幕間 不穏

 ノーリス=リクウォットはいわゆる天才である。


 大抵のことは簡単に出来てしまうし、今まで努力というものをしてきたことがない。

 魔術も今まで見つかっていなかった魔術回路をいくつも開発しているし、魔術に対する造詣も深く、親魔性が高くないと使えない様な魔術だっていくつも使える。

 だからこそノーリスが次の魔王候補だと呼ばれるのだ。


 そんなノーリスは現在、ハルトが使っている魔術試験場を眺めていた。

 外に窓はなく、ひらけた部屋でもないため、残念ながら中は見られない。


 だが、ある程度の魔術なら衝撃や音が発生する。


 それを防ぐための防音・耐衝撃設備が整っているのが魔術試験場だ。


 だから音漏れなどあるはずもないのだが、極魔術きわみまじゅつともなれば・・・と思っていた。



 しかし一向に音も衝撃も漏れやしない。


 ハルトの魔術は音も衝撃も大してない魔術なのか、それともずっと不発を繰り返しているのか。


 何にしろ、ノーリスはただひたすら試験場を眺めていた。


「お前も気になるのか?あのビビリ君が」


 ノーリスは声を掛けられる。




 少し筋肉質で、ちぢれた黒髪に浅黒い肌の男。

 ノーリスと同じく、次の魔王候補と目された男。


 イェラ=ヴェアルノフ。

 燃焼させる系統の魔術を得意とした魔術師だ。


 イェラはノーリスに話し掛ける。


「今まで散々魔術が使えないって言っておきながら、オレ達を差し置いて魔王になって、そりゃ腹も立つよなァッ」


 まるで挑発する様に、もしくは同意を誘う様に言葉を並べるイェラ。


「しかも、極魔術きわみまじゅつは不発、失敗!そんな体たらくの魔王なのに、魔王を名乗られるのは心底腹が立つ!お前もそう思うだろ?」


 イェラはニヤリといやらしく笑う。


「何が言いたい?」


 苛立つノーリスはイェラに質問を返す。


 イェラは待ってましたとばかりに不敵に笑う。





「アイツを潰すいいアイディアを思い付いたんだが、お前も乗らないか?」

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