展開
陽動であるヘイデン隊が全滅し、トーレスも足止めを食らうが、本命であるS2達は紅葉のする木々の根本の繁みの中のトラックの荷台の上で待機していたが、トーレスから合図代わりの信号を受け一斉に動き出す
強皇に頼み、正式にトーレス隊専属になった運転手が補給物資輸送ついでに送られた装甲とフロントガラスを強固に仕上げたトラックを発進させると、S2達が塀に居る警備の保安員達を確認、Zを弾き飛ばしながら進むトラックがZを踏みつぶし揺れる荷台の上でサプレッサー付きのFN P90で頭部や喉を狙い音を極力出さずに警護の保安部員を始末していく
トーレスの指導が効いたのか全て銀コーティングされた銃弾を用意し【確実に始末しろ】のオーダーを遂行していく
そして塀に横付けされると直ちに塀に飛び乗り侵入を開始する
鉤縄を使いスルスルっと降り立ち、ゲートに向かい進攻を始めようとするがその耳を衝撃が襲う
LRADが作動しだし、瞬時にS2達の行動が抑制される
分厚い塀越しにも聞こえる音響ビームでは歩くのがやっとで異変に気が付いた運転手が集まって来たZに横転させられる前にその場から離脱しながらトーレスに通報する
「志祭! なんか変な音が作動してS2達が苦しんでますよ! 何とかしてください!」
「変な音?」
射撃体勢に入るのをやめトーレスは再度移動し、塀の上のS2達の様子を見る……
全員蹲り、耳を抑えて身動きできない……そしてその下の周辺にZが徐々に終結しだしている
「おい! 何やっている?! ん?がぁ?!」
仕方なしに通信機で回線を開き、S2達に指示を出そうとするが返って来た異常な音量と重低音の電子音が割れんばかりにスピーカー越しから聞こえる
(こいつは……音響兵器か!?)
かつて養成所時代の講義に最先端兵器の概論で説明があったことを思い出した
そしてコレがジョシュの仕業か
(いずれにせよ此奴を破壊して状態次第では撤退せねばなるまい)
最優先事項を音響兵器の破壊に再設定し、その装置らしきものを敷地内に探す……が、一向に見つからない
研究所周囲にはそんな放射版をつけた車両は見当たらず、周囲の森の中に巧妙に偽装されてあるので発見は難しかった
(チィ、このままではS2全滅しかねん……何とかしないと……)
焦るトーレスが隠れる建物の丁度、トーレスの頭部がある高さに銃弾が撃ち込まれる
(そこにいるのは分かっているぞ)
森の中で狙撃したJPからの挑発を兼ねた威嚇射撃だった
(畜生! 調子に乗り腐りやがる……?)
心に怒りが滾りだすとその上空を一羽のカラスが餌を求めて研究所に向かって旋回する
そのカラスが森に入り研究所に近付くと、いきなり慌ててその場から飛び去って行った!
(そこかっ!)
位置を変えながらカラスが逃げたエリアを水平に丹念に調べる……
すると
(そこだぁ!)
下から狙うJPも
(煙が晴れたら勝負だ)
離れた場所の両者の決意が同調する……
煙が薄くなり建物に影が2つ映る……一つは動かず、もう一つは動いていた
JPが引き金を引き、動く影を射抜く……
その影はトーレスの上着が点検用の梯子に掛かっていたものが風に棚引いていたのを射抜いただけだった……もう一つは防弾チョッキを台の上に置きあたかも座っているようにした……一つは案山子、もう一つは本命と思い込まされたのだった
それを驚きの表情で見たJPの背後の方で炸裂音が起こり、電子音が消える……
素早く衣服と防弾チョッキで2つの影を作り、自分はタイミングをずらし風下の方でイメージした車両を勘で射抜く……
専門職と兼業との差が出てしまう……
「S2、全員、至急撤退準備に入れ!
