離散混合
悪夢
オーウェンとの戦闘に入るとジョシュ達は数分で後悔した
(強すぎて全く歯が立たない……)
初手の攻撃を難なく受けた後にオーウェンは個別の対応をしだした
急所や隙を狙うジョシュの蹴りやジャブは悉くガードされ、大雑把なシュテフィンの攻撃は見切られて避けられる
しかも同時攻撃でも難なく処理されれば心が圧し折られていく
そんな中でもジョシュは策を練っていた……如何にしてシュテフィンの攻撃をまともに当てるか? を考えていた
戦闘経験や訓練が殆どないシュテフィンの覚醒後の戦闘能力は大振りだが馬力は極めて高い……オーウェンが避け出したのは受け損なうとダメージがあるからとの推測した
肩で軽く息をし始めたシュテフィンに向かいジョシュは一計を案じた
「おいステ、パブロの時、覚えてっか?」
構えを取りながら隣のシュテフィンに尋ねる
「ああ、やれるのか?」
横目でジョシュを見る……攻撃も何も避けられてばかりいるのだが……
「OK、爺さんに一発で満足して寝て貰おう……」
その言葉を聞いてオーウェンが笑う
「おや、この爺に何をご馳走してくれるのかな? 私は好き嫌いが激しいのだが?」
「そいつぁ困ったな、ウチら味よか量なんでね」
「孫の前だと頑張って食べちゃう口だよね? そいで後で嫁や娘にご機嫌斜めのお小言ジジイになるってタイプ」
やり取りが終わると全員がニヤリと笑う……もし職場や飲み屋に居たらいい友人関係に成れただろう
一斉に飛び掛かるジョシュ達を好々爺の表情の眼光だけが冷たく鋭いオーウェンが迎え撃つ
ジョシュは左にサイドステップし、一瞬だけシュテフィンを隠し、そのまま左側面を攻撃に入る
左顎を狙おうとしパンチを放つがすでに左腕がガードに入る……だが、狙いは違っていた
それを防ごうとオーウェンが右手をシュテフィンに対しての
それを俊敏なウィービングで躱し、拳を握りって肉薄するシュテフィンに用心し、ジョシュを持ったまま後方へ飛ぶべく膝を軽く曲げる
だが、そこまでもジョシュは読み切っていた
飛び関節から脚を抜き、腹筋を使い背後に回り、首元に腕を入れると足を絡め、裸締め(リア・ネイキッド・チョーク)に入る、背後に重心が変わったおかげで回避が出来ても後ろに倒れる様になる
「ほほう、此処まで変化するとはやるなぁ……」
チョークを決められてもまだオーウェンは余裕綽々で評価をしている
「まだ、メインディッシュはこれからだぜ?」
オーウェンがそれを聞き
「ん? なにッ?!」
気が付いた時にはシュテフィンが空手の試し割りよろしく全体重を乗せて拳をオーウェンの鳩尾下に突き入れる
「グッ」
ダメージと共に目を剥くオーウェンの苦鳴とともにシュテフィンの拳にタイヤを殴ったような感覚が広がるが、素人勘でもわかる勝負どころと感じて構わず殴り続ける
5~6発貰うと流石のオーウェンの余裕も消え失せジョシュを引きはがし、シュテフィンを殴り飛ばす
「如何でした? 若手の賄い飯は?」
「中々の工夫と量だったよ……今後ももっと精進するように……」
片手で引きはがされ投げ飛ばされてジョシュは受身を取り立ち上がる。やっとまともなダメージは入ったがまだ足りない……次の手を模索しだす。
シュテフィンも顎を気にしながら立ち上がる。
目の色は相変わらずの紫だが闘志はまだある……はずだった
「さて、若手に指導しようかねぇ……久しぶりに良いのを貰ったからお礼に……」
オーウェンはすっと右足を猫足の様に踵を上げ、両手の掌を前に向ける……空手の前羽の構えをとる……
その佇まいと隙の無さに場の空気が凍って行く感覚を対峙したジョシュは覚えた
(やべぇ! レベルが違い過ぎる……)
