月下獣の箱庭
癒月叶伽
第1話
一ノ瀬アリスは、落下していた。
チュウイリョクサンマンだと、中学に上がったばかりでちょっとおばかなアリスには難しい言葉でよく言われていたアリスは、偶然蓋をしていないマンホールに落ちてしまったのだ。
─マンホールって、意外と深いんだな。
少しふわふわした思考回路でそう考えていると、何かにぶつかった。どうやら此処がマンホールの底らしい。痛む頭を抑えて起き上がる。
─草原…?
少し、いやかなりズレていると言われるアリスだが、流石に此処が普通でないことくらいは分かる。光が届かないほど深くまで落ちた筈なのに、太陽が見えているのもおかしい。
これはひょっとして、所謂『異世界』なのではないか。まるで童話の中の、自分と同じ名前の少女がうさぎ穴から不思議の国に迷い込んだように、自分もマンホールから異世界に迷い込んでしまったのか。だとしたら、もしかしたら帽子屋や白うさぎがいるかもしれない。そう考えたアリスは、まず白うさぎを探すことにした。
この世界に存在する『魔物』の脅威も世界に蔓延る仄暗い感情も存在することすら知らぬ無知で無垢な少女の、第1歩だった。
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