開戦

 先程ジョシュ達が居た銃砲店に着くとトーレスはベレッタを片手に中に入り、パブロはハンマーヌンチャクを構えてZに備える


「ジョシュアの野郎、此処に来てたな……」


 店を物色した痕跡をみてトーレスが断定する


「マジか! 追い掛けて拷問にかけるか? 隣に居た女を奴の目の前でヤリながらな」


 寄ってきたZの頭部を粉砕してパブロが嬉々として提案する


「ナイスアイディアだな……良し、追っ掛けるか」


 ドラグノフの7.62×54mmR弾の箱を見つけ、細い指で箱を鷲掴みにして運転席に乗る


 ハンマーに付着したZの腐臭のする脳漿を店の狩猟用の迷彩服で拭いてパブロが助手席に戻ってきた


「そんじゃ、行くか?」


 そう急かすが、運転席に着くなりタブレットを操作していたトーレスの眉間が寄る


「今、上に問い合わせた、アイツはデータ課に転籍になってて隠密偵察と威力偵察任務に就いてる」


「はぁ? 死んでるんじゃなかったのか?」


「所属部隊は全滅……の所をが救助したらしい、今はその指導の下活動中……だとさ」


「けっ、詰まらん」


 不機嫌になり助手席で仏頂面下げながらパブロが不貞腐れる


「な-に、ドサクサでやッちまえば無問題ノー・プロブレムだぜ」


 トーレスはニヤリと笑うと隣の愛銃に触れた後、アクセルを踏み込んだ


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ジョシュ達が避難所に帰還するとそこには既に戻って来ていたシュテフィンとマイケルが待っていた。


「どう? 強盗団だった?」


「もっと厄介な相手……教会だ」


 シュテフィンが”え?!”っと驚き、マイケルの顔色が真っ青に変わる


「彼等と接触はしたの?」


「してない、したら俺やアニーは間違いなく嬲り殺しにする類のコンビだ」


 ジョシュはマイケルの問いにそう答えて、彼らとの因縁を口にした……


 養成所時代、アメリカの学校にありがちな三角形の階級のヒエラルキーがあり、パブロはジョシュの学年でのガキ大将ポジションの”ジョック”であり、トーレスは2年上の学年でありながら典型的な”ナード”つまり変人として扱われていた。トーレス達の学年のジョック、ドワイトは戦死した教会員の親を持ち、苛めを良しとしない善良な性格だったが薄気味悪いトーレスにはまともに相手はしなかった


 ジョシュはそのヒエラルキーに属さない不良で、苛めをしていたパブロに良く喧嘩を売っては懲罰房に入れられていた。その行動でドワイトがジョシュを気に入りジョシュに何かと目を掛けていた


「ヒエラルキーにも拘らず何故かあの二人は馬が合った、パブロにも職人ナード気質的な要素があったのだろう、反骨精神旺盛な俺とドワイトと同じ様に……」


 そして、2年上の学年が初陣する事になり上の学年は皆、意気揚々として宿舎を出て行った

 勿論、トーレスやドワイトもその中に居た


「最後の日、射撃レンジでドワイトがこのM945で練習してたのを覚えてるよ」


 ”パイセン! そのS&W M945を記念に俺にくれよ!”


 ”親の形見をお前に渡す訳ねぇだろ!やっぱりアホだな!”


 半分冗談で強請ねだったが、笑って即座に断られた……その1週間後、戦死の報告とM945が俺の元に届いた


 吸血鬼の拠点を強襲したが、負傷し囮にされて致命傷を受け戦死したらしい、その今際の言葉がM945これをジョシュアに渡してくれとの遺言だった


 その頃からパブロがおかしくなった、元から脳筋だったが一心不乱に筋トレをするようになった


「ハンマーを両手に持ち振り回したり、射撃レンジに入っては大口径の拳銃、ライフルで訓練するようになった、勿論、手が空いたら手下に惨い仕打ちをすることをして、喧嘩をしていたけど俺が段々分が悪くなって行ったよ」