攻めれば全ての動作に対応して防御とそれでいて必殺の一撃が繰り出される
しかし、手をこまねくわけにはいかない、意を決してジョシュが踏み込みジャブを放つ
「ハッぁ!」
オーウェンは裂帛の気合と共に構えから脚を踏み込み正拳突きを繰り出す
咄嗟に腕を交差しガードと威力を殺す為飛ぶ……その必要が無かった
衝撃は腕から全身を貫き後方にジョシュを吹っ飛ばす……
ガラス窓を突き破り廊下に叩き付けられる
「ぐ……」
上半身に痛みという異常信号が響き渡る……
(パブロの渾身のストレートより効くぜ……)
気を失いそうになるのを辛うじて踏みとどまりドアに手を掛ける
そこに誰かから声を掛られた気がしたが、目前の敵に集中する
「如何かな? 基本の技の威力は」
自慢げに尋ねるオーウェンにジョシュは苦笑しながら構える
「ごっつぁんでした……もう十分なんでとっとと帰れ」
その向こう側で頭を振りながらシュテフィンが立つ、ジョシュに正拳突きの後に上段回し蹴りを頂いてそのまま
いずれにせよ、策は殆ど尽きた……相打ちも厳しい……
ジョシュは腹を括り、自分と相打ちさせてシュテフィンにとどめを刺す様に策を巡らす
そこにいきなり……
余裕で前羽の構えをするオーウェンに向かい容赦無く銃弾が浴びせられる
「若! ジョシュ! 大丈夫かッ!? ほほぅ? T-800にしては貧弱な年寄だな……」
「なんだぁ? この爺さん? 銀の弾が効かない?……まるでうちの所長みてーだ」
そこに逃げ遅れのスタッフを探して回っていたバーニィとベケットが現れて危機を察して攻撃を始めた、先の攻撃で部屋の外に飛び出したジョシュを発見して声を掛けたが、無視して突っかかって行く姿を見て敵がいると察知して駆け付けたのだった
バーニィのショットガンとベケットのマシンガンの銃撃の衝撃でオーウェンが死の舞踏を踊るも、表情に余裕があり、撃たれた傷が即座に治癒する光景にジョシュの背中に悪寒以上の冷気が奔る
「ジョシュ!」
シュテフィンがShAKを投げて寄越すが銃を持ったままジョシュが叫ぶ
「爺さん! 早く帰ぇれよ!」
「若けぇの! また来るぞ! 相棒の腕力に頼るより腕を磨いとけ! 相棒も修行しろ! そこの2人!ここの所長とシリルによろしくな!」
銃撃をものともせずに全身のバネを使い跳ね起きると、そう宣言しながら部屋から飛び出して逃走した
「マジで効かんか……ジョシュ! ありゃ一体……」
「本人に指摘したら原種だそうで……今の攻撃で紛れも無いものに変わったよ」
バーニィが追いかけながら聞くとジョシュは片膝を突き、安堵の息を吐く……どう考えても勝てる要素が無かったからだ……
「若、大丈夫ですかい?」
ベケットがシュテフィンに声を掛けるがこちらは尻もちをついて脱力していた
「銃で勝てないから素手でって……ジョシュ、無茶し過ぎだよ……まぁ、銃でもやられてたからマジで死ぬところだった」
それを聞いてベケットが呆れる
「
「何にせよ、追うぞ! そんなバケモン施設内にウロチョロしてもらっては
バーニィが叱咤しながら3人の尻を叩く……が、また漫才が始まる
「へいへい、同じ爺様に負けてられないもんねぇ」
「誰がジジイだ、まだ60前だぞ」
「鯖読んでんじゃねぇよ! この前「、3回目の還暦祝いやっただろ?!」
「うるせぇ! おらぁ永遠の35歳だ」
「あー、おじさん漫才は後にして……ジュリーに対策立てて貰おう」
シュテフィンがインカムを付けなおして発令室のジュリアに連絡という名のお惚気を始めるのはその数秒後だった
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