ文芸部に変わっていた。

「良かったじゃん。愛好会の部室を何というか考えなくて良くなって。キャッハッハ!」

「そうだね。赤点も取らなかったしね。ニコッ。」

「そういう問題か。」

 ガラガラガラっと、ラノベ文芸部の部室の扉が開き、部長の春夏冬天と宇賀神麗が現れる。

「遅かったな? 何をやってたんだ?」

「え? 今から部活動では?」

「もう18時。」

「ええー!? 18時!?」

 カロヤカさんたちが、テストのつまらない話をしていて、時間が経っていることに気づかなかったのだ。

「愛好会から部活に格上げになった件は次回にしよう。」

「やったー! お腹空いたし帰ろう!」

「こんなのでいいのかな?」

 少し普通の人間に近づいたカロヤカさんだった。

 つづく。

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