第20話 負けるための戦い

竜之介と戦いをしてから、帰り道には俺を殺そうとしてきたやつに出会う。かなりハードな一日を過ごしたせいもあってか結構疲労感があった。病院にはすでに退院の手続きを済ませてあるので俺は学校から直接家に帰ってきていた。


「ただいまー……って言っても誰もいないか……。」


俺は玄関のかぎをかけると自分の部屋で横になっていた。


「本当に攻撃しないでくれるとありがたいのだがな……。」


現状は魔法祭のSTARSから視線を外すことで手一杯なのにもしテロを起こされたら詠唱魔法を使わないとみんなを守ることはできないだろう。それでSTARSに目を付けられ、周りに危害が及ぶのは論外だ。


「少し、疲れたな……。少しだけ……。」


目を閉じ、仮眠をとることにした。


**************************


目が覚めると朝の5時を回っていた。


「あぁ、昨日は制服のまま寝てしまったのか……道理で寝ずらいと思った……。」


制服は汗で濡れてしまい息苦しかったのでとりあえずシャワーを浴びた。


「桃と姉さんはまだ起きてないか……。」


独り言を言いながら俺は学校に行く準備として制服に着替えていた。すると引き戸の開く音がした。


「おはよう、桃。」


「おはようございますお兄様……。」


桃は目をこすりながらパジャマで出てきた。すると徐々に目覚めてきたのか目を見開いた。


「お兄様……お兄様!?」


桃は急いで洗面所へ行き身だしなみを整えたり顔を洗いに行った。少し待った後桃が出てきた。


「もしかして寝坊してしまいましたか!?」


「いや、俺が今日早く目覚めちゃっただけだよ。何せ機能は夕方からずっと寝ていたからね。」


「そうでしたか……朝ごはんの用意をいたしますね。」


「あぁ、頼む。じゃあ俺は姉さん起こしてくる。」


「よろしくお願いします。」


「姉さん、起きて。」


全く返事が来ない、溜息を吐きながらドアを開けた途端ベッドから落下した姉さんがいた。


「お兄様!何かあったんですか?」


「何でもないよ!ただ姉さんgもごご……。」


起きた途端全力で俺の口を防ぎに姉さんが来た。人差し指で俺に静かにするように促してきた。


「なんでそんなにバレたくないの……。」


「だって私、長女だし!」


次女が家事をやっている中、胸を張って言うことではないと思う。


「姉さん、早く髪とかしてきて顔洗って。」


「えー……めんどくさいなぁ……。」


本当にこの人が長女なのだろうか。


「あ!そういえば私と桃ちゃんも勝ったよ!」


「おめでとう。」


「次はベスト8とを決める試合だよ。」


「そう……なの?」


この魔法祭、優勝を狙いに行くかそれとも目立たないようここで負けておくべきなのか……。


「姉さんと桃はどのブロックだっけ?」


「私は慧ちゃんと桃ちゃんとも違うブロックだったから決勝までは当たらないよ。けど準決勝まで行ければ慧ちゃんと桃ちゃんは戦うことになるね。」


「なるほどね。」


準決勝まで行ったら桃と戦うことになるのか……ここは次の試合は勝っておいて準々決勝で負けておくに限るな……。先の方針を考えた俺は今日は天使でどうにか乗り切ることに決め、姉さんたちと朝ご飯を一緒に食べた後学校へと向かった。


「慧、お前昨日はどこに行ってたんだよ!」


「少し病院にな……。」


「そうだったのか、昨日のお前の試合は確かにすごかったしな!俺は昨日で負けちまったけど外交科からはお前が残ってるしな!応援してるぜ!」


「ありがとよ、今日の試合も頑張るわ。」


本日の試合の内容を確認した後会場へと向かった。人数も少なくなってきているため今日は2試合やる羽目になった。


*************************


「勝者、竜虎 慧!」


「よし!これでベスト8!」


稜が腕に手をやりガッツポーズをする。俺が返ってくると稜がいたわるのとともに心配をしてきた。


「お前、これからもう一試合あるけど大丈夫なのか?」


「わからない、けどできるだけやってみるよ。」


次の試合は自然にやられることを考えなくては……。


「次の試合まで控室で休んでおいたほうがいいな。


「そうさせてもらうよ。」


俺は早めに控室に入り、負けるためのイメトレをただひたすらに重ねた。


「よろしくお願いいたします。」


「あぁ、よろしく。」


礼儀正しい女の子が試合会場へ入り、軽く俺に会釈をした。審判が「始め」の合図がすると彼女はいち早くルーンを書き始めた。


「『フォージ』!」


魔法を唱えると地面にいくつもの剣や槍、弓矢が俺と彼女を綺麗に避け、降ってきた。そして地面に突き刺さり彼女はそのうちの一本を引き抜き言った。


「これが私の魔法です。」


「俺に当たらないようにしたのはわざとか?」


「はい、大体この程度であなたは当たるほどの飛行を第一回戦ではしてませんでしたしね。」


「随分と調べ上げたな。」


「天使様にお褒めの言葉を預かり光栄です。」


「それじゃあ俺から行かしてもらうかな!」


詠唱魔法を使わないよう気を付けながらルーンを書き、天使状態になった。彼女にばれないようわざと負けるのは至難の業のようだ。

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