第14話 交錯する狙い
「例の彼……どうだった~?」
「そうだな……高校生にしては明らかにしに対する恐怖が少なかったな……。」
「戦闘要員としては?」
「これから先狩りに成長をするとしたらかなり厄介な存在になる。」
「ってことはスカウト失敗したんだ~。殺したの?」
「藤堂に邪魔をされた……。」
「藤堂か~やっぱり?」
「お前……謀ったな……。」
「さぁね~でも……私は今しかないと思っただけだよ。」
「今しかないとはどういうことだ。」
「彼……まだ本気じゃなかったでしょ。」
「あれが本気だろ。」
「彼が激怒した瞬間、明らかに天使とは思えないほどまがまがしい魔力が漏れてたよ。」
「ほう?」
この女が言うことはブラフが多すぎていまいち情報を精査するのが難しいが、何となくだがこのことは本当であろう。
「今日の魔法祭ってちゃんと録画してあるんだよね?」
「しなきゃめんどくさいことになるだろ。特にあの二大国でもめる。」
「まぁね~。」
そんなことを話し合いながら低レベルな高校生の試合を退屈そうに眺める二人であった。
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「こ……こは……?」
「けいちゃん!」「お兄様!」
「二人とも……どうしたんだ?」
確か……俺はあのSTARSの1人と戦って……。
「そっか……負けちゃったのか……。」
「お兄様のせいではありません!あれは……私がいたばかりに……。」
そんなものは結果論に過ぎない。俺は桃と姉さんを絶対に守ると決めていたのに……。あの日からずっと……。
「……俺……もっと強くなるから……絶対……絶対に……。」
目から熱いものが止まらなくなってしまった。枕元がぐしゃぐしゃに濡れ、病室のベッドがしわくちゃになっていた。俺は上半身を起こし目に両手を当ててどうにか抑えようとしたができなかった。
「私達も一緒に強くなります。」
ピンクと茶髪の髪が目の前に現れて俺は桃と姉さんに抱きしめられた。
「悪いな……迷惑ばかりかける兄、弟で……。」
「本当に……世話の焼ける弟だよ……まったく……。」
俺は何分か抱きしめられたあと姉さんたちから離れた。
「もう大丈夫……泣かないから。」
「そっか……よかった。」
「お兄様、少しよろしいですか?」
「なんだ?」
「明日の試合を棄権してください。」
「それは譲れない。」
「委員長からの命令です。」
「それでも俺は明日の試合に出場する。」
「もし明日出場するのであればもう二度と健康な体として生きるのは難しいとのことです。」
「そっか……。考えておくよ。」
「考えるのではなく今この場で回答してください。」
「悪い……。」
「そう……ですか……。」
桃はうなだれ落胆した。
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夜のになって俺は病室から抜け行動を開始した。
「エンジェルブレス。」
俺にあった貫かれた穴の跡が見る見るうちに癒えていった。
「ステルス、データデリート、インフラレッド。」
正直ここまでやる必要があるのかはわからないが念には念を入れて俺は自分に支援魔法をかけてから学校へと侵入を開始した。警備員がいるためステルスによってばれないようにする。足音などの物音を完全に消去するデータデリートも兼ねておいた。そして最後に赤外線センサーがある可能性があるためインフラレッドによって赤外線を見れるようにしておく。
「ふぅ、やっとここまで来た……。まさかすべての呪文が必要になるとはな……。」
ちゃんと準備をしておいて正解だった。
俺は学内の生徒個人情報にアクセスするべく、指紋が付かないよう手袋をつけなおし、パソコンにゲオルクと戦っている間に脳から抜き取っておいたデータを入力した。やはり学校とあのSTARSの二人は繋がりがあるようだ。
「悪いな……桃……俺……本気で戦って負けたことないんだよ。」
どうしてもあの状況で勝てば奴らから目を付けられるであろう。それにこの学校ののデータへログインするためにはSTARSの誰かしらの情報を抜き取らなければならない。そのためにわざとやられたが想像以上に呪文の威力が強かったため回復呪文を自分でも打つ羽目になってしまった。
「学校のパスワードは……これか……。」
一応のためいくつもの海外サーバーを経由してログインをしたが留学生に関する記事が一つあった。
「ベアトリクス・メステルは……この学校のデータでは戦争孤児でフランスの孤児院で育ったということになってるな……。」
なってるだけである。データなんてものは隠しておけばいくらでも書き換えることが出来てしまうのが現代の科学だ。
「フランス政府に直接クラッキングをかけるか……?しかしそれでは足が付いた時のリスクがかなり高いな……。」
「仕方ない……無駄足だったか……。」
俺がパソコンを閉じようとしたとき一つの写真が目に飛び込んできた。
「これは……!」
一見ベアトリクスが野原で笑顔で花を持っている写真だ。しかし明らかにフランスの野原で生えることのない花を持っていた。
「パセリとチグリジアの花……花言葉は『死の前兆』と『私を助けて』」
俺はパソコンの電源を落とし静かに病院へと戻るのであった。
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