 そうこうしている内に現場からお呼びが掛かり、一足先に初陣を飾る事になった


「今にして思うとトーレスが呼んだのでは? と思う。そうして出て行って2人で戦果を上げてた」


「よくやる戦術は味方を囮にして孤立させて集中砲火を浴びてる最中に一人、一人狙撃する手法だ、そこで気がついた、が誰かを……」


 その言葉を結んだジョシュの顔は文字通りの憤怒に彩られていた


「あんたのM945が大事な銃だとは知ってたけど、そのドワイトの形見だったのね」


 アニーが神妙な顔でジョシュに話しかける


「ああ、アイツをドワイトと同じ目に遭わせてやりたいのさ、このM945でな」


 アニーは鬼の形相になったジョシュの肩にポンと手を置き


「まぁ、落ち着こうよ。今は此処の皆のために尽力しないとね」


「ああ、判ってる、私怨は置いておくよ」


 大きく深呼吸したジョシュはAR-15を3丁抱えて、幾分落ち着かせるとアニーと一緒にハロルドの所に向かった


 椅子に座り部品を研磨していたハロルドは立ち上がり


「おー、有ったか!ありがとう助かったよ」


 アニーから部品を受け取るとそう言いながら5丁の銃を取り出してくる


 アニーのバレット、HK417が2丁、ShAK-12、それとステアーTMPの5丁だった


「バレットは掃除して調整して置いて、後の4丁は掃除だけで済んだよ……達人級の鍛冶の手が入ってるな、部品も品質が極めて高い物で構成されている。大事に使ってくれ」


 AR-15をライフル棚に立て掛けておくとジョシュが聞いた


「UZIとかは?」


「この後になるが、あれも中々に手が入っているから早いと思う、食料回収が終ったら拳銃ハンドガン持ってきてくれ、そちらが本命だ」


「それと店長、追加があるんだけど……」


 そういってアニーは腰のベルトからM945を取り出す


「お?! M945か? なんだぁ? お前らお揃いか?」


 にやりと笑いながら拗れた田舎の中学生みたいに冷やかすが、先程の話を聞いたアニーは苦笑いをして


「型は同じでも銃に込められた思いは違うよ……まぁ、店長お願いしまーす!」


 そう言って整備を依頼し、4丁を持って車に戻ってきた


「おー、流石ハロルドさん、手早いね」


 その速さに驚くマイケルにジョシュがステアーTMPと予備マガジンを手渡す


「これは?」


「護身と護衛用に此処に提供する銃の1丁だよ、だから気をつけてね」


「え?! 僕はライフルもこの前、初めてだったのに……行けるかな?」


「成せばなるですよ。あいつ等と交戦状態になったら物陰からぶっ放せば良い」


「ああ、そうするよ。機能について教えてくれるかい?」


 マイケルの頼みを二つ返事でセレクター等の簡単なレクチャーをジョシュが行う、その合間に装備の選択をする


「バレット持ってく?」


 アニーが整備、調整をしたバレットをチェックしながら聞く、微妙に違和感があるが調整する暇はない


「ああ、トーレスとの狙撃戦マッチアップになるかもしれん、1キロ以内はアイツの距離らしい、それ以上の距離からドラグノフアイツの愛銃をぶっ壊せ」


 毎度、味噌っかす扱いされるシュテフィンが少し拗ねながら今度は尋ねる


「監督、2軍マイナーリーグの俺は?」


「俺と同じHK417だ、レクチャー要る?」


「戦術指南も宜しくねぃ」


戦力外と思ったら当てにされて居たとわかり調子に乗り出す


「じゃ、ちと待ってマイケルさんのレクチャーの後だ」


 そこまで言った後、3人は視線を感じ振り向くと道路沿いの家のベランダにレイアが此方を見て手を振る


「ああ、あの家が僕の家だよ」


 そうマイケルが言い、3人で笑顔で手を振り返す。……そこでシュテフィンが何かに気がつき振り向くと既にレイアは居なくなっていた……手を振ってる割には身体も不自然に動いてた様な気がしたが、とりあえず準備に専念した