「すでに」
トーレスが速やかに指示を各自に飛ばすとタイミングを計っていた運転手が再度、Zを弾き飛ばしながらトラックを塀の上のS2の横に停止させる
「逃がさん!」
JPが方向を変えS2を狙う位置は厳しいが狙えない距離ではない
気配を察してS2が援護射撃をするが距離が足りない……そこでトーレスが苦渋の決断を下す
「先行して降りたS2の最後尾の1名、反転してそこらに埋伏して次を待て!」
指令に従い1名のS2が反転して森の中に消える
その間、2名のS2がJPの狙撃でトラックに乗り移る際に排除されるとトーレスから発進の指示がでる
「奴の運に賭けるしかない……なるべく早く戻る!」
そう言い残すと速やかに焼却場の屋上から撤退を始める
非常用の梯子を降りていき、乗って来たピータービルド社のモデル379トラックに窓から運転席に滑り込む
エンジンを掛けると始動音に気が付いて寄ってくるZを引き倒しながら力強く発進する
前進基地に戻りながら次の手を早急に考える……そこにスマホに連絡が来る
「やぁ、ニールセン志祭、我々はもう基地に着いてるんだが……どうやって渡ればいい?」
湖の島にある基地の前まで来て立ち往生している増援の中隊長、カペロから連絡が来る
「来てすぐに申し訳ないが、至急、こちらに出撃をしていただきたい! いま、攻撃が失敗して油断しているところに主力の貴殿らが来てくれれば面食らうはずだ、手柄はご随意に!」
「ほほぅ、面白い、了解した」
功名心が強いとの噂の武闘派カペロは即座に食らいついてきた リック達を連れて攻撃に入れば1時間以内で再開できる
問題の
ただ、守備の兵士達だ……その規模と練度が不明なのが……今回の狙撃手みたいなのがわんさかいては正直たまらん
(
残り9名のスレイヤーと中隊200人程度が来るとは言え、捨て駒があるのはある意味強みだったと後悔した
「仕方がないか……最悪、ゲートぶち壊してZと共になだれ込むか……」
そうつぶやくとステアリングを切りながらトーレスは前進基地のある湖までアクセルを踏むのであった
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戦闘が収束した頃、やっと地下道を抜けて来たジョシュ達は徐々に基地の様な設備になっていく研究所の駐車場で装備を整えて捜索に動こうとする保安部員達に出会う
「おう、何かあった? 状況報告してくれ」
バーニィはその一団に声を掛けた
「副長! お疲れ様です、先ほどの戦闘により、潜入者がいるとの特務さんからの通報があり、今から捜索に出るところでさぁ……こちらの被害はLRAD小破、装備課と保安部員7名が死亡、5名が負傷し手当てを受けております」
「おし、俺も付いて行こう、副所長、ここで失礼します」
「うん、ありがとう、皆、くれぐれも気を付けてくれ、私は負傷者を見舞う」
死傷者の報告を聞き、バーニィとエメの表情が曇る、一戦交える意思を固めた時に犠牲は覚悟をしていたが、現実に出ると辛いものがある……
「了解です、それでは会議までには帰ります」
バーニィは捜索隊に加わり、通信兵にベケットとジュリアに混ざった旨を伝えさせた
「ほいじゃ、俺らも参加するよ」
ホセやジョシュ達も志願する事にした
「発令所で部長が待ってます、そこに向かってください」
「了解した」
「それじゃ、私は被害状況見てくるよ……今日の武器は装備課に渡して! そんじゃ、またね」
エメはそう言って装備課の倉庫に一目散に駆けていった……その背中には悲壮な影があった
ジョシュはその姿にかつてポートランドで仲間を救えなかったオルトンの立ち尽くす姿をだぶらせ、切なくなったが、むりやり前を向く
「兎に角出来ることに取り組もう……」
「うん」
アニーもその同意してともに歩き出す姿をホセ達は涼やかな目で見守る
保安部員が激しく出入りする発令所に入るとジュリアの怒鳴り声が出迎える
「「バカじゃないの! 1区域を必ず4名以上のチームの密集隊形で当たらせてと言ってあるでしょ?」」
「「しかし、姐さん! エリアが多すぎて手が回りませんぜ!
困り顔のベケットが地図とメンバー表を見合わせながら返事をする
「1チーム分の枠ねぇか? 俺らの担当エリアな?」
ホセが葉巻を加えながら地図を覗く
「ホセの旦那にジョシュゥ! 助かったぜ! 姐さん!?」
白馬の騎士というよりひげ面のメキシカンの山賊の様なホセをみてベケットがジュリアに話を振る
「ホセさん! ジョシュ! 至急、奥のアーガス川の沢に向かってください!」
安堵の表情のジュリアが指示を出すとすぐに地図で場所を指し示すベケットに少し戸惑いながら、ホセは内容を尋ねる
「アーガス川? どこだ? 詳細な情報を頼む、兄ちゃんも聞いといてくれ」
元々、アーガス川はこの研究所の敷地内に水源が有る川である
飲料水にもなる水質で此処の水源を賄う川で中々の水深と川幅があり、川魚も豊富に取れてフレディが趣味で養殖して釣り堀にしている程だった………
「まず、此処から外に出れる隠し水門が有ります、それと此処で水や食料調達が可能でして、毒でも投下されると食料庫に火を付けられる様なものですから」
「了解した、今から散歩ついでに覗いてくらぁ、兄ちゃん行こうぜ!」
「あいよ、その前にジュリアさん、ステは?」
ホセの呼びかけに答えつつ、相棒の行き先を尋ねると少しデレた表情を見せつつもジュリアは冷静に保安部長を務める
「フィリップ隊長のチームと一緒に上流から沢を目指してるわ」
「了解、ありがと、そこで落ち合うよ……」
装備をバレットとM107CQだけと手慣れた
「なんだよ、銃がお揃いかよ……焼けるじゃねぇか」
ホセがジョシュとアニーのM945を見て冷やかす
「ん? そのつもりだったの?」
少し驚いたようにジョシュがアニーに尋ねる
「んーん、これステンレス処理でカッコいいもん、前から銃のみ狙っておりました」
そう返えされてホセがヤレヤレと首を振るその後ろで、
「照れてんのか天然なのか……まぁ、おいとこ……そんじゃ、部長! 行って来るぜ」
「しっかり捜索してシュテ……もとい! はやく隊長達と合流して下さいね!」
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