異世界に転移したコミュ障の青年・シゲオが、凄腕の女暗殺者アネシアに拾われ、困難に立ち向かいながら生きることに真剣に向き合っていく姿が胸を打ちます。
暗殺と言っても、政府お抱えの暗殺者であるアネシアが狙うのは表立って罪を裁けない悪徳貴族だけ。
誰にも気づかれず屋敷に侵入し、警備をかいくぐり、標的の居場所を突き止め、確実な死を与え、痕跡を残さずに逃げる。ひとつひとつがミスの許されない命がけのアクションで張り詰めた緊張感が伝わってきます。
しかし今まで一般人として生きてきたシゲオは、相手が悪党でも人殺しに手を染めることを躊躇ってしまう。仕事は成功したものの罪の意識に苛まれるシゲオをアネシアは、「お前は正しい行いをした。人々を救った」と慰める。
それまでは他人と極力関わらず、将来の夢もやりたいこともなく、ただ惰性で生きてきたシゲオが、この世界で生きていくため、師匠の期待に応えるため覚悟を決めるシーンが印象的で、暗殺とは真逆の『生きる』という強いメッセージを感じさせるのがこの作品のすごいところなんですよ。
暗殺者としても成長していくシゲオの異世界生活。次々と現れる強敵や英雄の暗殺を如何に成し遂げるか、乞うご期待。
(「殺し屋の憂鬱」4選/文=愛咲優詩)