開始
夕刻、配達用のトラックに潜みながらエディの帰りをジョシュ達は装備を付けて待つ……
反対側に腰掛けている神妙な顔のシュテフィンはマクミランにレイジングブルのシンプルな出で立ちなのに対し、背中からバレットのM107CQ、脇ホルスターにはP-210と反対側の肩にShAK-12をぶら下げ、腰にはM945を付けたほぼフル装備であった。エメ達の強化服が無ければ500メートルも歩けないだろう……ホセやスタンには
「
と散々弄られた。
その一時間前、ルブラン達が北側のヨットハーバー裏の建築資材用引き上げ港に着いたとの連絡がジョナ達から連絡が入り同時に気合いが入り、これを最後にするつもりで装備を万全にした。
(さて、どう動く?)
マッキンタイア率いる断罪隊はスタッテン島で継続戦闘中と確認され、残りは集積所の警護隊とキリチェック達だけだった。想定を幾らしても現実の人の流れは完全には把握できない。分かってはいるが、どうしても考えてしまう。
今はただ沈黙を続け、スマホでやり取りをして情報を伝達しあう。そこにピッと親指を立てたアンナが成功の合図をして入って来る。入口の警備兵や巡回兵もろともガスで眠らせたのを確認したのだった。
(エサは撒いた、後は魚が食いつくのを待つだけだ)
そこに集積所の茂みに潜んで偵察していたエディからメッセージが入る。
” 魚が見えた ”
前もって決めた暗号でルブラン達が集積所に現れたと知らせがあったと同時にJP、スタンにリカルド、ジョシュ達が立ち上がり最終チェックに入る。
” 全員、打ち合わせ通りに動くぞ ”
JPから指示が飛び、運転席のグレゴリーがアクセルを踏みトラックを発進させる。
あれからJPとホセ、スタンにジョナとルブランを嵌める作戦を煮詰めて出した答えが、ルブランを港で抑えさせてひと騒動起こしてもらい、その最中に隣の邸宅の敷地を抜けて
既に隣の邸宅にはホセが無人である事、罠、監視の類が緩い事を確認しに先行していた。
” 現地より無人確認、監視センサー多数……こりゃ、玄関の方からこんにちは! のほうが良いぐらいだ ”
” ならば正面から行く! ホセ、道中拾う ”
”
広大な裏庭を抜けての潜入より車での拙速とのJPの即断にホセの返しも想定内だったらしく即座に返してきた。
JPの指示でグレゴリーがスピードを上げ進み、道中立っていたホセを拾う、そして無言で装備を整える
何時もの無駄口はない。キリチェックが邸宅に居れば対応されるだろうが、そこは賭けだ。
邸宅前に横付けされると一同が一斉に降り、JPとアンナ、ホセがナイフと消音器付きのソーコムでカメラやセンサーのコードを切って素早く玄関に取り付くとリカルドがキーピックを取り出しものの数秒で解錠し、スタンが素早く銃を構え扉を開けて滑り込む、中に人がいないのは感覚で分かっている。後は室内センサーやカメラ類を始末して中にジョシュ達を招き入れる。
すると奥から微かな物音がする。
(お出迎えか……)
それを受けてジョシュが廊下の角に
(奥の部屋に5~6人ってところか……)
ジョシュの感覚がそう囁くと同時に出し抜くような速度でホセとスタンが一斉に身を屈めて駆け出し、今開かれようとするドアごと滑り込むような体制でライフルでぶち抜いていく!
「ゲッ、早い!」
「時間が無い、チンタラするな」
それを見て唖然とするシュテフィンにJPが短く叱責し、周囲を警戒しながらジョシュ達がその部屋、キッチンに進むと奇襲された形で兵士達が倒れている。
「
JPが予め組んでおいたメンバー、ジョシュ、アニー、リカルドとスタン、シュテフィン、ジュリアで捜索に行かせる想定は5分、次の襲撃か次のエレベーターが来る時間をそう踏んだのだ。ホセとJPは部屋を見渡して調べ始める。
屋敷内を時計回りと反時計回りにジョシュ達とスタン達が部屋を回る。丁度キッチンの反対側に書斎があった……
(ここに!?)
ゲオルグの依頼、アンソニーの計画の全貌を探れを遂行すべく、数十秒で書斎の机を全て引っ張り出す…が、何もない。ここには生活臭、人の活動している証が何もない……屋敷自体が営業マンさえいないモデルハウスのような見栄えだけの家のような存在だった。
「チッ、全部上っ面だけの屋敷だな」
「行くぞ、もう時間だ」
ジョシュは詰まらなそうに吐き捨てると廊下で見張るリカルドに急かさせる。そこに銃声が鳴り響くと同時にスタンが廊下に出る!
戦闘はキッチンで発生した。いきなり作動し始めた大型冷蔵庫に不信感を覚え、幾つもの修羅場で磨かれた勘が働いた2人はライフルを構え、モードをフルオートにして左右に立つ……
いきなり観音開きの扉が開かれ、屈強な兵士達と目線が合う……その途端にフルオートで銃弾がばら撒かれ、銃口をあらぬ方向へ向けながら兵士達が血煙と共に血の海に沈む……
そこにアンナとスタン達が飛び込んできた。
「おおぅ、結構居るなぁ……」
7人程の兵士がエレベーターの中で倒れてその遺体で自動扉を閉じるのを邪魔していた。
ホセが全部の遺体をさばくり、手榴弾の類を外して袋に詰め、JPとリカルドが遺体を外に出す。
「とりあえず先行で俺らが行く、
スタンも手伝いながら外で見張るジョシュに伝えるとホセが袋を渡して指示する
「ジョシュ! シュテ! 前に教えたようにこいつでトラップを各部屋に仕掛けろ! アンナは後続のオブザーバーだ」
「あいよ!」
袋を持ったジョシュ達を見送るとホセがエレベーターの天井の整備窓を開ける。
「ありがちなパターンだな」
それを見てJPが苦笑するが、スタンはニヤッと笑って頷き
「それしかねぇしな……まぁ、うちをボコったJP隊の手腕を堪能させてもらうよ」
「おいおい、ハードル上げんなよ。弱小特務苛めてもなんも出ないぞ?」
ホセが天井から顔を出してボヤくが、いつも陽気な
「何でもいいからとっとと仕事しようぜ。どうもこの
何か異質なものを感じたのか、いつもより二割増しで殺気立つのをスタンは少し驚いていた。
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