発覚
負傷したマイケルを載せ、車の前に集まるZを吹っ飛ばしてジョシュ達は避難所に走る
「マイケルさん! 血液の予備は?!」
「い、家の冷蔵庫の中だ……」
ジョシュの問い掛けに浅い息でそう答えるマイケルを見てアニーが怒り出す
「ジョシュ! アンタ、マイケルさんが血を呑みたく無いの知ってて何言い出すの!?」
「お前は黙ってろ! 吸血鬼は原種だろうが最下級だろうが血液を補給すれば大概の外傷は治る! 呑みたくないのは分かるが
怒鳴り返されて涙目になるアニーを無視し、ジョシュは必死にステアリングを切り、アクセルを踏み込み避難所に急ぐ
避難所が見えるとクラクションとサイレンを鳴らし、ゲート前のトラックを開ける様に知らせる
住人がトラックのカーゴの上に乗り、ゆっくりとルーフから運転席座り、ゲートを開けるとピットブルを滑り込ませてそのまま走り込むとマイケルの家の前に止める
そこにエイミーとコチャックが血相を変えて走って来る
「ゴルァ! いきなり何事だ!」
小太りの作業着の中年オヤジのコチャックが怒鳴る!
「るせぇ! おっさんも手伝え! マイケルさんが負傷したんだよ!」
後部ハッチからジョシュが飛び出して叫ぶと家のドアを開けてキッチンに走り、冷蔵庫を探し、中から血液パックを取り、向かいのリビングで湿った音が独特のリズムで聞こえるのでふっと見る
そこには信じられない光景が広がっていた
髪を振り乱し、目を閉じて淫らに喘ぎながら舌舐めずりをして甘い吐息が口からとめどなく漏れ出していた
その形の良い乳房を下から揉みしだかれ、自ら前後にいやらしく腰を振り、指で敏感な部分を擦りながら快楽を貪る全裸のレイアとその下で邪悪な微笑みで腰を突き上げる全裸のポールが居た
その姿に一瞬、ジョシュは言葉を失う……そして心の底から湧き上がる忿怒の叫びを上げた
「ゴォルァァァァ‼」
そこにエイミーにマイケルを診て貰い、家に入ったジョシュを追ってアニーがやって来る。
「何怒鳴ってるの!? マイケルさんの血液……エッ!?」
アニーも一瞬言葉を失い、無意識に口に手を当てる
ドス黒いオーラをまといジョシュは小走りで踏み切るとレイアの顔に思いっきり足底で飛び蹴りを見舞い、その足で驚くポールの鼻っ柱を踏み抜く!
『グギャァッ!』
ヌッボっと間の抜けた音で怒張が抜けてレイアが吹っ飛び、ポールはそのまま気絶した
そしてそこに有ったバスタオルをレイアに投げ付け、ジョシュは血液パックを握りしめ
「アニー、そのクソ外道どもを銃を突き付けて見張っとけ!」
そう言って外に飛び出して車の中のマイケルに飲ますと、一瞬、苦しそうな顔をするが、すぐに顔色と表情が元に戻る
「ありがとう、ジョシュ、助かったよ」
横になったマイケルか微笑んで答えるか、そのジョシュは泣きそうな顔で立ち尽くしていた
「どうしたの? 何かあったの?」
怪訝な表情でマイケルがエイミーの助けで起き上がるとジョシュに尋ねる
「残念な話があるんだ……」
涙目で上を向き拳を握りしめて答えるとジョシュはマイケルを家の中に連れて行こうとする
「おい、ジョシュ! 途中ぶっちぎって置いて行くなよ! 満載のサパーバンでピットブルに追い付くのはキツい……どうした?」
ボヤきながら今到着したシュテフィンが只ならぬ雰囲気を察して問い掛ける
無表情な様で目には涙で潤む……今まで見たこと無い表情でジョシュが振り向き、家の中に入っていく
シュテフィンは胸騒ぎを感じ、慌てて追いかける。
そして、マイケルとジョシュ達はキッチンに入り、見張りのアニーを見ると首を振り震えながら銃を降ろそうとしていた
そこで声が聞こえる、あのレイアの声だが何かが違っていた
「可愛いアニー、さっさとそんな危ないものは私に渡してちょうだい」
異変を感じたマイケルとジョシュ達はそこに駆け寄る
まだ、全裸のレイアと気絶中のポールが居た
ポールは気絶中にも拘らず怒張はそのままで間抜けなほどいきり起っていた
全裸のレイアは何も隠さず、微笑みながらそのたおやかな手をアニーに伸ばしていた。
先程は目を瞑っていて気がつかなかったが……
――――綺麗な蒼い目のはずだったレイアの目は禍々しくも取り込まれそうな真紅に成っていた――
「レイ! どういう事なんだ?! 何がなんだんだ?!」
いきなりの展開でマイケルは混乱の局地に放り込まれていた
「俺が血液パック取りに来たら……ここで……その……ポールとヤってた……」
ジョシュが申し訳なさそうに告げるとそれを聞いて呆然としてマイケルが振り向く