 レクチャーを受けて防弾チョッキに身を包み、拳銃に消音機サプレッサーを装着し、サパーバンとピットブルに乗り換えて食料探しに出かける


 近所のスーパーは粗方盗り尽くされていたので今度は隣町のスーパーを目指して移動する


「ステ達、バンで移動して大丈夫なの?」


 助手席のアニーが心配そうにジョシュに聞いてくる


「戦闘状態に入った時の行動は指示してある、まぁ、最初に俺を狙うだろうがな」


 そう答えた後のジョシュの顔はどこか達観した感じにアニーは見えた


「え、それじゃあ……」


こいつピットブルに乗ってる限りは狙撃は成立しないが、車にさほど詳しくない奴らは必ず撃ってくるだろう。それで先にトーレスを見つける」


「え?! アンタが囮になるの?」


 驚いたようにアニーが聞き返す


「ああ、脳筋のパブロはまず出てこない。問題はコンビの頭脳である狙撃手のトーレスの居場所だ。そこでアニー、狙撃ポイント把握してくれ」


「判った、けど無茶しないでね」


 ちょっと心配げに見つめるアニーにジョシュは少し焦りながら


「了解、お願いだから周囲見ててね? 俺の顔にトーレスは居ないから」


「ふん、アンタのしょぼい顔を見てたらツキが落ちるわ!」


 少し顔が赤くなりながらアニーが毒づく


「へー、へー、それは失礼致しましたねぇ」


 そうふざけながら答え、少しはリラックス出来た気がしたジョシュは前を見据えて腹を括る


 そうしている内に一行は隣町のスーパーに到着した


 既に駐車場にはZが多数うろつき、よく見るとスーパーの内部までZがうろついていた


 ジョシュはピットブルを止めると窓を開け、サパーバンのステ達に提案をする


「今から、店のドアぶち割ってZの出口作るから、北の少し離れた所でベルとカーオーディオ鳴らしてやってくれ、俺達は南で鳴らす」


「了解だ、気をつけて」


 二手に分かれるとジョシュ達はZが張り付いてる店のドアに向かいアクセルを踏むこみ、Zごとドアを吹っ飛ばして破壊する 


「こういうのってステが好きそうだよね?」


 アニーが横のレバーをしっかり持ちながらジョシュに尋ねるとジョシュはバックにギアを入れて


「アイツはダメだ、店ごと破壊しかねない」


 困惑気味にジョシュはそういうと反対側のドアもふっ飛ばしに掛かる


 そうして、2つの出口を作ると南の方に向かいピットブルを走らせる


 その手間を無駄と思ったアニーが聞いてくる


「なんで2つも誘導ポイント作るの?」


 手頃な場所を探しながらジョシュが答える


「作業中にZとクソバカ共に襲われない為だよ。大概、騒音が起きてる所を調べに来る筈だからな」



「なるほど……流石、! やるじゃない!」


「うるちゃい、搬入作業してる所をバレたら射殺されるぞ……俺が!」 


「う……ゴメン」


 ツッコミを受けて途端に凹むアニー見て、らしくないと思ったジョシュが尋ねる


「どうした? ド豆? らしくないぞ?」


「私さ、こうしてアンタやステにこうして危ない橋渡らしてるわけじゃん? そりゃ、責任感じちゃうわよ」


 しょぼんとして俯くアニーを見て鼻で笑いながらジュシュが答える


「此処であのパブロとトーレス ファッキンアスホールとやり合うか? ポートランドでやり合うか?の違いさ、いつかは何処かで倒さなくてはならない奴らだ。お前が気にする事じゃない、俺の問題だ」


「でもさ……」


 それでも気にするアニーにジョシュはヤレヤレと言った感じで苦言を呈す


「お前の目的は何だ? 俺達の目的は? あのDamnダセェ fuckerクソやろうをぶち殺す事が目的じゃない。マーティを探して助け出すのが目的だろう?」


「……うん……」


「これはついでの仕事であり、予行演習だと思えば良いのさ。こんなもんに躓いてたらクソ非常識な能力の吸血鬼の巣窟への侵入やポートランドに居た数の数十倍のZを相手には出来ないぜ」


「わかった、けど無茶しないでよ。


「畏まりました、お嬢様って……!」


 そう言い終えるとジョシュが調剤薬局や証券取り扱い事務所が軒を連ねる店舗を見つける


「良い感じの店舗の並びだ……おい豆、あの調剤薬局の窓ガラスを全部割ってくれ。俺は他の店を割る」


「まったく、このボケナス……」


 ぼそっと呟くアニーに気付かずにP-210を握り締めジョシュが後部ハッチから外へ飛び出し、近寄るZを始末すると店の窓ガラスを1枚だけ撃って割ると非常ベルが鳴り出した


「おし、車は……こいつだ」


 2シーターのシルバーのメルセデスに中にZになった元黒人男性オーナーが運転席に居た


「割ったよ!」


 調剤薬局の窓を全部割ったアニーが駆け寄ってくる


「ストップ!」


 ジョシュが制止すると少し離れた所から運転席のZに向かい窓ガラス越しに銃を撃つ、ガラスが砕け散りZの頭部も破散する


「うぁ!? クセェ!! アニー、周囲のZを頼む!」


 1週間以上車の中に腐った物が置いてあれば、その車内は耐え難い臭いになっていた


 ジョシュはドアを開け、Zのを蹴っ飛ばしてから、鼻と息を止めて車のエンジンを掛け、カーオーディオのボリュームを最大にしてCDをリピートにして掛ける景気の良いヒップホップが鳴り響く


