第1話ー本日も殺ってますー

「わらわは、イシュタミルの領主にしてカイネル王国上級貴族院議員 ノイド=ルグランの娘、ローズ=ルグランぞ それを知っての狼藉か!?」


「はい 間違いないです。よかった人違いじゃないことが確認出来たので、助かりますぅ」


四方を石壁で囲まれた部屋に二人の人間がいた。一人は今自ら名乗った女 ローズ。

三十路で上等なドレスと高く盛られた髪型がいかにも貴族らしい。

その体は両手両足に枷をつけられ壁に貼り付けられている。


もう一人は男で名前はリュートといった。


「お前!そもそもどうやってここに来た 警備兵はどうしたのじゃ!?」


「え?警備兵?…う~んとどうしたんだっけな…ああ あの鎧を着た人たちなら全員気を失ってます。軽めに叩いたので殺してはないです」


「20名以上いるはずなのに…」


「それでえーと ぼ 僕はアナタに復讐をしにきました」


「はぁ?復讐だと?お前なぞ見たこともないわ下郎めが」


「そそれが大丈夫なんです。復讐代行屋ですから。へへへ…それにしてもすごいお屋敷にお住まいですねえ。地下にこんな部屋をお持ちなんて…。ここならどんなに騒いでも大丈夫そうだ…」


リュートは少し緊張し、愛想笑いをしながら言った。


「ロ ローズさん。ツバメさんという方をご存じですね?」


「…何?誰のことか わ わからぬわ」


「シタァン」という乾いた音が石壁に反響する。


「あっ!」


ローズ鼻から血がしたたり落ちる。


リュートの右手にはいつの間にか鞭が握られていた。

ローズは顔を鞭で打たれたのだ。

その事実に気づくと急に痛みと屈辱が襲って来たようで


「くぅぅぅ…」


苦悶の表情で声を漏らした。


「ああ!血が出てしまいましたね。ごごごめんなさい…嘘はいけないと思うんですよ」


「な なにをする…」


「ツバメさんのご遺族から依頼をうけまして、知ってますよね?こちらの使用人だった女性です…すみません」


「…う うう…」

肯定とも痛みによる呻きともとれる声を出す。


パァン


「ぎゃああ」

今度は首筋を鞭打たれてローズの皮が破れ血が飛び、肉が傷から覗く。


「ああ すいませんすいません。ちょっと曖昧なお返事だったので…」


「ううう」


「あなたと他の家来と一緒になぶり殺したんですよね」


「…あ…いや…うむ」


「えーと 約10時間におよぶ拘束状態で鞭や棒での殴打、焼いた鉄を押し付ける。ナイフやハサミで指、鼻、耳などを切り取る。目玉に針をさして…」


「そ それは…」


「しかも そんな残虐な殺し方をした理由がアナタが慕っているザインバック伯爵が彼女を見初めたからという実に身勝手な…」


「ちょ ちょっと待て!それはあの女がザインバック様に色目を使ったからじゃない!たかが使用人のくせにあるまじき行為じゃ!使用人に罰を与える権利は雇用主であるわらわにあるはずじゃ!」


「あぁ…まあこの国の法律ではそういうことになってますね。だから僕が来たんです。人の外にいる存在、『クズ』を掃除するためにね」


「ふ ふざけないで!それに ほとんどの拷問は家来たちがやったのよ!わらわではないわ」


「は はい 知ってますよ。ですからそのご家来たちには同じことを味わっていただき、先に死んでいただいてます」


「…!」

ローズが息をのむ。


「行為そのものはご家来がやったのかもしれませんが、ローズさんアナタの指示があったんですよ。ご家来みなさんが亡くなる前に証言してくれました」


話ながらリュートがナイフやハサミなどを準備するカチャカチャという音が室内にこだまする。


「で でわ これから10時間よろしくおねがいします。まず左手の指から切っちゃいますね…すみません」


「ま まて!わかった!わらわが悪かった…謝る!何でもする…金が必要ならいくらでも出す!女の遺族にも一生困らないような財産を作ってやる」


「ご ごめんなさい。依頼主は裏切れないんです」


ローズと目を合わせて少しすまなそうに微笑みながらお辞儀をした。


その後のローズの絶叫は屋敷の地下で半日以上つづいた。


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