脱出
JPを先に行かせたホセは嬉々として
しかしキリチェックの圧倒的スピードとリーチの差に被弾の数が徐々に増え始めていた。だがそれなりの打撃も与えているはずだった。
(覚醒状態か? ……手応えがあっても足が止まるどころか気配すらない……)
もう既にKO級のボディブローを何発か入れているし、顎やこめかみにも良いのが入ってるのに逆にキリチェックの手数は増え続け、足は止まらない。次の展開に差し障る前に
そこに前方からモーター音が聞こえる……
(ちぃ、来ちゃったか)
その音が何かを知って居るホセにとって前、キリチェックには後ろの通路から最高速に乗った状態のジョシュがローラーダッシュで疾走してくる。
「ジョシュ! 無理だ! 帰れ!」
「んなこといっても、ここでいきなり帰れっかよ!……でぃぃぃぃやっ!」
ホセの制止に逡巡しながらも3m程の距離を飛んで蹴りをキリチェックの顔に向かって放つが余裕を持って右腕一本でガードされる……
着弾の瞬間にジョシュは身体を捻って回旋力を加えつつ、蹴り込むとバク転の要領で後ろに回転、間合いを取って着地して構える。この時点でキリチェックは
蹴りをガードした右腕の骨を構成する橈骨、尺骨は骨中央部から砕け、筋肉により骨の位置が短縮転移し始める。ジョシュの装備の重さは見かけよりかなり重い、それは装備の筋力骨格強化機能により遥かに動作は速く軽く重量分だけ物理打撃は重い。
(分が悪い。敵が2人ともなればこの状況は不味い。だが、若をお救いせねばっ!)
キリチェックは負傷した右腕を左手で引っ張るように伸ばして牽引力を掛けるとジョシュに上段蹴りを放ち牽制するとその鋭さにジョシュはガードを固めて身を屈める。
その隙を突いて一気にジョシュを飛び越え逃走に移る。それをジョシュは追いかけようと立ち上がり振り向いてローラーダッシュを作動させる。
「待て、ジョシュ! 追いかけるな!」
「え? オッサン、今仕留めんと回復させたら面倒だぜ?」
「アンナ達の所へ戻るぞ、野郎が回復したら一番弱い所を削りにかかる筈だ」
ホセはそう指示すると急いで戻るべく走り出したのでジョシュも追いかける。
「今、3階の駐車場で脱出の準備に入ってる。
「それでもだッ! ここは相手の本拠だということを忘れるなッ!」
走りながらも一喝され、ジョシュは二の句を継げなかった。
電源操作される可能性を考慮して2人はエレベーターを避け、階段を上り3階に移動する。
「お? ジョシュにホセ、もう
速やかなジョシュの帰還にスタンはライフル片手に薬で朦朧とする女子供をテキパキと介助、指示しながら分乗させつつ感心するが、ホセの話を聞き表情が暗くなる。
「お宅ン所のキリチェックと交戦したが逃げられた。前よりも強化されてかなりヤバくなってる」
「そうか……」
出来れば早期にキリチェックを生け捕って治療を施したいスタンはその難易度の高さに頭を抱える。
「ジョシュが一撃喰らわせて撤退したが、弱い所に狙いを絞る筈だ」
「つまり此処だな……おいリカルド! 何台で出せる?」
多種多様の車に
「6か7台だ、運転手が居ないんだ。運転できるのは俺、アンナ、スタン、アニーにホセ、JPとジョシュにシュテフィン、ジュリアはペーパードライバーだから無理、マーティも運転できるが……」
「アンナ以外の女性は射手で待機して貰え、マーティは無理だから姉さんと一緒に……
待機列でじぃーっと恨めしそうに見つめるソフィアの眼に根負けしたスタンが割り振りを決めた。
「俺とアンナの車を先行で出せ、その後、JP、シュテフィン、リカルド、ジョシュ、スタンで行く! 見つけ次第俺が確保に行くから防衛しながら進め!」
ホセが弱いが射手がいる車を間に挟み、守りつつ進むことを指示すると自分はロールスロイスファントムEBWに飛び乗りエンジンを始動する。多種多様な車が置いてあるが、高級スポーツカー、マクラーレンやフェラーリ等の車は乗れる人数が限られるのでなるだけ大き目の車を選んで乗る。
アンナはリムジンに乗りその後に続く、リカルドとスタンがそれぞれランボルギーニ・ウルスとメルセデスAMG G65に乗って来ると分乗をジョシュに急がせる。
「はい、慌てずにのってぇ! 大丈夫だからねぇ」
ジョシュが誘導するとのたのたと動きながら被害者たちが乗り込みだすと施設側からJPとシュテフィンがノートパソコンとピクピクと痙攣するジェイク・ダンカンを引き摺りながら連れて来た。
「お待たせぃ!」
「首尾は?」
シュテフィンが引き摺っていたジェイクを放り投げるとジョシュが成果を尋ねる
「PCの中に本拠の
JPは手短に情報とジェイクの連れて来た理由を伝えると状況の説明をスタンから受けて一言、分かったとだけ告げて車に乗り込み発進させる。
シュテフィンがメルセデスに乗り込むとジュリアも助手席に乗り込む。
「おいシュテ! 例の猟犬マジでヤバイから挑発すんなよ! ホセが手を焼くレベルだからな!」
「ほーん、分かったぁ♪……」
先程呑んだ処女の血液のお陰で超が付く
続いてリンカーン・コンチネンタルとシボレー・インパラが出てくる。
「これに乗れ!」
スタンがジョシュに声を掛けると施設側から複数の足音が聞こえる。
「おい、此方だ!」
残存の護衛兵士達が集結し追撃に来たのだった。
「みんな乗って! スタン! 俺が
ジョシュはShAKで応射しつつ運転席のスタンに向かって叫ぶ。
「チィ! アニー! そこのザックに起爆装置と手榴弾がある! それを使え!」
腰だめにバレットを撃つアニーに呼びかけるが銃声が反響してまともに聞こえない。だがそれを聞こえていたマーティが這いずりながらザックに取り付き親指で合図する。
「中々ガッツのある小僧だぜ。よし! 上で会おう!」
リカルドをリンカーンに乗せて先導させスタンもインパラに乗り込み発進する。取り残されたのはジョシュ、アニー、マーティ、ソフィアとジェイクの5人だった。
仕方なしにマーティとソフィアは気絶しているジェイクを置いて車の陰に隠れた。
多勢に無勢で本来なら押されるところだが、ShAKとバレットはボディアーマーを壁ごとぶち抜く火力があり、壁ごしにShAKやバレットで薙ぎ払われダメージを与えて兵士達を撤退させる。
「さて、バックレるぞ!」
そこに変な形のジープタイプの車に乗ったマーティがジョシュ達の横に止まる。
「うは……やっぱ辛いや」
「マーティ無理しないの!」
唯一、キーが付けっぱなしで置いてあった車を運転してマーティが眉間に皺を寄せて溜息を吐く。アニーが困った顔で叱るが実際助かったのは事実であった。すると施設側のエレベーターの到着音がするとジョシュはあの
「アニー、運転席に乗れ! マーティは助手席でソフィアは後部座席で
そこまで言うと通路側を向いてShAKをぶっ放すが、相手は銃撃を意にも返さずに撃たれて倒れた兵士を跨いでやって来た。……キリチェックが採取エリアの血液で傷を修復し、超覚醒した状態でやって来たのだった。
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