「おし、とっととずらかろう、こっからはスピード勝負だ」


 近寄りだしたZを始末しながら二人がピットブルに乗り、急発進させ先程のスーパーに急行する


 遠くに騒音を聞きながら到着すると既にサパーバンは店の出口をバックで塞いて止まっており、そしてスーパーの店内のZを手斧で始末してまわるマイケルがいた


 急いでピットブルをバックで出口に接続する形で停めると天井ハッチから出ると上からブルーシートを被せて店内に入る、先程の突入で倒れた人型の看板を見つけて窓ガラスの所に伏せておく


「おー来たか!」


 既にシュテフィンは冷蔵庫の精肉系をカートに入れていた


「よし、俺は缶詰と保存の効く食材を片っ端から入れるぞ!」


 カートを持ってくると小麦粉や米の袋をせっせと積み込み出した、そして


 そしてアニーにはグロックにサプレッサーを付け、缶ジュースを飲みながらレジの影から双眼鏡で周囲を警戒してもらう


 すぐに大型のサパーバンが後方が見えない程、食料が満載された


 ピッドブルも洗剤や石鹸、飲料、油、菓子類を満載したそこに、


「伏せて!」


 アニーが叫ぶと伏せたジョシュは匍匐前進しながら、冷蔵庫の棚から手頃なジュースの缶を掴みアニーの所へ行く


「居たか?」


 寝そべった状態でレジに寄りかかると缶を開けてジュースを飲むとアニーが真剣な顔で


「今、横の道路を白のセダンが通ってったよ」


 その答えに耳を澄ますと確かに離れていくエンジン音が聞こえるが……そこに混じるように何かを破砕する音が聞こえる


「囮の車で誘い出すか……居るな」


 そのまま匍匐しながら人型の看板を拾い、アニーに囁く


「静かに匍匐前進しながらバレット持ってピットブルの上で隠れて狙え、準備が出来たらノックしろ、コイツで誘ってみる」


「了解」


 そのまま匍匐前進すると後部ハッチに立て掛けてあるバレットを手に取り、銃口とスコープを予備タイヤの隙間から目立たないように覗かせる……


(お父さんと行った狩猟の経験が人相手に生かされるなんて……)


 内心切なくなったが、ジョシュや自分達をここで訳には行かない意志が彼女を突き動かす


「ステ、マイケルさんは奴が一発打ったら数秒隙が出来る、その間に外の風景見てくれ! デカイ奴が1人周辺に居る筈だ」


 そしてノックのあと看板の頭部をさっと持ち上げ動かす


 ――――ターン!――


 ――ガシャーン――


 ガラスの破片がジョシュに降り注ぐが身体を回転させて避ける


「どうだ?」


「道路の反対側の店の屋根に居た!」


「店の前にデカイ盾がある?!」


 アニーとシュテフィンが交互に教えあう、そこにジョシュが指示を出す


「アニー!相手はお前に気がついてない、撃てるか?」


「やってみる!」


「2回撃ったら下がれ! 狙われるぞ! ステとマイケルさん! アニーの号砲で盾の脳筋に仕掛けるぞ」


『了解だ』


 一方、屋根のトーレスは腹ばいになり、スコープで店内を観察し、ニヤつきながら呟く


「やはり、気がついてたか、やっぱり小癪でクソ生意気な野郎だよ。ジョシュア」


 そして引金に指を掛け集中する


(他には三名ほど確認、女が居ないのは残念だが後で口を割らそう)


 ――パァァァァン――


 そうして店内を見た瞬間、目の前の屋根が爆発するように爆ぜる!


「なにぃ!?」


 バレットの弾が下に逸れて屋根を破壊し、寝そべるトーレスが同時に身を捩じり避ける


「狙撃手か?! 何処だ!」


 恐怖で真っ青になりながら立ち膝状態になりドラグノフを構え直そうとした瞬間……


 ――バキャッァ!!――


 銃身の下の機関部が轟音と共に破砕する!