「な、んだと?! ……それに……」
搾り出すようにマイケルの口から乾いた声が出る
「ちがうの‼ 聞いて!」
マイケルの登場に血相を変えたレイアが叫ぶが、マイケルが無視して語り出す
「ねぇ、レイ、僕が吸血鬼だという事は結婚する時、伝えたよね…………拒絶されたら絶望してたと思う、本当に死ぬほど、泣けるほど怖かったし嬉しかった。
真紅の目に驚愕の色を纏わせたレイアが絶句する
「え?! 知らなかったの?!」
アニーが振り向き目を丸くする
「ああ、たった今知ったよ。
目を虚ろにして自嘲気味にマイケルが話す
「だから違うの‼」
【汝に問う! この罪深き関係は何時始めた!? 吾に答えよ!】
レイアの絶叫に被せるように……いつものマイケルの声でない、禍々しくも荘厳で言わなければならない意思にレイアは捕らわれていた
そしてその場に居た者達がマイケルを見た、レイアに指を差し悲しみと絶望を湛えながらその目は真紅に染まっていた
「あ、……此処に越して来て、ジムでポールに知り合い、その日の内にナンパされ…………」
【何故、正体を隠した! 答えよ!】
その時、レイアの目が涙を湛え、声は抵抗の意志のたどたどしさが無くなると感情の赴くまま喋りだした
「私が最下級の吸精鬼で貴方が眷属だったから! 貴方に告白された時、私は嬉しかった! けど、付き合って行く内に怖くなった……貴方が眷属とわかった時、棄てられる恐怖にいつも怯えてた。私が同族とわかりそれも最下級だと判れば眷属の貴方に棄てられるって」
その叫びはマイケルの能力の作用では無くレイアの真実の慟哭で有った
「だからと言って、不倫しても良い訳が……」
空気を読まずにシュテフィンが指摘する前にレイアが言い返す
「無いわ! 最愛の人を裏切る訳だもの! けれどこのままでは失ってしまう! だから隠した……その為に子供が欲しかった……」
シュテフィンに向かい悲しい目で本心を語るレイアに対し
「もういい、レイア、頼むから黙っててくれ」
自分が求めた真実に耐え切れず苦しさと恐怖に首を振りながらマイケルが制止する
だが、レイアは最後の言葉を口にする
「最後に言わせて、もう大好きな貴方と一緒に居られない……私の正体を知ってしまったから……既に穢れてしまったから」
そう言って膝から崩れてレイアは号泣し出した
その陰鬱な悲しみの空気に支配された部屋には誰も幸せな人間は居なかった…………
一方、武器の無いトーレスと負傷をおったパブロはトラックに乗り、街の銃砲店でウィンチェスターM70を手に入れ、コンテナブロックの上で手当てを始める
「貫通はしてないが、症状と所見から多分2~3本の肋骨はやられてるだろう」
そう診断するとトーレスは店から持ってきた厚紙とテーピングテープで体幹部の固定の準備を始める
「パイセン、酒は?」
パブロが酒を求めると無言でトーレスがジャックダニエルのボトルを差し出した
「ありがてぇ」
ボトルを受け取ると一気に煽り、一息つくとトーレスが厚紙を下にしてその上を瓦状に下から1枚ずつ貼って固定をしていく
「もういいぜ」
テーピングを貼り終り、トーレスが痛み止めを差し出すとパブロは口に放り込み、ウィスキーで流し込む
「ありがと、パイセン、楽になったぜ」
「ああ、次こそはリベンジして一旦帰還だな……」
ボトルを取り上げ、トーレスがあおるとゲップとともにリュックサックを枕に寝転がる
「だな、ジョシュアとあのねぇちゃんぶち殺さないと気がすまねぇ」
そう呟き、パブロもまた寝転がって暫くの後、寝息を立て始めた……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、コロニーから離れた軍用トラック工場にエディとトーマス、モーリーが作業をしていた
「JPも俺らのツボを良くわかってらっしゃる……こいつを短時間で改造しろとは……うれしっ!」
3人が追加武器の搬入任務で陸軍武器庫に行かされた時、その直後にJPより他に手頃な装甲車を改造して作戦専用車に仕上げろと指令が下った、丁度目の前にはこれがあった
RG-33L PLUS……
6輪の装輪装甲車の車体延長型でしかも車体側面に中空増加装甲を装着したタイプで、主な任務は中型地雷防護車両である。
出力400馬力のターボディーゼルエンジンを搭載し、走行装置には防弾性とパンクしてもしばらくは自走可能なランフラットタイヤ、空気圧自動調整装置を装備する。