「なっ?!」


 機関部の半分が無くなった哀れな愛銃を呆然と見てトーレスが叫ぶ


Fxxk‼くそがぁ‼


 その狙撃を成功させ、アニーは店内に向かい叫ぶ


「銃ぶっ壊したよ!」


「おっしゃぁ! アニー、そのまま奴の監視してくれ! 予備のライフルがあるかもしれん。構え出したらその場から逃げろ!」


 そう指示してジョシュはスゥーっと不気味に近づく盾に向かいP-210を乱射するが悉く盾に弾かれる


「ジョシュアァ!! とっくに死んだと思ってたぜぇ!」


 盾に隠れながらハンマーを回転させ、はじいた震動で気配を読むと近距離に居るジョシュに興奮した状態で呼びかける


「滓のパブロ! 相変わらず腐れはてた脳筋だな! Zよか腐ってんじゃねぇか?」


 P-210のマガジンを交換し、射撃体勢に入る前とそこには一気に距離を詰め、割れた窓ガラスを飛び越えてきたパブロとハンマーが唸りをあげて伸びてきた


 ジョシュが避けようと身体を横に倒すが、パブロがハンマーの頭を持った手首を返しスナップを効かすと真横に機動が変わり、ジョシュの肩に軽く当る


「グッ!」


 体勢を崩しそのまま倒れこむ


「ジョシュ!」


 正面に居たマイケルがステアーを乱射し、牽制するが盾に弾かれ、気にした風も無くパブロが回転させたハンマーをジョシュに振り上げる


 ――バキョォン!――


 初心者モロ出しだが、教科書通りの姿勢で左側のシュテフィンのレイジング・ブルが2連で咆哮し、盾に弾痕を残す程の外力を生みパブロの注意を引く


「大型拳銃持ちか?! だが……効かんわ!」


 盾を開き、方向を変えたハンマーが伸び、後方にとっさに跳んだシュテフィンの胸に当り、一瞬息が止まる


「ぐはぁ」


 防弾チョッキがあっても衝撃は身体に伝わる、顔を真っ赤にしたシュテフィンは胸を押さえてうずくまる


 居てもたっても居られず、アニーが持ち場を離れ店内に戻ると目の前でジョシュが倒れ、向こうではシュテフィンがうずくまり、マイケルがステアーを乱射するがその頭上にハンマーが振り下ろされようとしていた


「あたれぇ!」


 悲痛な叫びと共にバレットを腰溜めに撃つ、パブロは既に気配を察知し盾でカバーするが、バレットはボンネット越しのエンジンさえも貫通する破壊力で盾を貫通し、ハンマーの柄を削り、パブロは目を剥いて驚く


「なっ?! アンチマテリアル対物質ライフルか!」


 方向を変えて今度はアニーに襲いかかるが、そこで弾切れを起こしたステアーを投げ捨てマイケルがパブロに飛び掛る


「逃げろ! アニー!」


 叫びながらマイケルはパブロを取り押さえようと力を込める


「ふっ、ぬるいわ!」


 振りほどくと胸に向かい盾を振るい、鈍い音と共にマイケルが膝から落ちる


「マイケルさーん!」


 その声ににやりと笑うとパブロがアニーに向き直る


「さて、楽しませて貰おうか?」


「ああ、俺達がな」


 必死の形相でジョシュが、シュテフィンが立ち上がり連射する


 盾でレイジング・ブルの連射を受け止めるがP-210の9ミリ弾の連射をボディアーマーの胴体に喰らいハンマーも折れる、だが、血反吐を吐きながらも


「ジョシュアァ! 次はキッチリ殺してやる! そこの女も嬲り殺しにしてやるわ!」


 そう叫ぶと、寄ってくるZをハンマーでなぎ倒しながら盾を背負い逃走を開始した


「マイケルさん!?」


「み、な、だい丈夫かぃ?」


 声も途絶え途絶えになりながら気丈に心配をする


「みな大丈夫だよ!」


 アニーが涙目で答えるとニコッと笑って気を失った


「おいステ!サパーバンに乗って先行け!アニー、ステアー拾ってピットブルに乗れ!速攻で帰るぞ!」


 そう叫ぶとジョシュは走り、勢いよく倒れこみながら前廻り受身のようにして要救助者をファイヤーマンズキャリーで担ぐ方法、レンジャーロールをしてマイケルを担ぐ


 そしてサパーバンが出た後から侵入してきたZ達を腰から引き抜いたP-210で始末してステアーを拾うアニーの援護をする


 必死にマイケルをピットブルに運び込み、ベットに寝かしベルトで体幹を固定をする。そこにバレットを背負い、ステアーで追い縋るZを薙ぎ払うとアニーが走り込んで来てハッチを閉じ、マイケルの脈を見る


「どうしよう徐々に弱くなって来てる」


「この人を死なせてたまるか! ステばりに飛ばすぞ! マイケルさんを頼む!」


 アニーにマイケルの事を頼むと運転席に座りエンジンを掛ける


 ジョシュ達の悲痛な思いに答えるが如くエンジンが力強く咆哮した






























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