車体上には旋回式の装甲銃塔もしくは遠隔式銃塔を搭載可能で、地雷や爆発物処理用のロボットアームを装着する事も可能である。……だが、エディ達はあえて旋回式の装甲銃塔を選択し、ロボットアームを外したものを選んで工場に運びこんだ。工場のコンピューターで車載電子機器を調節し、燃費が少し悪くなるが燃料流入量を少し上げて馬力を確保しておく
相手は教会の兵士達だ、取り囲まれても反撃が出来るように装甲は追加で取り付ける
多少遅くはなるが両サイドのタイヤを守る為とメンテ様のハッチとして隠し蝶番で装甲を取り付け、開くようにしてあり、屋根にはサイドや後方に50センチ幅の装甲板をつけハッチからの攻撃をしやすくする
「そっれと~、トーマスからのお願いで後方に1門、ブローニングM2をつけて完成~」
すでに趣味でカスタマイズしたといっても過言ではないレベルのゴテゴテさであるが任務はこなせる
一仕事終えて手と顔を洗っていた3人にだみ声が飛んで来る
「おい、もう仕事終ったのか? ……これまたエライ武骨に仕上げたなぁ」
装備を担ぎ、かったるそうなホセが葉巻を銜えながらRG-33L改を見る
「3人ともご苦労だった、早速だが出撃するぞ」
装備を担いだ無表情のJPと飄々としたマーカスが何事も無かったの如く前を通り過ぎ、後方ハッチから乗り込む
『はい?』
モーリーとエディがそれを愕然と見送ると後ろでにやりと笑うトーマスが居た
「お前らの装備は外の車に積んである、弾薬はどの程度ある?」
ホセがめんどくさそうにエディに聞いてくる
「M2用の弾丸五千程……」
JPがハッチから降りて、乗ってきた輸送トラックに向かう
「足りんな5万発載せるぞ」
「今からいずこへ?……」
いやーな予感と共にモーリーが尋ねるとその後方から追い掛けて来たマーカスが溜息混じりに答える
「今から、敵の本隊を待ち伏せして致命的な手傷を負わし、西南部に誘導する」
「それ……危なくない?」
「危なくない任務って今まで有ったか?」
モーリーが落ち込むと肩を叩きながらマーカスが笑う
「とにかく、コイツがいい感じで仕上がってるから巧く行くだろ」
ホセが半分不貞腐れながら投遣りに言い放つ
「どうしたの? 女に振られたの?」
ホセの不機嫌のありがちな理由をエディがニヤニヤしながら聞いてくる
「うるせっ、補給基地襲ってお茶を濁そうと思ったらエリックが
作戦立案に自他ともに定評があると思っていた上をエリックに行かれてホセは自分への不甲斐無さにイラついていたのだった
「ホセのとっつぁん、しゃーないべ、オレも
ホセを慰め、頭を掻きながらマーカスが弾薬運びを手伝う
情報と立案を聞いてJPは即決で採用すると、アンナを連れて直下部隊指令のアルバに面会、提案し快諾して貰うと早速、偵察部隊に情報収集に入ってもらった
「別のエリアに侵攻するのかもしれんが、今、最も攻勢が強いピッツバーグを奴らが陥落させると今度はそこが拠点になり、他の中規模拠点、例えばフィラデルフィアとかが危険に晒される。」
大きな弾薬入りの木箱をカートで運びながらJPが後についてくるエディに説明をする
「そこで国道76号線、ペンシルバニア・
頷きながら聞き入るエディに
「連中は挟み撃ちで潰すつもりで突っ込んでくるが……別働隊が北から追い打ち、横から伏兵、前から俺ら……は潰しがいはあるだろ?」
「巧く行くかな?」
エディが爆発物とかかれた木箱を車内に載せながら呟く
「地形と擬装次第だろ……とにかく火力でゴリ押しして逃げ切る。そして道路遮断についでにピッツバーグからの救助隊も潰せれば万々歳だ」
ホセが木箱をセッセと運びながら狙い目を指摘する、道路封鎖して後続を断ち、ついでにピッツバーグの攻撃部隊の戦力を削れればいう事無しである
「そして、この後は新装備の改造と慣熟訓練と警備と称してボストン郊外の研究所に
JPが荷物を運び終わるとカートを片付けてそう宣言する
「え? マジ?」
休暇と聞いてエディが食いついて来る
「そこの車庫か倉庫借りて2台のピットブルをボストン市警から分捕って改装して社用車にする」
「マジで?! やった! 頑張ろうっと」
JPは発表に嬉々とするエディとモーリーを見ながら、全員に搭乗を指示する
目的地ははペンシルバニア州、クランベリーのインター周辺、ショッピングモールや森や林も多い……
(これからそこまで飛ばして8時間、相手が俺達に時間の余裕を持たせてくれればいいが……)
JPはそう思いながら運転席のモーリーに飛ばすように指示した
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